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第十五話~落日に叫ぶ・前篇~

 領海に入る前日に予備要員のドラゴン騎乗訓練がされることになった。もちろんケイゴは参加するのだが・・・ってなんで俺も!?

 

 ことの発端はケイゴの所属する第10小隊の隊長セシルさんの一言からだった。

 「はじめましてユウト君。今朝はうちのケイゴに騎乗訓練をさせるんだけど、君もどう?」

 自分以外のドラゴンにも興味ありまくりの俺は、二つ返事で了解してしまった。

 「うふふふふ。」

 なんだか怖い笑みを残してセシルさんは訓練の準備のために去って行った。


 セシルさんは女性だ、俺がこの世界に来て初めて会う女性となる。セシルさんは素敵な女性だ、簡素な格好をして赤くて長い髪を海上の強い風になびかせて歩く姿がとても。ドラゴン脳になってない頃の俺だったら一目ぼれパターンだろ!なんて思いつつ。実際に彼女は男からの評判が高い・・・これには乗船している女性が少ないせいもあるのだが。


 セシルさんは竜騎兵としての実力が認められて「フリーダム」に乗船することを認められたそうだ。しかも、第10小隊の隊長に。どの小隊の隊長もエリートで、凄い実力の持ち主だという。たとえ第10小隊のように予備要員の集まりでも、隊長職だけはしっかりした人がすることが決められているとセシルさんが教えてくれた。




 セシルさんの不敵な笑みが気になりつつも、ケイゴと竜舎へ急いだ。

 

 「ふふ、来た来た。」

 またもセシルさんは不敵な笑みを浮かべる・・・。竜舎には俺とケイゴとセシルさんしかいない。

 ケイゴもそれを不思議に思っていたのだろう。

 「あら?他には誰も来ないのですか?」

 「あら、知らなかったの?他の部隊の補欠ちゃんは訓練終えちゃってるわよ?」

 第10番目の部隊だからこんなにも遅くなっちゃったんですね。

 「さぁ、どっちからしごいて差し上げましょうか?」

 うっ・・・軽い爆弾発言と不敵な笑みいったいどんな訓練になるんだ?

 「け・・・ケイゴ、お前は正規の補欠なんだから先に訓練させてもらったらどうだ?」

 「い・・・いや、ユウトが先に騎乗を楽しんでこいよ。」

 「ユウト君の言うことが正しいわね。ケイゴ、あなたが先よ。」

 セシルさんは楽しそうに言った。



 まずは竜の装備の説明から入ることになったために、セシルさんはパートナーの竜を連れてきた・・・ってアルフさん?


 「おお少年!おはよう。」

 この五日間で俺が何度もいろんなことを質問しに来たこともあり、アルフさんとはすっかり仲良くなっていた。

 「おはようございますアルフさん!」

 俺は元気よく(?)答えた。念話だからいまいちそういうことはつかめないけど。

 「今日はなんだ?訓練か。」

 「はい、予備要員の訓練です。でもセシルさんに誘われて僕も訓練を受けることになりました。」

 「ふふ、そうか。今日は共に空を飛べるというわけか。楽しみだ。」

 「こちらこそ。」

 



 


 「じゃあケイゴ、訓練始めましょうか。ユウト君より先に竜舎に配属になったってことを見せつけてやりなさい。」

 「そ、それとこれとはあまり関係ない気が・・・。」

 ケイゴはとても言いにくそうに応えた。

 「いいえ、関係あるわ。あなたの方がユウト君より長くドラゴンを見ているんだから、ドラゴンの習性や動きの特徴を知っているでしょう?」

 「そうでしょうか。」

 「えぇ、恐らくね。」



 装備の説明を受けた後、先ほど言われた通りケイゴから騎乗することになった。

 「アルフ、この子の乗り方が間違っていたら振り落としてやりなさい。」

 ひぇ~、あの顔からは想像できないような爆弾発言が・・・。もしかしてセシルさんってSなのか?そうなのか?



 ケイゴはセシルさんに教わったことを忠実に守って乗ったために、一つも間違えることなく騎乗することができた。

 「なによ、そんなにすんなり乗っられちゃったら面白くないじゃない。アルフ、何も難点はなかったけど振り落としちゃっていいわよ。」

 や・・・やっぱりこの人Sだ、いやこれはドSと言うべきか。あぁ怖い怖い。

 「あなたが俺に先輩としての意地を見せろって言ったじゃないですか。」

 「うふふ、冗談よ。」

 あ、通常のセシルさんに戻った。S精神丸出しの時のセシルさんは、あの妖精のような笑顔からは想像もつかないような・・・そう、悪魔のような笑みと言うのが正しいだろうか。そんな笑みを浮かべる。まぁ、そんな時のセシルさんにも惹かれる男性たちがいるとケイゴから聞いたような・・・。

 「ケイゴ、さっき指示の出し方は説明したわよね?今からアルフに指示を出して自由に空を飛んできなさい。あ、風よけのゴーグルを忘れないようにね。」

 セシルさんがケイゴにゴーグルを渡した。訓練生用のものなので形にこだわっておらず、なんというか・・・ダサい。

 「飛んで良いんですか?」

 ゴーグルをかけながらケイゴが尋ねた。

 「えぇ、もちろん。私の説明をしっかり聞いてたって分かったから許可します。」

 「ありがとうございます!」

 



 「じゃあ行ってきます!アルフ、行くよ?」

 アルフさんが返事をするように翼を広げた。すぐにケイゴはアルフさんに乗せられて、大空へ舞い上がった。いいな~。俺がうらやましそうに見上げてていると。

 「あなたもケイゴが帰ってきたら乗せてあげるから。楽しみにしてなさい。あ・・・でもアルフが高い声で短く鳴いたら『疲れた』って言う合図だから、戻るよう指示してあげてね。」

 とセシルさんは言った。

 「了解です。」

 アルフさんが高い声で鳴くとか想像つかんのだが・・・。ま、まぁいいか。

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