そろそろ
三人登場人物を作ってそれぞれ何話か書いたのでじゃあ三人を絡ませて色々やってみようっていう実験というか練習のために書こうと思ったら結構忙しかったから取り敢えずここまで投稿しておこうという感じ。
平穏な日常というか何もない日など実は無いし、刻一刻と変化していることに皆、実は気づいている。ただ、その変化が地味だったり、思うようなものでなかったりしているだけだ。気づいているけれどそれを認めたく無いのだ。だから、逆に自らの毎日は劇的だと思い込むのだ。そして僕らは通行人Cと大して変わらない生活を送っている。対して物語の主人公は決まってこういうのだ。
「あぁ、面白いこと起きないかな」
僕はいつもの様に一人、食堂で昼食を食べていた。今日はいつも食べている350円のチキン南蛮定食ではなく、280円のカツ丼だが特に心境に変化はない。いつもの火曜の昼と何ら変わりない。授業終わりの学生が食券機前で長蛇の列を作っている。食堂の椅子に空きが無いのか居場所がないのかどちらなのかは分からないがいそいそとお昼を持って空き教室へ向かう学生の数も少なく無い。食堂で昼食をとっているのは活発そうな男女の集団、
事務部の職員、そしてそれらの集団の隙間を埋めるように僕のような独り者が座っている。僕は食事中に喋るのが得意じゃない。賑やかな食事は嫌いではない。けれど、そこで自分が喋るかというのはまた別の話だ。僕は一人、カツ丼を黙々と食べる。
「お、今日はチキン南蛮じゃねえのか」
と、話しかけながら自然に向かいの席に座ってきたのはどう見てもヤンキーの飯田くんだ。目立つ彼の出で立ちと僕の地味な印象のギャップはさぞ第三者からは滑稽に映るだろう。僕はカツ丼を食べる速度を速める。僕がなんの反応も示さないと飯田くんは困ったような笑いを浮かべた。
「相田よぉ、お前もうちっと愛想良くしないと大学生活四年間の中で一緒に飯食う女も出来ずに終わるぞ?」
「飯田くん、それはお節介な母親のセリフだよ? それに僕が愛想良く振るわないのは君と仲がいいと周囲に思われたくないだけだよ」
僕は箸を置いて本格的に目の前の目立つ男を追い払うことにした。
「お、なかなか連れない事言うのな。まぁ、聞けって。さっきオレが言ったようにお前このままじゃ女一人出来ずに大学生活を終えちまう。それを黙って見過ごしては俺の名が廃る」
中学、高校だったらなんとか流していただろう。しかし、大学生にもなると今まで彼女が出来たことが無いというのはかなりのコンプレックスになるのだ。
「それで? 僕に何しろっていうの」
僕は鬱陶しいけど一応聞いてやるよ、というニュアンスを出しながら聴いた。本当はめちゃくちゃ興味あったけれども。
「おう、まぁ聞け。まず、お前の好みを把握しなくちゃいけない。選り好みしている場合ではないが一応は聞いとかないとな。何だかんだ言って好き嫌いはあるからな。ちなみに俺はムッチリが好きだ」
飯田くんの好みには一切興味は無いし、それを僕に教えたところで飯田くんに紹介できる女の子の知り合いは一人もいないから全くもって無意味だ。しかし、飯田くんの言うとおり何だかんだ言って僕にも好みってもんがある。もうこの際、協力してくれるというのなら飯田くんでも構わない全力で胸を借りよう。
「じゃあ、俺が選択肢を挙げるからどちらがタイプか答えてくれ。じゃあ早速行くぞ。美人系orかわいい系だったら?」
「断然、美人系だね」
これは即答。
「では、スレンダーとふくよかではどっちだ」
「もちろん、スレンダーで」
これもなんの迷いもなく答えた。
「身長はどうだ?自分より低いほうがいいか高いほうがいいか」
これは少し悩んだ。正直あまりこだわりがないのだ。しかし、どちらか答えた方が良いだろう。僕は限りなく無難なラインを答えることにした。
「僕と同じくらいか少し高い方がいいかな」
飯田くんは、フムと一息入れると質問を続けた。
「活発な娘がいいか、それともおとなしい娘がいいか」
これは僕の中でも度々問題になっていることだ。僕のようにあまり活発ではないのと付き合うのは活発な娘にとってつまらないのではないだろうか。それと、おとなしい娘でも連れだしてほしいという気持ちがあったりするのだろうか。
「そうだね、やっぱり自分と同じでおとなしい娘がいいかな。波長が同じ方が無理しなくて良さそうだし」
我ながらここまで無難な返答だ。ただ理想が高いと言われてしまえばぐうの音もでないけれど。
「よし、相田。最後の質問だ。告白してくる女と告白に応じてくれる女どっちがいい」
これは少し変な質問だな、と思った。どちらも僕と付き合ってくれそうな女の子と言えそうだ。違うのは僕が好意を受け取る側か伝える側かの違いだ。一つ前のおとなしいか活発かの質問と被っているような気もしないが僕はなんとなく答えた。
「うん、どちらかと言えば告白を受けてくれる娘がいいかな」
飯田くんは非常に難しい顔をして少しの間唸っていた。結論が出たのか眉間の皺を伸ばして僕の目を見た。
「お前の好みはよく分かった。俺の知り合いの女の中でお前の条件に合う奴が一人いる。しかし、お前がそいつと付き合えるかはお前次第だ。それと、難易度は高い部類に入ることは承知しておいてくれ」
飯田くんの知り合いなのが若干というかかなり不安だがそれでも「おまえ夢見てんじゃねえよ、そんな女いたら俺が貰ってるわ」と言われなかっただけマシだ。
「明日の放課後空けとけ。会わせてやるから」
とだけ言うと、飯田くんはどこかへ行ってしまった。いや、いきなり会うとかそりゃちょっとハードル高いでしょうよ。
僕は飯田くんが居ないにも関わらず心のうちで突っ込んでいるのだった。
飯田くんが引っ張ってくれなきゃ何もせんのか相田ぁ!! はい、僕ですね。などと自分にツッコミを入れつつ。
朝倉さんが見たい人ごめんね。次は出てくるから!! どんなふうに出てくるかはまぁね!! 分かっちゃうよね!! まぁ、待ってやってくださいな。
ではでは