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第四話

 俺はその日、一日中ファズと話したりして過ごした。もうあたりは暗くなってきていた。

 「ねぇユウト、昨日ね、新しい寝床見つけたんだけどどうかな。今度は一緒に寝れるくらいの広さがあるんだ。」

 「へぇ、それはいいね。連れて行ってもらえる?」

 「もちろん!」

 ファズは嬉しそうに笑った。かわいいなぁ本当に。



 しばらくして、小さな洞穴に着いた。小さいといっても、俺とファズが入るには十分な大きさだ。

 「凄い!良く見つけたね。」

 「でしょ。いつもユウトが寝ている間に探してたんだ。」

 ほぉ、だから俺が起きた時に近くにいなかったのか、納得。

 「ありがとうファズ。」

 手でなでてやりたいところだが、鉤爪で傷つけそうだったから尻尾でなでてやった。

 「喜んでもらえて僕も嬉しいよ。」

 


 こうして、俺の異世界ライフ一日目は幕を閉じた・・・。




 翌朝、俺はものすごく早く目が覚めた。山の端がほんの少しだけ明るくなっている。

 「俺、本当に異世界に来たのか・・・。」

 寝たら現実に戻っているだろうなどと少し期待をしていたが、残念ながらそうではないらしい。

 それに、残念なことがもう一つある。昨日の夜なんでもいいから思い出そうとしたのだが、何も思い出せない。失っていたのは、最近の記憶だけではなかったようだ。しかし、ただ一つだけ思い出せることがある、それは友達や家族、先生を始め今まで出会った人間だ。どんな関わりを持っていたかは思い出せない。まるで思い出だけが抜き取られた感じだ。だから何も切なくなることはない・・・多分。ただ・・・その中のケイゴという自分と同じくらいの人物に、なにかとても心残りなことがあるような気がしてならない。まぁ、その心残りが何なのか分からないんだけどね。 



 しばらくして、ファズが目を覚ました。

 「ユウトおはよ~。早起きだね。」

 「おはようファズ。そっちもなかなか起きだけどね。」

 「そぉかな?」

 目を丸くして軽く首をかしげている。


 そのあとファズに案内されて小さな池に来た。寝床からあまり離れていないし、とても水が澄んでいてとてもうまそうだ。そういえば昨日俺なにも食べてないや、大丈夫なのかな。ファズに尋ねてみると、

「ユウトは不思議なくらい何も食べてないじゃない、たまに海で魚を捕って食べるぐらいで。僕が心配しちゃうくらい。」だそうだ。なんて俺小食なんだ。って言うより、どうやって生きてるんだ?まあいいや、腹減ってから考えよ。

 俺たちはそこで水を飲んだあと、また俺はファズに尋ねた。

 「ところでファズは何食べてるの?」

 ファズはオオカミだから肉食だろうとてっきり思っていたが、この島でファズが何かを食べる姿は一度も見たことがなかった。

 「僕?僕は草とかユウトが捕ってきた魚を食べてるよ?」

 ファズはいつも俺に教えるように答えてくれる。でも、草?魚はまぁ理解できる許容範囲として・・・なぜ肉食獣のオオカミが草・・・?それも尋ねると,

 「だって、僕の空腹を満たせるほどの大きさの生物なんてほとんどこの島にはいないから、草食になることにしたんだ。」

 ものすごく簡単げに言っているが肉食獣が草食になるなんて・・・並々ならぬ努力があったんだろう。うん。よく頑張った!

 「めちゃくちゃ頑張ったんだね。」

 「・・・でも、ユウトがたまに魚を捕ってきてくれるから苦労はしなかったよ。ここに来て初めて魚を食べて、こんなにおいしいものだとは知らなかったって思った。」

 ファズは嬉しそうにほほ笑み尻尾を振っている。

 「今から捕ってきてあげようか?」

 「え!?いいの~?ありがとう!」

 先ほどよりも、もっと嬉しそうにファズがはしゃいでいる。なんだか幸せだな。




 そのあと、俺はファズのために魚を捕ってきた。最初は自信など一つもなかったが、本能や身体能力のおかげか随分楽に狩りが出来た。つかんだり口でくわえたりとしているうちに、10匹以上の魚を捕まえることに成功した。驚いたことに俺はその間水中にもぐりっぱなしで、一度も息継ぎをしないでいた。なんという肺活量だ。

 結局未だ食欲のわかない俺はファズに魚を全部あげて、ファズがそれを食べている間空を飛んでみようと思った。実は翼があるのを知っているくせにまだ飛んでないのです。

 さすがに飛ぶのは今までみたいに簡単には行かないでしょと思っていたら、これがまた簡単に飛べました・・・。やばい、チート過ぎる。


 

 そんな風に思っていた俺は、上空まで行ってとんでもないものを見てしまいました・・・。

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