第十九話
・・・俺は地上で目を覚ました。もう島についたのか?それにしては早すぎる気がする。
朝焼けの空の下顔を上げると、目の前には俺の目をのぞきこむ竜の姿が・・・アルフとは別の竜だ。・・・竜?なぜ!?
俺が知っているホースドラゴンよりも一回り大きなそいつは、見とれるほど美しい純青の鱗を持っていて、翼の大きさから尾の長さ、首の長さ、何から何までバランスのとれたやつだった。まさにドラゴン・・・。
いや、見とれてる場合じゃない!逃げなきゃ。前にホースドラゴンのようにおとなしくて人になつく竜はほとんどいないって聞いたし、襲われる前に逃げんだ!俺!
とは言ったものの足がすくんで動かない、でもなんとか立ち上がって走り出した。
どうやらここは砂浜のようだ。俺は森のある方に向かって逃げた。迷子になるとかそんなこと今はどうでもいい!とにかく今は逃げることに専念しろ!
森に向かって走り出したケイゴを目で追いながら思った。話しかけるタイミングをミスった!っていうか話しかける前に逃げられてしまった・・・。おいおい何してるんだ俺。
昨夜この島に着いて早速ファズと過ごした洞穴まで行ったけど、ケイゴに真実を伝えるときは二人きりで話したかったから、ケイゴだけ砂浜に連れてきた。でも、逃げられてちゃ意味がない。でも今追いかけたらケイゴの恐怖心を煽る気がして追いかけるのはやめた。
う~ん、念話で話しかけてみようか、多分ケイゴは話したいとかそういう気持ちがないから一方通行になるけど・・・。
「ケイゴ、逃げないで戻って来てくれる?」
思った通り反応はないが、恐らくこの声(念)は届いているはずだ。
出来ればアルフさんが目を覚ます前にケイゴと話をすませておきたいんだが・・・。早く俺の声だと気づいて戻ってきてくれ。
しばらくすると、ケイゴが木々の間から顔を覗かせているのが分かった。どうやら俺の呼びかけに気づいてくれたようだが、やはりまだ半信半疑のようだ。
「俺だよ、ユウトだ。」
そう言って人型に変身した。ケイゴは、目の前で起こっていることを信じられないと言った顔で見ている。
「こんなこと・・・あり得ない。」
ケイゴの声が聞こえてきた。昨日までは仲良しだったのに・・・今は他人と接するような口調だ。
「その姿は俺の記憶の中にいる人間の真似をしてるんじゃないのか?」
かなり俺のことを疑っているようだ。どうすれば信じてもらえるだろう・・・。俺だけが知っているものでは意味がない、かといってケイゴも俺も良く知っていることをしても意味がない。ケイゴが断片的に知っていて俺がよく知っていること・・・。
そうだ!
「俺が作った歌はどう?ケイゴに聴いてもらったことは1,2回しかないから、なんとなくしか覚えてないでしょ?確実に歌うことが出来たら俺をユウトだって認めてくれる?」
ケイゴはゆっくりとうなずいた。
俺の前の世界での趣味はギターだ。そしてたまに自分で歌を作って、ネットにあげたものをケイゴに聴いてもらったりもした。これ以上自分を自分だと証明できるものはない。
歌い終わるまで、ケイゴは黙って聴いていてくれた。俺をユウトだと理解してくれただろうか・・・。
ケイゴがゆっくりと近づいてきて、こう言った。
「さっきは変なこと言ってゴメン。俺自信も前の世界にいたころと変わってしまってるのに、ユウトも変わったところがないなんてこと・・・ないよな。」
ケイゴは顔をうつむけて言った。
「いいよ、ケイゴが俺だって認めてくれただけでじゅうぶん。こうなることは覚悟してたし。それより、俺の方こそ黙っててごめん。」
二人で謝りあって、しんみりしたムードになってしまった。なんだかばかばかしくなって、二人で声をあげて笑った。
その後なぜこんなに早く島に着いたのかケイゴに説明しようとしたが、止められた。「無事に着いたんだから教えてくれなくて大丈夫。」だそうです。俺が説明下手だからか?そうなのか?まぁ、説明することは苦手分野なんでね。正直ホッとしたというかなんというか・・・。
さあ、次はアルフさんに伝える番だ。
「なあユウト、ユウトのその姿見たらアルフ逃げ出しちゃうんじゃない?」
洞穴に戻る道を歩いている途中、竜体に戻った俺の背中に乗っているケイゴが話しかけてきた。
「あの竜は俺を見て逃げてしまうほど怖がりじゃないよ。」
アルフさんが恐怖で逃げて行ってしまう姿なんて想像がつかない。
「なんで分かるの?」
「アルフさんとよく話をするから。」
「あ、やっぱり話せるんだ。セシルさんが、ユウトはアルフとしゃべってるんじゃないかって言ってた。」
うっ・・・いつ俺が話していると思われるような行為をしたんだろう。




