第36話 狩り対決
更新の時間がちょっと安定してませんが……
いつも感想や評価を頂きありがとうございます。
感想はしっかり拝読しております。ジェゴブについてなど嬉しい限りです!
今更言うまでも無いけど、僕たちは恐らくこの世代で一番英雄に近い存在だ。それは授かったスキルの強さからもはっきりとしている。
しかも、僕たちはあきらかに他の冒険者より成長が早い。何せシルバークラウンについた頃には既に並の冒険者にとって壁となるLV20を全員が超えていたんだ。
そして当然だが、今は更にレベルは向上しているわけであり――
リャク・ダ・ツーノ♂15歳
称号:期待の新星
ステータス
総合レベル32
戦闘レベル16
魔法レベル0
技能レベル16
スキル
強化装甲
タイプ:物理強化系
総合評価S
パフォーマンスS
コストG
リスクG
装備しているものが強化される。木刀でも鋼鉄の棒のように変化し、皮の鎧も鉄のように頑強になる。成長すると強化度が向上し、装備品の形状そのものが変化するようになる。
レーノ・ネトラ♀15歳
称号:美しき精霊使い
ステータス
総合レベル27
戦闘レベル1
魔法レベル13
技能レベル13
スキル
精霊使い
タイプ:学修系
総合評価A+
パフォーマンスA
コストC
リスクC
精霊を操る知識が手に入り、精霊魔法を行使することが出来るようになる。
ノーキン・デスネ♂15歳
称号:考える脳筋
ステータス
総合レベル28
戦闘レベル18
魔法レベル0
技能レベル10
スキル
筋肉増強
タイプ:変化系
総合評価B+
パフォーマンスB
コストC
リスクC
筋肉量を増やす。増やせば増やすだけ頑強になり攻撃力が増すが、体力の消費は激しくなる。
ホミング・ショット♂15歳
称号:百発百中の射手
ステータス
総合レベル25
戦闘レベル10
魔法レベル0
技能レベル15
スキル
追尾
タイプ:操作系
総合評価:B
パフォーマンス:B
コスト:D
リスク:G
遠距離攻撃が全て相手を追尾するようになる。成長すると追尾出来る弾数が増えていく。また同時に複数の相手をターゲットに選べるようにもなっていく。
これが今の僕たちの戦力だ。正直言えば冒険者として登録してまだ間もないのにこのレベルは破格過ぎる。特に僕はもうレベル30を超えている。
フフッ、まさに神に選ばれた存在。勇者の中の勇者としか言えないような惚れ惚れするようなステータスだ。
勿論他の皆だって僕ほどじゃないにしてもこのレベルは大したものだ。冒険者というのは一人だけでなんとかなる仕事ではない。
優秀な仲間をどれだけ揃えられるかも冒険者の価値を決める上で大事な要素となる。そういう意味では僕のパーティーには非の打ち所がない。
「リーダー、疑問なんっすけどこの狩り、何の意味があるんっすか?」
そんなことを考えていると、ホミングが怪訝そうに尋ねてきた。
確かに一見するとこの勝負の意味は理解が出来ないかもしれないが。
「決まっている。あいつらと一緒にいるあの子の目を覚まさせるためさ」
「……本当、随分とご執心なのね」
レーノが面白くなさそうに言った。やれやれ、僕ぐらいになるとちょっとしたことが嫉妬に繋がるから困ったものだ。
「別に僕は彼女のことをどうこうしようだなんて思ってないよ」
だからしっかり説明しておく。そう、こういうことは僕からするものじゃない。彼女の方から僕に好意を持ってくるのが普通だ。
