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第37話 レッドライジング

前回の出来事

レッドライジングが暴れた


目標は変わりませんがあとがきはもとにもどしました。

いつも応援や感想を頂きありがとうございます!

(偉いもんを見てしまっただ!)


 その男は慌てた様子でひたすら森を走っていた。彼の本来の目的はこの辺りに現れる猪を狩ることであった。


 いつもであれば村を出て逆側の森に行き、そこで狩りを行うのが日課だったのだが、最近いつもの狩場周辺にダンジョンが現れたということもあり、新規開拓の意味もありそこで狩りを続けていた。


 男は自分の腕には自信があった。狩人を生業とし、長年続けてきた。弓の腕には自信があり卓越した技術の持ち主でもあった。

 

 スキルによって矢を強化する事も可能だった為、ある程度の魔物も対処できるし、いざというときのために魔道具も携帯してきている。


 だからこそ単身でわざわざここまでやってきた。そして意外と穴場であったスポットを見つけ、色々と探索している内に夜になってしまい野宿する羽目にまでなった。


 尤も、それでも男はこれ以上先に進むつもりはなかった。この先にはエサアールの森が広がっており、そこでは最近凶悪なデッドリーウルフが跋扈し始めている。


 弓の腕に自信があるとは言え、流石にそこまでの魔物に対応できるほどの腕は持ち合わせていない。


(まぁここまでが限界だよな。明日には村に戻ろう)


 背嚢は狩った獲物から得た素材でパンパンに膨れ上がっていた。男は毛皮をメインに採取するのが常であったが使えるようなら牙や爪でも持ち帰る。


 夕食は仕留めた猪の肉を焼いて食った。そして眠りにつき、翌朝目覚めた。


 近くに川のある場所を陣取っていたため、目覚めてすぐに川に向かい顔を洗い、水を飲んで水筒にも水を補充した。


 空気が美味いなと感じつつ、大きく伸びをする。川の上流側には丘があった。見上がる形で丘の頂が目に入る。


 そこに、それは立っていた。男の目の色が変わる。思考が一瞬にして警戒に切り替わる。

  

 あれはデッドリーウルフなのか? と一考する。エサアールの森からはまだ距離があるが、群れから逸れたのが一匹紛れてしまったのだろうか?


 だが、その考えも思考も一瞬にして打ち砕かれる。それはたった一度の咆哮。その瞬間に訪れる紅光。


 ほとばしる稲妻が朱色の電撃が、空気を切り裂き轟音を後にのこした。

 

 ぺたりと男は尻餅をついた。そして恐怖する。あれは、デッドリーウルフなんかではないことを肌で感じとり、記憶を探る。


「まさか、レッド、ライジング?」

  

 赤雷の狼の瞳がギロリと男に向けられた。ヒッ、と情けない悲鳴をあげる。今すぐ逃げ出したい思いだったが、体が全く動かなかった。


 男にとって幸運だったのは、丘から男までの距離がそれなりに離れていたことか。しばらく、と言っても実際は2秒か3秒かといった時間だが、男を俯瞰した後、赤雷の狼は興味なさげにその場から立ち去った。


 赤雷の狼が向かった先にはエサアールの森があった。男の帰る方向とは逆にあたり男は難を逃れることが出来た。


 とは言え――それからすぐ男は森を疾駆し、とにかく急いで村に戻ろうと繋いであった馬に飛び乗ったのである。


 急いで馬を駆らせ、とにかく少しでも早く知らせなければ! と思いを巡らす。ただでさえダンジョンがあらわれて大変なときだ。その上逆側の森ではレッドライジングの出現である。


