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最弱スキル紙装甲のせいで仲間からも村からも追放された、が、それは誤字っ子女神のせいだった!~誤字を正して最強へと駆け上がる~  作者: 空地 大乃
第三章 ジェントル編

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幕間2 インフレノシンクロニシティ

いつも応援や感想を頂きありがとうございます!

 やれやれ、まさかインフレノシンクロニシティとはな。

 結局俺はその話を聞き、あの連中の監視役をうけることにした。


 これに関して言えば、同じような状態にある世代には似たようなのがつくことだろう。


 インフレノシンクロニシティ――記録ではこれは本格的なものは数百年単位で一度起こっている現象であり、直近で起きたのはアーサー家が生まれた時代のはずだ。


 本格的なのと言うのは、小規模レベルで言えば、十年単位で起きてもいるからだ。だからこれが大規模なものかどうかは今後の動向を注意深く見ておく必要がある。


 そもそもインフレノシンクロニシティとは――言うなれば成長度が異様に早く、ありえないほどの高レベルに達する存在が世界中で同時期に生まれる現象のことだ。

 

 それ自体は、喜ばしい事とも言える。世界中で優秀な存在が生まれるのだから。

 だが、問題なのはこの現象が起きる時、必ず世の中が乱れるということ。それに――


「アビスに誘われる者――それが現れると厄介が過ぎる……」


 そもそもアビスが発生するかどうかという点が問題だが――しかしもし生まれでもしたら、過去の記憶にあるように十罪の魔王が復活することに、しかしそれだけは避ける必要があるだろう。


 ふぅ、とにかく、先ずは受付嬢に頼んで、俺を御者として推薦してもらうところからだな。





「私が皆様の御者を務める事となりましたエリートです。英雄豪傑の冒険者が使用する馬車の御者として同行できるとは光栄の限りですよ」

「はは、そんな緊張しなくても大丈夫だよ。確かに僕たちは期待の新星として一目置かれているけど、気兼ねなく接してくれていいからね」


 やれやれ、初対面からとんでもない鼻の伸びっぷりだな。自分から期待の新星だなんてよく言えたものだ。


 尤も、支部長から依頼を請ける前にドンオークを含めた魔物をすべて倒してきたらしいからな。


 本来このランクでギルドに相談もせず予定外の敵を相手するのは褒められたものじゃないが、どうやらコイツラの場合はレベルだけではなくてスキルにも恵まれているようだ。


 とにかく第一印象から生意気な連中だなと言ったところだったが、ダンジョン攻略までの道のりを同行し、よりその印象は深まった。


 特にリーダーのリャクは村なんかに寄ったときの外面はいいのだが、ちょいちょいと黒い面が覗き見える。


 そしてそれを決定的に感じたのは、あのカルタという少年と遭遇してからのことだった。

 

 リャクはダンジョン攻略という依頼を請け負っているにも関わらず、まるで喧嘩を売るような発言を繰り返し、結局狩りの勝負にまで持ち込んでしまった。


 あくまで御者の立場である俺は、この時点では強くは言わなかった。時間が1時間だけと定められており、確かにそれぐらいなら俺が急げばまぁそこまで到着時間に遅れは生じないだろう。


 だが、この時俺はリャクよりもカルタという少年やその仲間に興味が向いてしまう。そしてそれは起きた。


 森のなかで突如の落雷。しかも何度も。晴天でこれはありえない。しかも、デッドリーウルフとは明らかに異なる気配がカルタ達が向かった方から漂ってきた。


 馬車のことを見ていながらも、神経を研ぎ澄ましていた俺は、その気配と現象からレッドライジングが出たのでは? と当たりをつけた。


 だが、もしそうであれば危険過ぎる。近くにはこれといった魔物の気配もないし、助けに向かうか、と考えもしたが――しかし、レッドライジングの気配が現れた直後から、彼らの気配も大きく変化したことに気がついた。


 そしてこれは明らかにリャク率いるグローリーブレイヴのメンバーを凌駕するものであり――


 結局俺は助けにはいかず馬車を見ていた。わざわざ自分が出ていかなくても問題ないだろうと判断したからだ。


 そしてそれは予想通りの結果を生む。狩りが終わり、リャク側とカルタ側の獲物の数は同数、引き分けで決着がついた。


 だが、これはカルタ側が強力な魔物を相手していたからに他ならない。そんなのは見ていれば判る。


 尤もリャクは納得していないようであり、その異様に固執する姿に危ういものすら感じた。


 一方でカルタ側は余裕に満ちていた。しかも彼は仲間に恵まれている。どうやらまだ冒険者として登録していないようであり、にも関わらずこの実力はギルドが違うとはいえ注意すべき案件な気もしたのだが、彼とその仲間のやり取りを見ていてそれは杞憂だと知った。