「でもね、可愛そうじゃないか。きっとあの子はカルタの口車に乗せられて騙されているんだ。妄信的にね。きっとあの男は他のふたりに協力してもらって、わざと彼女のピンチを演出しそれを救うふりでもして騙したんだよ」
「……本気でそう思っているのか?」
「思っているさ。そうでなければ彼女がカルタみたいな屑スキル持ちを信じ込む理由がないからね」
そう、そうに決まってる。それに、僕は確信している。あの男がどれだけ卑怯で愚劣な男かを。
「しかし、だとしたらこの勝負を受けた理由がわからないだろう? お互い勝手にするという話ではあったが、実力がないのに狩れるような魔物ではないぞ?」
「そうっすね。デッドリーウルフは普通のギルドならCランククラスはいないと厳しいとされるほどっすよ?」
「単体でレベルが22。しかも群れで行動するから私達が村周辺で戦ったハングリーウルフなんかとは比べ物にならないわね」
「そう! そこが重要だ。君たちはあのカルタが乗っていた馬車を覚えているかい?」
「覚えているっすよ。あんな高そうな馬車、よく手に入れたなと思っていたっす」
「それさ。あの馬車、よく見ると商家にあるような紋章が刻まれていた。家紋ってやつだね。だけど、それはカルタではありえない。かといってもうふたりもとても商家の出には見えなかった。だけど彼女は薬草の知識が豊富だとカルタが言っていた。商家に生まれていれば薬学に精通していることも珍しくない」
「あ、つまりあの馬車は元々彼女の物ということっすか?」
「そう! つまりあの男は何も知らない商家のお嬢様をだまくらかして連れ回しているってわけだ。あの隻腕の剣士が彼女をお嬢と言っていたのは、元々彼女の護衛だったからということさ」
「な、なるほど! そうだったんっすね!」
「……いや、ちょっと待てそれだとさっき言っていた事と矛盾が……」
「とにかく、そうやってカルタは彼女を騙し。上手いこと馬車を手に入れた。その上で強力な魔道具でも手に入れたんだろう。きっとそれさえあればデッドリーウルフを倒せると踏んだのだろうね」
「なるほど! さすがリーダーっす!」
「う~、何かちょっと想像が飛躍しすぎているような気がするわ」
「ははっ、何を言っているんだレーノ。大体それ以外でカルタがここまで無事旅を続けられた理由があるとでも?」
「……そう言われると、確かになさそうだけど」
「いや、単純にカルタが腕を上げたという可能性を考えないのか? もしくは俺たちが単純に紙装甲のことを低く見積もってしまっていただけで、実は強力な力が隠されていたとか――」
「「「それはない(っす)」」」
「…………」
全く、ノーキンはどうみても頭使うのは苦手なのに、無理して考えるからそんな頓珍漢なことを言ってしまうんだろうね。
「とにかく、向こうが魔道具頼みなら恐れることなんて何もない。何せこっちは実力で狩れる腕があるんだからね。さぁ、どんどん狩っていこう!」
それから30分程経った頃には、僕たちはかなりの数のデッドリーウルフを狩り終わっていた。
「うんうん、全部で十匹だね。これはいいペースだ。あと残り半分あるし、更に討伐数は伸ばせるね」
「解体したのは魔法の袋に入れておけばいいっすね。でもあいつらこんなの持ってるんっすかね?」
「はは、流石にそこまでは気にしてられないかな」
まぁいくらなんでも魔法の袋までは持ってないと思うけど。だからこそ、更に彼女にアピール出来る材料になるね。
この年で魔法の袋を持っている冒険者なんてそうは――
――ドォオオオォオオォオオオォオン!
