表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白き子  作者: 藍上央理
第三章 破邪の杖
32/50

(13)

「それ、アタシ気に入ってるの。返してちょうだい」

 かわいらしい両手をのばして、ミルトはせがむ。アファルトルは、そのかわいいおつむに指輪をのせる。そして、そろりとミルトを地上におろした。

 小さな兄妹はヒシと抱き合うと、アスランとアファルトルを交互に眺めた。

「ボクたちも連れてって欲しいんだ」

 タスクが口火を切った。バツの悪そうな顔をし、「勝手についてきたのは悪かったけどさっ」

「長老には伝えたのか?」

「ううん、家出みたいなもんさ」

「アタシたちね、ラ・ルマリアンがどんなとこかみてみたいの。だってアスランはなんでも出来るんでしょ?」

 ミルトは恐る恐るアスランを見上げて言った。

「帰るんだ」アスランはむっつりとして言う。

「もう帰れないよ」

 タスクは口を尖らせて、ぼやく。

「帰れないもんっ」

 ミルトはそれを見て、真似をする。

「連れて行ってはどうか?」

 アファルトルは、兄妹の可愛らしげな様子に見とれながらつぶやく。

「無責任なことを言うなっ!」

 アスランは眉間にしわを寄せて、一喝する。

「ボクたち、役に立つさ。なんでもできるよ」

「この人、困ってるんでしょ? アタシたち助けてあげてもいいんだよ」

 アスランは閉口した体で顔を片手で覆った。

「うるさいのはゴメンだからな」

 兄妹の顔がパッと明るくなる。

「うんッ! ボク静かにしてるさ」

「アタシもお口閉じてるもん」

「お前たち、空腹ではないか? これはお口にあうかな?」

 アファルトルは、にっこりと兄妹の前にぶどうをおいた。ミルトはわぁッとばかりにぶどうに無心にむしゃぶりつく。タスクはアファルトルを値踏みするようにながめ、「あんた、いいやつだな」というと、ミルトを小突きながら、一粒両手に抱え、食いついた。

 ラ・ルーの森もあと少しで抜けることができるであろう。

 アファルトルは、不本意な道程みちのりだが、仲間を得た。

 アスランは厄介な荷物を三つも背負い込む羽目になった。

 タスクとミルトの仔ネズミ兄妹はこれから起こる運命の大事に、まだその小さな心臓を戦かせていない。

 彼らの進む運命の行く先を、まだ誰も知らない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