 今はまだエサアールの森に向かってくれているが、いつその牙が人里に向けられるかわかったものではない。


 もしそうなれば最初に狙われるのは一番近場に存在するマルデ村(・・・・)。男が生まれ育った村だ。


 だからこそ、何が出来るかは判らないが被害を最小限に食い止められるよう動かなければ――






◇◆◇


 青天の霹靂とはこのことを言うのだろうか? 勿論それは目の前の魔物、レッドライジングが起こした物なのだが、とにかく凄まじい衝撃が辺りを襲った。


 しかも起こしたのはただの雷ではなかった。その名前が示すとおり赤い雷、赤雷、それが地上に襲いかかったのである。


「おい! 雷の落ちた場所が燃えたぞ!」

「さようでゴブリます。お気をつけください。レッドライジングの赤雷は別名燃える雷。落ちた場所を炎で包むのです」


 ジェゴブがその特徴を教えてくれた。なるほど。そう言われると得心がいく。何せあの赤い雷、天から落ちてきている途中から軌道上の空気を燃やし続けていた。


 そのため、雷の後から炎の尾がついてくるという奇妙な様相を呈していたのである。


「とにかく、まずは神鑑!」


レッドライジング

ステータス

総合レベル46

戦闘レベル24

魔法レベル12

技能レベル10

特徴

赤雷、紅雷玉、高威圧、スタンボイス

スキル

倍増

タイプ:物理強化系

総合評価:B

パフォーマンス:B

コスト:D

リスク:F

発動することでしばらくの間、全ての攻撃の威力が倍増する。


 これは、デッドリーウルフとは比べ物にならない強さだ。総合レベルでも倍。しかもスキルを発動されると全ての攻撃力が倍増する。


 特徴的にもかなりの攻撃型だ。


「レッドライジング、総合レベル46だ。皆油断しないように!」

 

 全員に注意を促す。特に赤雷の威力は最初の一撃を見ただけでもよく判る。


「言っていることは判るが、慎重になりすぎてもジリ貧だぜ」


 ドヴァンがレッドライジング側面を狙うように飛び出し、攻め込んでいく。 

 無謀な特攻、というわけではないのだろう。ドヴァンは自分がまず切り込むことで勢いをつけようとしているのだ。


「捻氣百脚!」

 

 目にも留まらぬ程の蹴りの連打がレッドライジングの脇腹に炸裂。彼の蹴りは螺旋のように練りこんだ氣も同時に叩き込むことで肉体の内側にまでダメージが及ぶ。


 魔物の顔が若干歪んだ。だが、決定的なダメージには繋がっていない。しかし、ドヴァンはこれだけでは終わらない。


 蹴り足を引くと同時に構えをとり、今度は右手に氣を集め右の手元が煌めく。


「螺旋流破鎧術――螺旋燈突(らせんとうとつ)!」


 光った瞬間には既にドヴァンの身は逆側にあった。放たれた突きは間違いなくヒットしたことだろう。


 だが結果的に招いたのは、赤雷の獣の怒りであった。


『ウォオォオオォオオォオオン!』


 レッドライジングが雄叫びを上げた。ドヴァンの肉体に電撃が駆け抜け、その動きが止まる。


「これは、スタンボイス――相手をしびれさせ一時的に動きを封じる!」

「これは、いけません!」


 ドヴァンが動きを止めた隙を魔物は見逃さなかった。しかも明らかな空気の変化。スキルを使用したんだ。倍増によって、威力はさっきの倍。更に高まる。


 赤い閃光と炎が天を割った。ドヴァン目掛けて赤雷が真っ逆さま。

 

「返雷!」


 だがなんと、ジェゴブが跳躍し、落ちてきた雷を抜いた剣で跳ね返した。結果、赤雷は放ったレッドライジング本人に命中。


 尤も、自分の放った攻撃だけにダメージは全く受けていないようだ。ただただ憎々しげにジェゴブを睨み、落ちてくるのを待っている。


「神装技ケルヌンノス!」


 だが、そこに明確な隙が生まれた。ジェゴブに意識が行き過ぎている。俺の放った矢が牡牛に変化しレッドライジングに突撃。

 

 ギョッとしたその四肢向けて、今度は示し合わせたように俺がウルアロウをヘアがヘアジャベリンを連射。光の矢と髪の投槍が連続でレッドライジングに命中し、流石に嫌がったのか大きく後方に飛び退いた。


「さすがでゴブります。ご主人様とヘア様ならばきっちりと追い込んでくれると信じておりました」


 着地し俺たちのことをジェゴブが称えてくれた。


「そう言ってくれるのは嬉しいけど仕留めきれなかったな」

「まだまだ元気にみえるね……」

 

 狩猟神ノ装甲は獣相手に強い装甲でもある。だけど、それにも耐えきったわけで攻撃面だけでなくタフさもかなりのものというわけか――


『グオォオオオオオン!』


 そして距離をとったかと思えば再び吠え声をあげ――直後バチバチと迸る赤い球体が五つ、その頭上に浮かび上がった。


「あれは、紅雷玉でゴブりますね」

「紅雷玉?」

「はい。あの赤雷を封じ込めた玉とお考えください。威力は赤雷の直撃に多少劣りますが、アレが浮かんでいる間、近づいたものに自動的に赤雷が放たれます」

「それが五つか、厄介だな」


 アレについては俺も鑑定で知ってたが、説明はジェゴブがわかりやすくしてくれるから助かる。こっちは戦闘に集中できるからな。


 とは言え、電撃と炎両方の特性を持つのが厄介だけど。


「ご主人様。あの技への対処は私めにお任せ頂けますか?」

「ジェゴブが? そういえばさっきも雷を跳ね返していたな」

「はい。私、雷の属性に特化しておる身。それ故に雷の攻撃であれば全て剣で跳ね返せます。そして、アレは自動で攻撃するからこその欠点もあるゆえ」

 