「な、なんっすか一体!?」
「……雷のようだな」
「雷? 空はこんなに晴れてるのに?」
うん、確かに妙だ。これだけ青空が広がっているのに雷がなるなんてね。
「これはもしかしたらあいつらが魔道具を使ったのかもね。うん、でもこれで確実だね。あいつらは魔道具だより。実力は伴っていないってことさ」
一方で僕たちは実力だけでこれだけの魔物を狩っている。この差を知れば、きっと彼女も自分が騙されていたと気づくはずさ。
そしてこの僕に――フフッ、僕から声かけると流石にレーノに申し訳なく思えるけど、向こうから声をかけられたら、それはもう仕方ないよね? 大丈夫。僕はふたりともちゃんと平等に愛してあげるから――
◇◆◇
デッドリーウルフ
ステータス
総合レベル22
戦闘レベル15
魔法レベル0
技能レベル7
特徴
インパクトボイス、威圧
スキル
会心
タイプ:特殊系
総合評価:F
パフォーマンス:F
コスト:G
リスク:G
攻撃が時折、相手の防御に関係なくダメージを通す強烈な一撃に変化する。
これがデッドリーウルフのステータスだった。特徴にあるインパクトボイスと威圧が本来気をつける点だろうが、威圧は相手のレベルが高い場合効果が薄い。
俺たちのレベルはデッドリーウルフより高い。ヘアもレベルが25ある以上、威圧に関しては無視して問題なかった。
インパクトボイスは吠えると同時に衝撃を飛ばす攻撃だ。爪や牙の攻撃以上に威力が高いが、放つ直前口を大きく開けるのはジェゴブの助言で承知している。
飛ぶ方向も直線的なので正面にさえ立たなければ受けることはない。基本的にはジェゴブがやっているように常に動き回って脇から攻撃を当てていくのが理想的だ。
スキルの会心にしても自由に発動するわけではないので、攻撃さえ受けなければどうということはなく。デッドリーウルフの攻撃は爪にしろ牙にしろカバーできる範囲が狭い。
だからこそ群れで行動してくるのだが、逆に言えば群れとして機能させなければ脆いという事でもある。
特攻隊長を買って出てくれたドヴァンが切り込み、剣を振り回し、蹴りをお見舞いするだけでも十分な威嚇となり陣形は瓦解する。
中距離からはヘアの髪の毛が待っているため、一度崩れてしまえば絡め取って個別撃破することは容易かった。
ヤケになって特攻してくるような相手は俺がしっかり潰すし、逃げを選択する相手はジェゴブが追って脇を狙いとどめを刺す。
「これで全部で十五匹でゴブりまする」
解体を終わらせ、ジェゴブが狩った獲物の数を教えてくれた。時間的には残り半分ってところだ。
「勝ち負けに特に拘ってないけど、ペース的にはどんなものかな?」
「悪くないでゴブりますよ。このペースで狩れる人は熟練した冒険者でもそうでもないのでは? と思います」
「そもそもあいつらって実力的にはどんなものなんだ?」
「……強いよ。一番高いリャクでレベル32。ノーキンがレベル28でレーノでレベル27。一番低いホミングでもレベル25だし」
「私とホミングという方が同じレベルということなのね」
「いやいやレベルが一緒でもお嬢の方が実力は上ですよ!」
ドヴァンが力説する。とはいえ、戦闘経験という点がどう出るかがあるとは言え、ヘアはかなりスキルも使いこなせるようになってるし少なくとも負けることはないだろうが。
「とにかく、向こうが求めているのは狩った数での結果だしな。残り時間頑張ると――」
「――!? これは!」
その時だ。ジェゴブの様子が明らかに変化した。どこか緊張感のある声。空気が変わる。
そしてそれは俺たちにしても一緒だった。肌がひりつくような感覚。
同時に降り注ぐ強い圧力――これまでの相手と明らかに異なる威圧感。
そしてそれは現れた。空中を蹴り、俺たちの正面に着地――ギロギロと目玉を蠢かせ威勢を示す。ソレの見た目はほぼデッドリーウルフと変わらないように思える。
ただ、一回り程大きいか? 毛の色もより赤味が濃い気はするが、個体差の違いと言われればそれで済まされる程度の差とも言える。
ただし、その内に秘められた実力は、明らかに違う。鑑定しなくてもわかるほどだ。
「……どうやら厄介なのが現れたようです。レッドライジング――デッドリーウルフに似ていても凶悪さははるかに上にいる、魔物でゴブります――」
どうやら凶悪な魔物が出現したようでゴブります。




