第12話 修行の成果
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「それでは、始めてください」
メイの開始の合図と共に、カルタは魔物との戦いを演じていく。
相手はデスグリズリー。彼の生まれ育った村近くの山では主として恐れられている魔物だ。
この期間でレベルは上がったが、それでも結局通常状態では勝つことは叶わなかった相手でもある。最初のうちは神装甲を行使しても中々苦労したものだ。
とはいえ、この十一日間の修行でカルタもレベルが上っている。
総合レベル40
戦闘レベル19
魔法レベル7
技能レベル14
スキル
紙装甲(神装甲)
共通神装技
・神行の間
神装甲一覧
□剣神ノ装甲
加護:剣神の加護
神装技
・剣神の教授・ブレイブハート
片手半剣専用
・ブレイブゲイザー・剣昇神武落
片手剣専用
ハリケーンエッジ
□知識神ノ装甲
加護:知識神の加護
神装技
・知識神の賢身・神鑑
□伝令神ノ装甲
加護:伝令神の加護
神装技
・神通信・念話・伝布鳩
□狩猟神ノ装甲
加護:狩猟神の加護
神装技
・狩猟神の訓練・気配察知・神知網
弓専用
・ウィツィロポチトリ・ウルアロウ・ケルヌンノス
これが現在のカルタのステータスだ。総合レベルは前回より10も上がっている。通常、レベルというものは上がれば上がるほどより上がりにくくなっていく。
特にレベル20の壁というものが存在し、多くの冒険者は総合レベル20にも達成する事無く冒険者としてのピークが過ぎ引退していくとされている。
そういう意味ではカルタの潜在力は破格なものだ。最初に修行を付けてくれたのが女神様とはいえ、その段階で総合レベル30を超えていたのだから。
しかも今回の神達の修行によって更に10伸ばしている。稽古をつけてきた剣神ヤマトも彼の成長が楽しみで仕方ないといった様子だ。
それは勿論他の神にしても同じであろう。
「ヌハハハハハッ! カルタよ、先ずはスキルに頼らず戦うのだ。我が良いと言うまでスキルは使うなよ?」
「ははっ、相変わらず厳しいですね」
「が、頑張ってカルタ!」
デスグリズリーの爪を避けつつ、師匠のヤマトの警告とヘアの応援を受ける。
とりあえずスキルは使わず戦い続けるカルタだが、やはり森の主は伊達ではない。
ステータス
総合レベル50
戦闘レベル30
魔法レベル0
技能レベル20
特徴
雄叫び、熊羆爪、必殺の一撃、頑丈な毛皮
スキル
熊百力
これがデスグリズリーのステータスである。爪による攻撃が主だが、熊羆爪などは爪が間合いの外にまで届く攻撃であり、必殺の一撃に関しては当たれば高確率で心臓が止まってしまうという恐ろしいものだ。
カルタはデスグリズリーの一挙手一投足を注意深く観察し続けながら、相手のこれらの攻撃を避け、魔法のウインドカッターや鉄の剣での一撃を叩き込んでいく。
だが、デスグリズリーの毛皮は頑丈だ。魔法への耐性もある程度あるようで中々決定打には繋がらず。
「グウォオオオオォオォオオオオオオ!」
しかもここで最悪な事に雄叫びがあがり、しかもデスグリズリーの目つきが変わった。
雄叫びによってカルタの身がすくみ、更にスキルの熊百力を使ったようだ。
これは熊百頭分にまで身体能力を強化する。この状態の攻撃を受ければ間違いなく死が待っている。
「よし! スキルを許可しよう! 折角だ片手剣で試すがいい!」
許可が出た為、カルタはすぐさま剣神ノ装甲を解放。
手持ちの剣が瞬時に片手剣状態の神の剣と入れ替わり、戦闘レベルも向上。総合レベル82にまで上昇した。
竦んでいた筈の体も自由が利くようになり、片手剣の軽さも幸いしてデスグリズリーの凶悪な一撃を避ける事に成功する。
「【ハリケーンエッジ】!」
片手剣の神装技がカウンターで炸裂。自身を激しく回転させながら、剣戟を叩き込んでいく。
巨体を中心にぐるりと一周するように切り裂いていく。デスグリズリーの胴体から円状に魔力の粒子が舞った。
だが、輪切りとまではいかない。片手剣は軽く片手半剣よりも素早い攻撃が可能だが、その分一発あたりの威力は落ちてしまう。
攻撃を決め、距離を取るカルタであったが、結果的にデスグリズリーの怒りを引き出してしまい、興奮した状態で突撃をかましてくる。
巨体の体当たりはそれだけでも脅威だ。だが怒りに任せた攻撃は対応しやすい。
カルタはスッと横に逸れ、突撃を避けつつ、デスグリズリーの背中に飛び乗った。
途端に熊が立ち上がり暴れだすが、神装甲のおかげでステータスが強化され振りほどかれることはない。
カルタはデスグリズリーの首に剣を突き立て続けた。
デスグリズリーは手強い相手だが、後ろを取りしがみ続けることさえ出来ればその爪も背中までは届かない。
尤も並大抵のレベルでは振りほどかれるのがおちだ。実際カルタも神装甲のスキルなしだと厳しいだろうし、何より鉄の剣では刃の方が先に参ってしまう。
しかし神装甲状態の刃は良く通る。デスグリズリーの暴れ方も段々と弱まっているのが判った。
更に数回、首に剣を差し込むと、力をなくしたデスグリズリーが前のめりに倒れていく。
前衛姿勢になることが多いデスグリズリーは倒れる時は前のめりに倒れやすい。
背中を取ってさえいれば有利というのはこの辺りも関係している。
「よっ」
カルタは完全に倒したと判断し軽く飛び跳ねその頭側に着地。
やりました、とヤマトを振り返るが――
