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第32話 ジェントルマン

今回は前話と違って効果音オフです。

いつも感想や評価を頂きありがとうございます。

※前話において魔法の袋やポーションを所持している描写を追加しております。

「いかがですか? この紅茶は西のアルマイラ産で、酸味と甘味の程よいバランスが奇跡の黄金比を組み上げており、またこの独特かつエレガントなスイートでエスニックな香りが鼻孔を刺激し、より味を深めるのに――」

「あの、ちょっといいですか?」

「うん? 何でしょうかなお客人?」

「……いや、よく考えたらなんで俺たち、ここで同じテーブルを囲んでティータイムを過ごしてるのかなと――」


 そう。俺たちはどうやら最奥部に来たのは間違いがないようなんだが、どういうわけかこのゴブリン、なのか? とにかく彼に促されテーブルを囲むことになってしまった。


「……ふむ、何故と申されると、それは私がジェントルマンだからに他ならないですな」

「ジェン、トル、マン?」


 ドヴァンが眉をひそめた。ダンジョンでいきなりジェントルマンを名乗るゴブリンと遭遇したら怪訝に思うのも当然か。


「そしてジェントルマンたるもの、お客人はもてなすものです。おもてなしの心です。ですからこのように紅茶をふるまっているわけです」


 なるほど。何かわかったようなわからないような……ただ、ジェントルマンと言われれば、このゴブリンの様相にも納得がいく。


 このゴブリン、正直見た目はあまりゴブリンらしくない。着ているものからして燕尾服だ。肌の色は緑だが他のゴブリンと違ってうっすらとした緑なので品を感じる。


 全体的にシュッとしていて、髪の毛まであり、しっかりと整えられていて清潔感があった。顔には片眼鏡をしていて知的さも滲み出ている。


「あ、あの紅茶とても美味しいです」

「ありがとうゴブります麗しいお嬢様」

「へ? う、麗しい――」


 もぎたてのリンゴのように頬を朱に染める。目ざといドヴァンはヘアが浮かれないよう注意を促した。


「お嬢、いくら紳士ぶっていても相手はゴブリン。もしかしたら今も虎視眈々とお嬢との交尾を狙っているかもしれないのですよ」

「へ、こ、交尾!」

「下賤な勘ぐりは頂けませんな。私はジェントルマンゆえ、無理矢理などといった真似は断じていたしません。ましてやこのような穢れを知らぬような純なる姫君。こうして見ているだけで十分幸せでございます」


 ゴブリンは信用できない。その考えは至極当たり前のことだ。ただ、俺から見てもこのゴブリンが己を偽ってこのようなことを語っているとは思えない。


 何より、騙すにしては色々と面倒が過ぎるというものだろう。紅茶に薬を仕込んでる可能性ぐらいは疑ったが、どこで手に入れたかはしらないけど本当に上等な茶葉を使った一級品だった。


 それに――


ジェントルゴブリン

称号:ダンジョンボス

ステータス

総合レベル45

戦闘レベル15

魔法レベル15

技能レベル15

特徴

魔核の恩恵、ジェントルな口調、紅茶を嗜む余裕

スキル

知識の追求

タイプ:学修系

総合評価:C

パフォーマンス:C

コスト:G

リスク:G

あくなき知識欲が生まれる。人間以外の生物が習得することが多い。頭が良くなり学んだことが身につきやすくなる。


 神鑑によって得られた情報がこれだ。そう、まさに彼はジェントルマンだったのだ。名前的にも。


 そして大体のゴブリンが持ってる妬ましい特徴がない。つまりヘアを襲う気が無いという点にも信憑性がわく。


 何よりスキルだ。知識の追求……人語を理解しているのもこのスキルの影響が大きいのだろう。


 ただ、彼には他の魔物にない特徴がもうひとつある。それは、称号だ。


「……ジェントルゴブリン、それが君の名だ」

「いかにも、その様子だと、鑑定かそれに準ずるスキルを持っているといったところでしょうか?」

「肯定だ。そして君の称号も理解した。なんとなく判ってはいたけど、やっぱりこのダンジョンのボスなんだね」


 こうやって紅茶のひと時を楽しむのも悪くはない。だけど、そろそろ本題に入る必要がある。


「如何にも。私がこのダンジョンのボスを務めるジェントルゴブリン。ですがそんなことは些細なことではありませんか?」

「些細なこと? いや重要な事だろう」


 ドヴァンが腕を組んで告げる。そう、俺たちはこのダンジョンの攻略に来ているのだから、些細なことで済む話ではない。


「私はこのダンジョンで知識さえ高めることが出来ればそれでいいと思っております。後はこのようにティータイムをくつろぐことが出来れば。なので、みなさんがこのまま黙って出ていかれるのなら、手出しをするつもりはありませんし危害も加えません。約束致しましょう」