 そんな特技まで持っていたとは――いつも謙遜しているけどかなり優秀だなジェゴブ。


「判った。先ずはジェゴブに任せるよ」

「ありがたき幸せでゴブりまする。それでは皆様、一つお耳を拝借」


 そしてジェゴブに一つの作戦を教えてもらう。その後彼は、一旦様子を見ているレッドライジング向けて駆けていった。


「さぁ、やれるものならどうぞやってみてください」

 

 ジェゴブが攻撃範囲内に踏み込んだと同時にあの玉から赤雷が迸る。確かに見たところ自動で相手を察知し、攻撃しているようだ。


「ハッ!」


 それをジェゴブは見事その細剣で跳ね返していく。

 言っていたとおりだな。自動の攻撃は自動であるがゆえに読みやすい、そうジェゴブは話してくれた。


 それを証明するように全ての赤雷を跳ね返していく。素早い動きであっという間に懐に潜り込むと、しびれを切らしたレッドライジングが直接爪で攻撃してきた。


 赤雷が通じない以上、直接攻撃しか無いと思ったのだろう。


「ノットジェントル、その手、想定の範囲内でゴブりますよ――反撃の狼煙!」


 待ってましたと言わんばかりに軽やかなステップで爪の一撃を躱し、その勢いを回転に乗せて、天に向けて細剣を突き上げた。


 その瞬間、衝撃が突風となりレッドライジングもろとも吹き上げる。


 獣の顔に驚愕。そして――


「はぁあああぁあああぁああぁあ!」


 予定通りジェゴブに続いてヘアが黄金の拳をありったけ叩き込む。赤雷の獣は拳が当たる度に鈍い音を残しながら上へ上へと持ち上がっていった。


「後はお任せくださいお嬢! 螺旋流破鎧術竜巻横截(たつまきおうせつ)!」


 そして腰だめの状態で待ち構えていたドヴァンによって竜巻が発生。レッドライジングに向けて直進し、更に天空に向かって持ち上がっていき。


「ヘア!」

「はい!」


 俺が駆けると、ヘアが網を作り上げる。その網を足場にし、一気に跳躍。剣神ノ装甲に切り替え、大剣状態でレッドライジングの真上を取り。


剛毅果断(ごうきかだん)!」


 攻撃の一点に集中させた振り下ろしの一撃が決定的なダメージを与え、レッドライジングは地面に激突しもう動き出すことはなかった。


「倒してしまえばあっさりとしたものだったな」

「今回はジェゴブの活躍が大きかったけどね」

「いえいえ、それに相性もゴブリますから」

 

 特殊な赤雷とはいえ、雷であればなんでも跳ね返してしまうジェゴブがいてくれたのは確かに大きかった。


「それに私めは攻撃の多くが雷系統。相手も雷に強い耐性があった故、皆様がいなければ攻撃面で決め手にかけておりました。カウンター技である反撃の狼煙も、獣系の相手は警戒心が強いので一度見せると次が決めづらくなりますから」


 それでか。作戦は、ジェゴブが必ず隙を作るので、その後全員で一斉に攻撃を決めてほしいというものだった。


「皆の連携があったからこその勝利といったところかな」

「はい! そうですね!」

「私めなどが皆様のお役にたてて光栄でゴブります」


 そしてレッドライジングの解体はジェゴブが引き受けることに。約束の時間まではもうあまり残っていないけど、俺たちは最後に一狩りして終わらせようという話になった。

 

 こうして、リャク達との約束の時間がやってきたので、解体した獲物を魔法の袋に詰めて俺たちは馬車まで引き返していく――

予定では間もなく第三章が終わります。

予告

「な、なんだあれは――」

「馬鹿な、あれは、不死者の軍団でゴブりまする」

「駄目だ! 数が多すぎる!」

「ここは私に任せて、皆様は先に行くでゴブりまする」

「駄目ジェゴブ! お願い死なないで!」

「ジェゴブ、必ず生きて帰ってこい。主人としての命令だ!」

「――皆様と一緒に旅ができて楽しかったでゴブります。ですから皆様、どうか、ご無事で――」


次回!ジェゴブ散る!

君にはスキルが見えているか?


※この予告はフィクションです。登場する展開・台詞・構想等は架空であり、実在の本編とは関係ないかもしれません。

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