「カルタ危ない!」
ヘアの悲鳴に近い警告。とっさに振り返るとまだ完全に死んではいなかったデスグリズリーの爪が下から迫っていた。
最後の力を振り絞っての一撃。かなりの大振りであり、直感だが必殺の一撃を使用したのだと予想が出来た。
だが、それが幸いした。必殺の一撃は高確率で相手の心臓を止めてしまう攻撃だが、動きが大振りになり、打ち終わりの隙も大きい。
既の所で躱したカルタは、再びハリケーンエッジを使用し、デスグリズリーを切り裂いた。
これが致命傷となり、デスグリズリーの体が粒子となって消えていく。
それを見てうっかりしたな、と己の油断を悔やむ。この場に出てくる敵はあくまでメイが水晶で再現し顕現したものだ。
倒されれば今のように粒子になって消える。つまりそれがなければまだ息があるということだ。
「クカカカカッ、やれやれヘアに救われたな。だが、油断は大敵だぞ」
「は、はい。肝に銘じておきます」
この神行の間は死ぬことのない空間だ。だから例え今のデスグリズリーの攻撃でやられていたとしても死は免れる。
ただしダメージはしっかりと残ってしまうため、回復に時間は掛かってしまう。その分、修行できる時間は減るので死なないに越したことはないしなにより猛烈に痛い。
死んでも大丈夫などと軽々しく考えられるようなぬるい仕様ではないのである。
「次はヘア様ですね」
「は、はい! がんばります!」
ヘアが相手するのはアルマーモ、スライム、ラットマン、ハングリーウルフの四種だ。
どれもカルタが育った村付近で現れる魔物であり、レベルは決して高くない。唯一ハングリーウルフだけが総合レベル10に達している程度だが、代わりに数は多めにしてある。
現在のヘアのステータスだが。
ステータス
総合レベル15
戦闘レベル5
魔法レベル0
技能レベル10
スキル
紙使い(髪使い)
流石にカルタよりは劣るが、これまで戦闘すらまともにしたことがなかった少女である。
出会った当初は全てが0だったことを考えればかなりの成長だ。
ヘアはステータスでは特に技能レベルが高い。現段階で10あるがこのおかげでやれることも増えた。
「ハッ!」
語気を強め、ヘアは黄金の髪を魔物の集団に向けた。無数の髪の毛が針のように変化し、近付こうとしてくる魔物の四肢に突き刺さっていく。
これにより魔物たちの動きが鈍った。ヘアニードルとも名付けられたこの技は、ダメージこそそこまで大きくないが牽制としては役立つ。
そしてここで足を止めてからが本番でもあった。
一旦は動き止めた魔物たちであったが、そのうちのハングリーウルフが二匹、ヘアとの距離を詰めようとする。
『ギャンッ!』
だが狼の魔物はその場で激しく転倒した。勢い余って転んだというわけではない。
ヘアトラップ――ヘアが髪を周囲に一本ずつ伸ばしておき、近づいてきたところで狩人が使うスネアのように締め付け、バランスを崩させる。
「【ヘアスピア】!」
ヘアの黄金の髪の毛が次々束ねられ、そして無数の槍へと変化していく。
それを身動きの取れなくなったハングリーウルフ向けて突き刺した。
これで十分だった。ハングリーウルフの肉体は光の粒子となって消え失せる。
その後、今度は髪の毛を鎌状に変化させるヘアシックルによって次々と残った魔物の命を刈り取り、ヘア一人で魔物の群れをあっさりと片付けてしまった。
「流石ですヘア様」
「そんな、メイさんの教え方が上手だったからですよ。本当、私がこんなに戦えるなんて自分でも驚きです」
「だけど、やっぱりヘアのスキルは強いな。特に集団戦で力を発揮できるのが凄い」
カルタは素直に感心する。もちろん彼も集団相手に立ち回れないわけではないが、神装甲なしではヘアほど有利には立ち回れない。
一方ヘアは髪の毛を自在に操れるというのが強みとなる。おまけに髪の長さも今であれば十メートルぐらいまでなら伸ばすことが可能だ。
その範囲内であれば鎌や槍に変化させての攻撃がかなり生きてくるし、罠だってある。同時にかなりの本数の髪の毛を操れるようになったのも大きい。
正直、本当はあの伯母に力を見せつけられれば十分ぐらいの感覚だったのだが、可能性を知ってつい戦闘方法まで教えさせてしまった。
勿論最初はヘアが自衛手段としてこのスキルを利用した戦い方も知っておきたいと口にしたのも要因として大きいわけだが。
とは言え、冷静に考えればヘアはカルタと違い、別に冒険者になりたいわけじゃないだろう。勿論出来ることが増えることに越したことはないが、少々勿体なくもあるが彼女がこれから平和な日常を望むならそれも仕方のないことであるし、ここまで来たならそれであっても全力で応援するつもりだ。
「さぁ、これで今日の修行も終わり。最後にメイの手料理を堪能し、ゆっくりと休んでこれからに備えよう」
「はい!」
「承知いたしました。では腕によりをかけてお作りいたします」
「カルタよ、我はここで一旦消えるが、外に出ても鍛錬は怠らぬようにな。次の再会を楽しみにしておるぞヌハハハハハハハハッ!」
こうしてふたりはその日、これまで以上に美味しいメイの手料理に舌鼓を打ちつつ、ベッドでゆっくりと睡眠を取り――そして時間ギリギリで神行の間を後にするのだった。
いつもご感想頂きありがとうございます。
ご感想にありました血抜きに関しては魔物は血液が通って無く魔力が通っているので血抜きは必要ないという捉え方で大丈夫です(^^ゞ