 それが、ジェントルなやり方ってことか。だけど、別に今この場で助かればそれでいいという話ではない。


「それなら、もうこれ以上魔物は増やさないし、ダンジョンも成長させないと約束出来るかな? スタンピートが起こるのはごめんだからな」

「残念ながらそれは無理というものです」

「だろうね。そうだと思ったよ」

 

 彼に少々無茶な要求を突きつけた。だけどそれは予想通りあっさり却下された。


「そんな、あの、なんとかならないのですか?」

「お嬢、相手は所詮魔物なのです。話し合いでどうこうなる相手じゃない」


 ヘアは、相手が凄く紳士的に振る舞ってきているから心が揺らいでいるようだ。人の言葉をなまじ理解できている上、敵対心もないとなれば彼女なら情も湧くというものか。


「今彼が言われた事は私の権限ではどうしようもないことです。ボスとはいえ、私が出来るのはここまでやってきた相手がどうしてもと引けない場合に戦うことだけですから」

「例えば、君が戦わないで俺たちがここを通り過ぎるのを黙って見過ごすというのは?」

「それも無理な話ですし、そもそも私を倒さなければ魔核までの扉は開かれません。それに、例えば貴方に今これから私が両親を殺しにいきますと宣言したとして、大人しく譲って頂けますか?」

「ゆずるゆずる。どうぞどうぞお好きなように」

「え?」

「は?」

「……これは、少々想定外な返しでしたね」


 ジェントルゴブリンだけでなく、ヘアとドヴァンも呆気にとられた顔をしている。


 理由は、後で説明しておくかな……。

 

「貴方はご家族と上手くいっていないのですか?」

「妹以外はクソだと思ってるよ」

「それではその妹さんをこれから殺しに行くと言った場合は?」

「よっし、今すぐバラバラにしてやるからそこになおれ」

「ひやっ!?」

「カルタ、お嬢が本気でビビってるぞ! 殺気漏れてるし!」


 いやだって、妹殺るぞ言われて黙ってられるわけ無いだろ?


「――そう、つまりそういうことなのです。魔核から生み出された私にとって、魔核は大事な親のようなもの。貴方が妹を思う気持ちと変わらない感情を持っているのです」

「……なるほどな。だけど、だからといって、はいそうですかと引き上げるわけにもいかないぜ? 大体、ここで俺たちが引き上げたところで別な冒険者が狙いにやってくるだけだろうし」

「……なるほど、それであれば、仕方がないかもしれませんね。不本意ではありますが」

「……そうだな」


 どこかゆったりとしたティータイムはここで終わりを告げた。誰にともなく席を立ち、互いの距離を決めそこに立つ。


「一対一でやろうか?」

「御冗談を。私はこのダンジョンを任されしボス。相手が複数人であってもいざとなれば戦う覚悟。そのような気遣いは不要であります」

「そうか――」


 愚問だったな。ジェントルな彼だからこそ、そんなどこか遠慮したようなやり方は失礼に当たる。


 ただ、ヘアにはまだ戸惑いが見えるな。


「ヘア、無理して参加しなくていいからな」

「そうです。お嬢はどうぞ安心してみていてください」

「え、で、でも」

「ふむ、それであれば私も、ジェントルマンとして姫君には手を出さぬよう致しますか」

 