 結局俺はカルタ側の肩を持ち、その場を纏めてしまった。余計なことだったかもしれないが、これ以上続けても不毛なだけだ。


 それからも目的地のマルデ村につくまでリャクは不機嫌そのものであった。


 しかもそれは村に着いてからより加速することとなる。なぜなら、ダンジョン攻略の依頼は既に旅の途中に立ち寄ったカルタ一行の手で成されてしまっていたからだ。


 更に言えば村長が懸念し、英雄豪傑に依頼しようと考えていたレッドライジングの討伐もやはりカルタ達の手で達成されていた。


 尤もこれはあの状況から判断した俺の予想で、実際にそれを目で確認したわけではなかったが、間違いないという自信はある。


 とは言え、村が不安に思っているなら確認ぐらいはしておくべきかと考え直し、調査依頼としてこれを請け負った。

 

 そして、村長の好意もあってその日の夜は宿で一泊することとなったわけだが――


「――以上の点から、グローリーブレイヴのリーダーであるリャクの精神には特定の相手に対する歪みが感じられる。アビスが万が一発生した際には特に気をつける必要があることだろう――」


 ふぅやれやれ。ここまでのリャクに対する報告書を纏めたが、元々俺はこの手の仕事は苦手なんだよな。


 それにしても、ダンジョンまで攻略されていたのは想定外だったか。一応ダンジョンをどのように攻略していくかを見ておくのも目的の一つだったんだが。 


 ま、攻略されたものは仕方ないな。俺は一息つくために部屋を出て一階に降りる。食堂のあった場所は夜の間でも酒の提供がされていたりもする。


 専門の酒場がない分、宿が兼業しているからだ。テーブルにはホミングの姿があった。そういえばこのメンバーの中ではホミングはだいぶ酒好きな方だったな。


「他のメンバーは休まれたのかな?」

「うん? あぁエリートさんっすかぁ~まぁノーキンは確かにね。ただ、リャクとレーノは今頃――」


 ニヤニヤしながら語る。その表情で察したが、全く仕方のない奴らだ。


「部屋でお楽しみ中ってことですね」

「はは、それが聞いてくださいっすよ。なんと二人して部屋じゃなくて村の外に向かったんっすよ。全く森のなかにでもいったんでしょうっすが、よくやるっすよねぇ」


 は? 村の外? わざわざこの時間にか?

 それは、おかしすぎるな。これまでの旅でわかったことはあのふたりはそういうことをするのにいちいちひと目を気にしたりしないってことだ。


 いや、多少はするかもだろうが、それでも獣のようにアレの声が聞こえてくることは多々あった。


 そんなふたりなら、わざわざそとにいかなくても宿の中で済ませればいいだろう。


 それなのに――気になるな。


「あれ? どうしたんっすか?」

「え? あぁちょっとトイレにね」


 そういいつつ俺は宿を出てふたりを確認しに行こうと思ったわけだが。


「あれ? 何だエリートか。どうかしたのかい?」

「――え? あ、あぁちょっとトイレにね」

「はは、それなら中にもあるだろう?」

「うん、あ、あぁそうだったな。いやちょっと勘違いしてしまっていてね」

「やだ、ドジね――」


 宿の入口まえでふたりとバッタリ出くわしてしまった。そしてそんな会話をした後、ふたりはそのまま部屋へ戻っていった。

 

 レーノはリャクの肩に撓垂れ掛かっており、その瞳は濡れていて顔も上気していた。


 リャクもどこかスッキリした面立ちであり、更に言えばアレの後の独特な据えた臭いが鼻についた。


「……バカバカしい」

 

 頭を押さえて、酒を呑みに戻った。全く、結局なんとなく外でそういうことをしてみたかっただけってことか。


 まるで猿だな、そんなことを思いつつ、何故か脳裏に赤髪の姿が浮かび上がりすぐに頭を振って消し飛ばした。


 全く、何を考えているんだか俺も。


「酒呑んで寝よ――」

ここまで読んで頂きありがとうございました。次の章も気になる!続きが気になる!ぶ、ブクマとポイントぐらい、あ、あげたっていいんだからね!などと思って頂けたならブックマークや評価を頂けると嬉しく思います。


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