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プロローグ
麗らかな春、花が満開になる季節。
少年少女は新しい春に希望を抱き、明るい未来に夢を見る。
そんな17年目の春。俺は、相も変わらず人生に絶望していた。
プロローグ
裕福な家に生まれ、恵まれた容姿、優秀な頭脳、高い身体能力エトセトラ。
一見誰もが羨むそのステータス。
けれど、それには色々な「おもり」も一緒についてくるのだ。
高すぎる親の期待、厳しすぎる英才教育、疎み距離を置く同級生エトセトラエトセトラエトセトラ。
幼少期からつきまとうそれらに俺の精神は蝕まれていき、それは俺に人生を絶望させるに十分なものとなっていた。
けれど、それでも俺をこうして生かしているのは、「本」があったからで。
本を、物語を読んでいる間だけは、そうしたすべてのしがらみを忘れられた。
「本の世界に入れるとしたら、どうする?」
冷静に考えれば、そんなこと科学的にありえない。
けれど、なぜかその強いまなざしとか、自信に満ちたその表情だとかに、なぜだかその言葉はストンと胸に落ちてきて。
つい、その手を取った。