 彼ならそういうと思ってた。


「ば、馬鹿にしないでください! 私だって仲間です! 戦えます! 遠慮なんてしないでください!」


 だけど、ヘアが急に怒り出した。驚いたなこんな一面もあるんだな。


「お嬢! 立派になられて!」

「いや、泣くなよ……」

「これは私としたことがとんだ勘違いを。かしゴブりました。では、ここからは互いに真剣勝負ということで――」


 ジェントルゴブリンが身構える。手には細身の剣、レイピアを有し、半身の構え。正統派な剣術を嗜んでそうな雰囲気。


 俺たちはコクリと頷き合う、遠慮がいらないならここは先ず狩猟神ノ装甲にし、ウルアロウで連射する。


 幾筋もの光がジェントルな彼に伸びていく。だがゴブリンとは思えない軽やかな動き、しかも最小限のステップで全弾躱してしまった。


 おかしい、戦闘レベル15ではこの速度の矢をここまで軽やかに躱せると思わない。

 少しギョッとしたが即座に距離を詰めたドヴァンが左から、ヘアの髪の拳が右から挟撃する。


「チェストーー!」

「おっとこれはいけない」

「な!?」


 剣を横に一閃しようとしたドヴァン。だけどジェントルゴブリンは敢えて振る方に出ていき、レイピアの刃を重ねて回転。相手の力を利用し後ろに回り込んで前蹴りで押し込んだ。


「キャッ! ごめんなさい!」


 当然、その方向からはヘアの拳がきており、同士討ちを誘発。カウンターでヒットしたのもあって、ドヴァンは翻筋斗打つように倒れてしまう。


「お嬢さん、油断は禁物ですよ」


 ジェントルに指を鳴らす。すると雷が発生しヘアに落ちた。


「きゅぅううぅうう」


 ヘアが目を回して気絶してしまった……雷は感電効果もあるから気絶しやすいと言うけれど。


「あんた、魔法も使えたのか」

「ジェントルに、少々嗜む程度です」


 嗜むレベルの魔法じゃないだろ。


「お嬢、お嬢ーーーーーー!」

「ドヴァン、気絶してるだけだから落ち着けって!」

「これが落ち着いていられるか! 気絶とは言えお嬢に手を出す奴は許しちゃおけん!」


 ドヴァンが加速、ジェントルゴブリンに迫り、そして彼の手元が光った。閃光の突き――螺旋燈突(らせんとうとつ)


 彼が持つ技でそれは最速、見て躱せるものではない。


「素晴らしい速度だ。だが、動きが直進的すぎる」


 だが、避けた。いや、今のではっきりと判った。正確には躱したのではなく、躱していた(・・)


 このゴブリン、洞察力が異様に高い。さっき俺が射ったウルアロウを躱していたときから違和感があったが、見てからではなく攻撃した時には既に躱していたんだ。


「それといい忘れてましたが、私は突きが得意です――ダッシュラッシングピアス」


 疾駆しながらの突きの連打。たった一本の剣なのに遠目から見ていても恐ろしいほどの物量と圧力を感じる。


 目の当たりにしたドヴァンからすれば、広がる刃の大群に逃げ場なしといったところかもしれない。


「ぐぅ!」


 ドヴァンが壁に叩きつけられた。だけど彼は頑丈だ。この程度で死ぬことはない。それよりも問題は、俺たちの攻撃がまだ一発もまともにヒットしてないってことだ。


 つまり、障壁すら破れていない。


「所詮ゴブリン――」

「え?」

「そんな油断がありましたね? 慢心とも言えますか」


 片眼鏡に触れながら真剣な目つきで口にする。正直言えば、そういう気持ちが無かったと言えば嘘になる。そもそもステータスだけ見ている分にはそこまでの脅威も感じられなかった。


