二人の死
ピコピコ……!
暗い部屋の中に光る、1つの画面に向き合う男がいる。
それが俺。佐久間 鈴蘭17歳。
俺は今、ゲームにはまっている。最近始めたばかりだが、このゲームは当たりだ。中々いける。
王道のRPG。主人公が勇者となり、魔王を倒すために魔王城を目指すという内容だ。
が、自由度が高く、ギルドもあり、パーティを自由に組んで、クエストを受けることもできる。やりこみ度もめちゃくちゃあり、最大レベルは1から9999まで。ギルドランクもC~SSSまで。数多くのジョブもある。かなりボリュームのあるゲームだ。俺はそこが気に入った。
「もう3時半か…。明日もかったるいけど学校だし、そろそろ寝るかな。」
俺は一人言を呟く。悲しい奴だって?……ほっとけ…、ほっとけ。
「グルンダム王宮前でセーブして、と。よし。」
ゲームの電源を落とし、ごろんと横になる。
「うーし、おやすみ~。」
返事など返ってこない一人だけの汚い部屋に独り言を漏らし、俺は寝た。
――――――――――――――――――――
「いってきー。」
母親に言って、家をでる。
俺は一応、高校に通っている。歩いて20分かからないくらいの近場の市立高校だ。学校までの道のりに同じ制服を来た奴等がチラホラいる。その中の一人が俺を見つけて、こっちにくる。
「よっ?スズ!」
コイツは鍋島 大斗。同学年で唯一、絡みがある奴だ。身長は184。顔も整っていて、女子からの人気も高い。正義感も強くて、俺とは対みたいな奴だ。
「おー、タイト。おは」
俺も軽く挨拶する。俺とタイトは並んで、学校に着くまで一緒に歩いた。
キーンコーンカーンコーンーー!
チャイムが学校に鳴り響く。学校の終わりの合図だ。部活をやってる奴は今から部活。俺?当然なーんもやってないですよ。帰ってゲームやろーっと。
「おーい、スズ!一緒に帰ろーぜ!」
そんな事を考えてる途中にタイトの声が耳に通る。
「あ?いーけど、お前部活は?サッカーやんねーの?」
「あぁ。今日は顧問が居なくて休みなんだ!だから帰ろーぜ!」
なんで人気者のコイツはわざわざ俺なんかに絡んでくるんだ……?まぁ、悪い気はしねーし…いーか。
「そか。それならいーけど。」
俺とタイトは学校から家までの道を二人で歩いている。
「なぁー、スズ。お前彼女とかいんの?」
お前馬鹿か?俺に聞くか?それとも嫌がらせか?そーか、嫌がらせか。
「っ…。フツーにいねーよ。」
「そーか。いねーのかー。」
タイトはふーん。とか独り言を漏らしている。
そいや、リアルな女と会話したのって何年前だろ?確か―中1の頃、だっけか?だから四年前か。ふっ。
「助けてください!!」
「へ?」
あ、今女と会話した。更新だー。
「変な人に追われて!助けてください!」
俺の三次元女会話してない期間記録を塗り替えたその女は走ってきたんだろーか。息をきらしてる。顔をみると、若い。20代か?中々の美人さんじゃねーか。
そんな事考えてて、返事が遅れた俺の代わりに隣のタイトが答える。
「変な人って?!大丈夫ですか?」
「あっ、来ました!あの人達です!」
走ってくる人影が二つ……。うわ、いかつっ。コイツら。見るからにチンピラ風の金髪男と、オールバックの二人だ。
「逃げんなよねぇちゃん……!あ?なんだテメーら?」
チンピラの金髪が俺とタイトを睨み付けて言う。
「ひっ、助けてください、お願いします…!」
美人お姉さんはタイトの後ろにすっかり隠れてしまっている。
「なんなんですか?あんたら。嫌がってるじゃないですか!」
さすが正義感あるな~、コイツは。俺はただ、チンピラとタイトのやり取りを見てるだけだ。
「にぃちゃんよ~、首突っ込んでくんなや?あんま調子のってっと、その突っ込んできた首、落としちまうぞ?」
チンピラのオールバックがタイトを脅す。
「脅しても無駄ですよ。さっ、今のうちに逃げてください。ここは任せて大丈夫ですから!」
美人お姉さんに笑顔を作るほどの余裕のタイトだ。
「で、でも……!」
「いいから逃げてください」
「すいません、ありがとうございます!」
逃げていく美人お姉さん。
「待てやコラァ!」
追おうとするチンピラ二人。
「あんたら、何が目的かは知らないけど、女性に対して男二人がかりでたかるなんて、卑怯だし、クソダサいぞ」
それを止めるタイト。
「あーあ……。」
それをただ、隣でみてる俺。
「テメーよぉ、なんて事してくれたんだコラァ!」
金髪がタイトに吠える。
「正しい事をしただけだろ。」
「あんまなめてっといてぇ目みんぞコラァ!」
金髪がタイトに殴りかかる。
が、それにあわせてタイトはカウンターで顔面にパンチを決めた。
「やってくれたじゃねぇかコラァ……!」
金髪、語尾にコラァが着く率高いな~。とか考えてたら、脇腹に激痛が!!
「え"っ……?」
見るとオールバックが俺の脇腹にナイフを……刺していた。
「テメーも、邪魔なんだよ。」
オールバックは言いながら、ナイフをゆっくりと抜く。そこから血が溢れ出す。いてぇ。なんでこんな目に…。
「?!スズ?!おい!」
倒れて血を流す俺に気付いたタイトが俺に走ってくる。
「おい!大丈夫か?!スズ!」
「……う…しろ…!」
俺の目には映っていた。
ナイフをタイトに刺そうとしている金髪が。
「余所見はいただけねぇな…コラァ!」
ブスッ!!
タイトの背中にナイフが刺さる。
「っ!?…く…そ…!」
血を流しながらパタリと倒れるタイト。
「ハハッ。ザマァねーや!コイツら!」
「死んでろ!くそやろーが!おい!早いとこ行こーぜ!」
僅かに聞こえるチンピラ二人の声。目に映るのはタイトと血だまり。血ってこんな出るもんなんか…。死ぬんだな俺。さみーや。はぁ、つまんねー人生だったなー。あーあ、思い残す事と言えばね、あのゲーム、クリア…したかった……な……ぁ……。
意識が、消える。
―――――――――――――――――。
そこにあるはずの男子高校生二人の遺体は、この世界からなくなっていた………。
―――――――――!
――――――――――――ズ!
―――――――――――――スズ!
え?
「スズ!起きろ!」
「は?」
生きてる?あれ?確か……死んだ…よな俺?
でも息をしてるし、は?混乱してきたも
「スズ!周りを見てみろ!なんだここ?!」
タイトは周りをキョロキョロ見ながら、興奮しているのか、声を張り上げて言っている。
言われた通りに周りを見るとー。
そこは………………………。
「ゲームの中、じゃん!?」
思わず大声になった、俺だった――。