奴隷化!?契約
不思議な人形を家にもって帰った晶。
「・・・・・・」
うわぁ・・ありえねぇ・・。
晶はそう思った。
今、晶が見ている光景は・・人形が食べ物を食べている光景であった。
しかも!
冷蔵庫の中身全部であった。
ありとあらゆる食べ物が食べつくされている。
あの小さい体によく入るな、と思ったほどだ。
だが、
「ちょっと、待て!!」
「なによ」
「なに〜?」
「ボクん家の食いもん全部食うきか!?」
それを聞いた長い髪の人形は、ギロリと晶を睨んでから、また食べ物に眼を移し、言った。
「あら、失礼ね。あなたが一日食べる量は取ってあるわ」
たった一日かよ・・
晶は何気、心の中でつっこんで見た。
「心配ないよぉ〜せめて、一週間分は残しておくから〜」
はぁ〜〜〜〜〜・・
ボクの命は一週間で尽きるのか・・
「そうそう。晶、紅茶を持ってきてちょうだい」
「はぁ?なんでボクが・・・」
「晶、紅茶を持ってきてちょうだい」
長い髪の人形はなんて睨むのがうまいのだろう。
晶は言われるままに、動いた。
寒いといえば、ストーブをつけたり、紅茶のお代わりを持ってきたり・・・。
これは完全に「奴隷」だ!
しかし、これがずっと続いていたわけでは無い。
「晶」
長い髪の人形は言った。
「前に、「契約」って言ったわよね?」
「ん?あぁ、言った言った」
「今から、契約やるから」
「え?」
おいおい。まてまて。スットプ!
話の展開が速すぎないか!?
その理由ぐらい説明しろよ!
「契約の理由。戦いが始まるからよ」
「え・・?何の戦い?」
晶はベッドに座りながら聞き返す。
「アリスドールの願い実現のためのゲーム」
長い髪の人形は、深刻な顔で言う。
「願いなんか有るのか?」
晶は「人形の願い」など有るのか、だんだん聞いてみたくなった。
「あるわ。わたしたちは、人形として生まれ、人形として生きてきた。それもただの人形じゃない、「命ある人形」で。わたしであれば、人間になりたいとか・・」
「ひなはお菓子をいっぱい食べたい〜〜!!」
そういいながらも、食べ物をほおばる人形。
「あれは・・願い?ていうか、もう食うな!」
「・・・・・・・一応、願い」
長い髪の人形は続けた。
「願い実現のためには、戦いに勝たなくてはいけない。その戦いが今始まろうとしているの。それも、今までの戦いより大きい戦い。なにしろ、7体の人形が一揆に目覚めたんだから」
「・・動いてる人形が7体もあるのか?」
「えぇ」
部屋には、しばらくの沈黙が流れた。いや、お菓子を噛んでいる音だけははっきり聞こえるが。
「分かった。契約でも何でもやってやろうじゃん。ただ、条件がある」
「条件?」
「いい」といわれたときは輝いていた顔が、「条件」という言葉を聞いて、一揆に曇り顔になった。
「その条件っていうのは・・・?」
長い髪の人形が真顔で聞く。
そうとう、契約というのをしてほしいらしい。
「条件とは・・・」
「条件とは・・?」
長い髪の人形は息を呑んだ。
「アイツをどうにかしろ」
「へ・・・?」
晶が指差した先には、お菓子をほおばっている人形がいた。
長い髪の人形は拍子抜けだったらしく、肩の力を抜いた。
「・・・それで・・いいの?」
「家の食料品がなくなるよりマシだ」
晶は仁王立ちで立ったまま言う。
「分かったわ。ひなぎく、やめなさい」
長い髪の人形は言う。
「ふぇ〜?いいはん、へふに〜。へっ?あひるひ(えぇ〜?いいじゃん、べつに〜。ねっ?アイリス)」
「ダメよ」
「ひあ!(いや!)」
長い髪の人形――アイリスは叫ぶ。
「ひなぎく!」
「ひや!(いや!)」
ひなぎくも負けてはいない。
「そう、じゃあしょうがないわね」
アイリスは何か呪文を唱えた。
その瞬間、あたりを青い花びらが覆った。
「・・・アイリスの花・・?」
「そうよ。さぁ・・・ひなぎくを抑えて!」
青い花は、一瞬のうちにひなぎくを覆った。
しかし、ひなぎくも負けてはいない。
中から、オレンジ色の花びらが見えた。
「・・・ひなぎく・・?」
「・・・あっ!」
突如、アイリスが叫んだ。
「え?」
「あそこにお菓子のお店が!」
「えぇぇ!!?ひな行く〜〜〜!!!」
馬鹿だ。
んなもん、あるわけないだろ。
まぁ、すべて食いもんが消えるよりはマシか。
「おぉ!おいしそうなもんがいっぱい売ってるぞ!」
まるっきり、棒読みだが、ひなぎくに余計行かせたくした。
ひなぎくは花びらの渦の中にいて、外が見えない。そのため、無いとしても言っておくと後が便利になった。
そして、「おいしそう」コールを続けること、三分。
とうとう、ひなぎくが花びらを弱め外へ出ようとした。
「いまよ!」
アイリスが叫び、アイリスの花びらは、あっという間にひなぎくを押さえた。
「わあぁ〜ん!うそつき〜!!」
ひなぎくは泣いているが、最後に食べていたガムをまだ食べている。
「これで、いいのね?」
「あぁ・・まぁ、いいんだけど」
「じゃっ、始めるわよ。シールド展開!魔方陣「解」!」
その瞬間、青いわけの分からない言葉が刻まれた、魔法陣が現れ、その周りから青い光で立体状の半円が出てきた。
「契約者・アイリス・晶!」
その瞬間、アイリスの体が宙に浮いた。
「うわっ・・」
そして、アイリスは晶の目の前で止まると、晶に近づいてきた。
そして、
ちうっ・・
とキスをしてきた。
「!!!!!!!!!!!!????????」
晶は、驚きで声も出せない。
え?え?えぇ?
ボク、人形にキスされた!?
アイリスは、なんでもないかのように、普通にしており、静かに床に下りた。
――契約完了。
どこからか声がした。
その瞬間。
グアァッ!と重力で床にへばりついた。
「契約お疲れさま!次ひななの!」
そして、また、次はオレンジ色の光に包まれた。
アイリスのときと同じ事を繰り返した。
また、「契約完了」という声がした。
その瞬間。
ゴンッゴンッと晶の頭に何かがぶつかった。
「な・・なんだ?これ」
それは、よくある宝箱のような箱であった。けれど小さい。
開けてみると、それは、薄い青のかかった透明な指輪と、薄いオレンジのかかった透明な指輪であった。
「これは・・・契約の指輪。壊さない限り、どこにおいてあってもかまわないわ。ただ、誰かに取られたりでもしたら、わたしたちがゆるさないけれどね」
「はい」
ということで、晶はその指輪をチェーンに通して、いつも身につけていた。
家の食費・・大丈夫か? IN 晶