 総合レベルこそ45だが、全てのレベルが15というのは中途半端に感じて、いわゆる器用貧乏なのかと勝手に思っていた。


 だけどそんな思い込みが目を曇らせた。このジェントルゴブリンはダンジョンボス。しかも知識あるボスだ。間違いなく手強い。


「目が覚めたよ――」

「あ、あぁ、俺もだ」

「わ、私は、まだまだ弱いですが、でも、皆さんの役に立ちたい!」


 ドヴァンとヘアも立ち上がった。そして三人とも目が違う。もう油断なんてありえない。


「では、ここからが本番といったところですか――」


 そして戦いが再開、ヘアは下手な攻撃はせず、髪の毛で相手の動きを封じ込めに入る。


「狙いは悪くないですが、隙がありますよ」


 ドヴァンが指を鳴らす。


「ヘアジャベリン!」

「ムッ、槍を避雷針代わりにしましたか」


 だけどヘアも同じ手を二度もくらわない。スピアにした髪をヘアジャベリンとして、真上に飛ばすことで落雷を受け止めた。


「お前も――」

「指を鳴らした直後は隙が出来るだろ?」

「むぅ、そこに気がつくとは流石です。ですが、手札はいつでも一枚多めに用意しておくもの、チェインライトニング」


 再び指を鳴らすと伸びた電撃が俺からドヴァンに連鎖した。痺れで息が止まりそうになる。だけど――


「肉を切らせて骨を断つ! 剛毅果断(ごうきかだん)!」


 大剣状態での神装技。これは大上段の構えから一切の防御を捨てて振り下ろす。相手の防御を無視して両断するほどの破壊力。


 最初から攻撃は受ける前提だ。流石にこれは読みきれなかったのか、ジェントルゴブリンに猛烈な縦一文字が刻まれる。

 

 障壁の破れる音が聞こえた。おまけにジェントルゴブリンの動きが止まる。この技は目にした相手を畏怖させる。ましてや障壁越しに受けたのだから、どれだけ心が強くても動揺は訪れる。


「――捻氣脚!」

「ぐむぅ!」

 

 隙が生まれた直後、ドヴァンの螺旋の蹴りが炸裂。ジェントルゴブリンが浮き上がる。だけど、決まったと言えるほどのダメージはなく彼は軽やかに地面に着地した。


「くそ、いまいち力が乗らねぇ!」


 それは、やはり最初のダメージが残っているからだ。今のも捻氣百脚なら決まったかもだが、そこまで気を練る余裕がなかったのだろう。


「流石にこのままではまずいですね。一気に決めさせて頂きますよ。サンダーストーム!」


 ここで強力な魔法が発動。ジェントルゴブリンから大量の電撃が全方位に伸びてきた。平面的にではなく立体的に伸びる電撃からは逃げられるすべがない。


 だけど、逃げれなくても防ぐ手段ならあった。ヘアが俺たちを守るために髪で作った盾を展開させる。一つだけではなく、一度に複数の盾を形成できるようになっていたのか。全くいつの間に、ヘアもやっぱりしっかり成長している。


 しかも本来なら髪を通してヘアにまで電撃がいくものを、途中で髪の毛を枝分かれさせ地面に逃げるように工夫されていた。


「避雷針に続き、こんな避け方まであるとは驚きです。ですが――まだです」


 ジェントルゴブリンが俺に向けて疾駆し、凄まじい加速を見せた。

 そして正面から突きがヒット。攻撃と同時に電撃が俺の体を駆け巡る。


 間髪入れずに背後からもひと突き喰らい――


「ライトニングスリー!」


 最後に突き上げの一撃。雷が下から上に昇り、俺の体も浮き上がる。


「これでトドメです! アッパーライジング!」


 スーツの燕尾をはためかせながら跳躍し電撃と化した突きが下から俺に迫る。電撃の付与された突きを三連続で受けたことで身動き取れず今の俺は無防備状態だ。


 だけど――


「ブレイブハート!」


 神装技の発動。肉体と精神が強化され、痺れも消え失せた。体制を立て直し、迫る戦士を迎え撃つ。


「お前、強かったよ」


 片眼鏡の奥の瞳が見開かれる。そして、フッ、とどこか満足げな笑みを彼はこぼした。


「ブレイブ――ゲイザー!」


 そして、振り下ろした刃が、淀み無くジェントルゴブリンを捉え、衝撃が駆け抜けた――





「――最後は、逆にカウンターを受けましたか……」

「あぁ、お株を奪ってしまったな」


 地面に倒れているジェントルゴブリンへ近寄り話しかける。完全に倒したことは様子から判った。


 ゴブリンとは思えないほど手ごわかった。だからこのまま散ってしまうには惜しい気もする。だけど、これがボスの宿命なのだろう。


「何か、私、悲しいのです」

「お嬢はこころ優しいですから。だけど、色々と俺も学ばせて貰ったよ」

「ふふ、こんな私を悲しんで頂けるとは。ですが、悪くありませんな。最後に、ボスとして戦えたのがあなた達で良かった。本当にありがとうゴブりま、す」


 パタンっと遂にジェントルゴブリンが力尽きた。何か戦いが終われば、気持ちのいい相手だったなと思う。


「え?」


 ふと、不思議な事が起こった。遺体が光に包まれ、ジェントルゴブリンが完全に消え去り、代わりに一つの指輪が遺されたのである。


「これが、ボスの戦利品ってやつか?」

「どうなんだろうか? 俺も初めて見るけど……」


 ダンジョン内ではたとえば上層にいたゴブリンのように普通は倒したところで所持している武器は消えてしまう。


 しかし、ボスの場合は魔核も強力な装備品を作成し与えてる場合があり、そのレベルになると例え倒されたところで消えずに残ることが多い。


 まぁこれも俺は人伝に聞いた話なんだけど、今回の場合それともちょっと違うような?


