3.教室に入るのって緊張するよね。
「学園の説明はこれで終わりだよ、後のことは担任に任せてあるから2人とも自分のクラスに向かってくれ」
リリエル先生に一礼し校長室を後にする、どうやらこの娘も同じクラスらしいので一緒に教室を向かうことにしたのだが
「…」
流石のコミュ力である、会話が全くない。
隣を歩く黒髪の娘も先程から口をぱくぱくさせているが喋りかけてくる気配はない。
黒髪の娘やあの娘、では呼びづらいので名前でも聞いてみよう。
あれっ、でも名前ってどうやって聞き出せばいいんだ?でも、女と話すわけじゃねぇ大丈夫だ。
そこらへんのリア充のように自然と聞き出せば良いよな?自然に…
私の名前はフィーネ、あなたは?よし、これで完ぺきだわ。
私の名前は、フィーネ。私の名前は…よし深呼吸して落ち着いていこう!
「あたゃしの名前はフィーネ、あなたは?」
やっちまったよおい、あなたは?じゃねぇよ、心做しかなんか不思議なもん見たって顔してる気がするし…。
『プフ…』
案内人てめぇこの野郎、ただのプログラムのくせに笑いやがってちくしょう。
俺が泣きそうになっていると黒髪の娘が話しかけてきた。
「ふふ、あ、すいません、私はうながみっていいます、よろしくお願いします」
うながみさんか、なんかいい名前だな。
「うながみっていうとワダツミとかのこと?」
俺が何気なく発した言葉に、うながみさんは異常に反応した。
「わだつみさんのこと知ってますか!?私、わだつみさんのことすっごく好きで!それでそのわだつみさんは日本神話でー」
おぉう、これはさすがに俺でも一瞬引きかけちゃったぞ、わだつみが好きなヤツとかいたのかよ。
隣ではうながみさんが一生懸命わだつみさんについて語っているが、申し訳ないが興味が無いので適当に相槌をうっておく。
そうこうしてるうちに教室の前についてしまった。
教室に入るのはなかなか度胸が必要だと思う。
教室に入った瞬間一斉に皆の目がこちらを向く、それが心臓にわるくて仕方ない。
初めて入る教室だと尚更である。
ドアの前で立ち止まっているのも気味が悪いので意を決してドアに手をかけ一気に開く。
案の定みんなの目線がこちらへ向けられる。
さっきまで聞いてもいないわだつみのことをペラペラとしゃべり散らしていたうながみさんも口をぱくぱくさせおどおどしている。
落ち着け、落ち着くんだ俺。
こんな時こそリア充を思い出せ…。
自然に「おはよっ」とか言っておけばいいだろう。
言っておけばいいのだろうがリア充になったことのない俺に的確に対処できるはずもなく「おはようございましゅ」と、ありきたりな噛み方をして赤面しながら自分の机へと向かった。
後ろからついてきたうながみさんも「お、おはようごじゃりましゅ!」と盛大に噛み倒したことは言うまでもない。
俺とうながみさんが盛大に噛み倒し席についた頃、担任と思われる先生が入ってきた。
艶やかな金髪の髪をなびかせ整った顔を持ち、出る所はでて引っ込む所は引っ込んでる、まさに男が追い求める究極の美がそこにあっー
「今日からお前らの担任になった葛城 茜だ、夜露死苦」
前言撤回ですわ。
最後のよろしくなんて完全によろしくするつもりなんてないしよろしくないことをされることは明確であった。
みんなもそのことを感じ取ってかざわついている。
というかさっき見回した時にはパニクっていてちゃんと見れなかったが見渡す限り、女女女である。
あっあの娘可愛いなぁ。
そんなことを考えてる内に周りも静かになっていく。
「はい、皆が静かになるまで5分かかりました」
みんなが口を開けぽかんとしている、夜露死苦のあとのギャップに驚かさせたのだろうか。
斯く言う俺もその1人である。
みるみるうちに茜先生は顔を真っ赤にしてうつむいてモジモジし始めた。
夜露死苦の時の勢いはどうしたんだ茜先生、いや茜ちゃん!
俺の中で茜先生から茜ちゃんに昇格した瞬間であった。
コホンと一つ咳払いをしてみんなの注目を集める。
「早速だが君たちには適性試験を受けてもらう、適性試験と言っても、難しいものではない。簡単に言うと皆のステータスというものを図る、というわけだ。
各々が自らの属性を把握し、それに見合った授業を受けさせる。」
なるほど、属性か、なんだかゲームっぽくなってきた感じだ、自分の属性か、なんか楽しみである。
「適性試験を行う教室の準備にまだ時間がかかるからその間に自己紹介でもしておいてくれたまえ。」
準備の為か茜ちゃんは教室を出ていく。教室が再び喧騒に包まれる。
「みんな静かにしなさい、茜ちゃんも自己紹介しとけっていってたわけですし、自己紹介を始めた方がいいのでは?」
おいおい、なんだあの意識高い系金髪縦髪ロール。いきなりしきりだしたけど誰だ?