 とは言え、折角だし、指輪は拾って持っていくことにする。一応鑑定してみたけど、ジェントルな指輪とだけあった。


 う、う~ん。とにかく、ボスが倒されたことで奥の壁が開いた。進んでいくと、あった。壁に埋め込まれた魔核が。


「大きさは成人男性の顔ぐらいか」

「何か脈打ってる……」

「魔核も生きてるって事か」


 そう、魔核は心臓のように動いていた。だけど、もう周りに邪魔はいない。ボスがいなくなれば魔核は後は倒されるのを待つだけだ。


 だから、みんなを代表して俺が魔核を斬る。終わってみればあっさりとしたものだ。

 

 魔核の動きは止まり、石化していく。特に変わったこともない、かと思ったのだが、ふと何かが魔核から溢れ出し、ジェントルな指輪の中に吸い込まれていった。

 

 なんだ? とは思ったが、魔核はそのまま石化し地面に落ちた。それを回収して魔法の袋に入れておく。


 こうなると後は急いでダンジョンから脱出する必要がある。魔核の力を失えばダンジョンは今の形を維持できなくなり、後は時間と共にダンジョンは崩落する。


 なので崩落前に俺たちはダンジョンを脱出した――






◇◆◇


「はじめてのダンジョンにしては中々手応えがあったな」

「ボスが強かったからね」

「でも、やっぱり少し残念です」


 ヘアがしゅんっとしている。気持ちも判らないでもないけど……。


「そういえば、その指輪、何か吸い取ってなかったか?」

「あぁそういえば。ちょっと鑑定しなおしてみようかな」


・召魔の指輪

ジェントルな存在を召喚できる指輪。


――はい? え? どういう事? 鑑定して出てきた表示に戸惑う。


 とりあえず指輪に、ジェントルさん? と語りかけてみた。


「これはこれはお呼び頂きありがとうゴブります」

「本当に出たーーーー!」

「え~~~~!」

「マジかよ!」


 そしてジェントルゴブリンに話を聞いたけど、どうやら指輪に魔核の力の一部が流れ込んだことで召喚という形で現世に出現できるようになったとか。


「ところで皆様。もしかしてダンジョンに挑んでいる間は、馬車はこのままで?」

「え? あぁ、とりあえず隠しておいて適当な幹に繋いでおいたんだけど」

「いけませんな。これでは魔物が現れたときに馬は逃げられませんぞ」


 う、言われてみれば確かに……そこまで気が回ってなかった。


「どうでしょうか? 宜しければ私に馬の管理と御者を任せては頂けませんか? こうみえて手綱を握るのには自信がありますゆえ」


 確かに、それは助かるかもしれない。これまではドヴァンがやってくれていたけど、基本は矢面に立つタイプだから、戦っている間に馬を任せられる人材は欲しかった。


「すごくいいと思います! ジェゴブにお願いしようよ!」

「ジェゴブ?」

「ジェントルなゴブリンだからジェゴブかなって。え~と、名前ないと不便かなと思って」

「さすがお嬢! 素晴らしいお考えだ! よしジェゴブ採用!」

「早いなおい」

「これはこれは、ありがたくご拝命仕ります。そしてこのような私に貴重な名を授与して頂けました麗しの姫君に感謝を。誠にありがとうゴブります。そして改めてジェゴブの事を宜しくお願い申し上げます」


 なんとも丁重な挨拶だ。何はともあれ、こうして頼りになる御者が一人加わったのだった。

ジェゴブはペット枠です。え?違う?そんな馬鹿な。ちなみに当初の予定ではゴブリンキングをボスにしてさっくり無双の予定が、何故かこうなりました(´・ω・`)

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