9/9
Ⅸ、出会い
≪翠簾野 華月≫
何時もの屋上に行った。
雨上がりの匂いが漂う其処には先客が居た。
「誰?」
此方を振り向いた人影が漏らした声。
「私の事ですか?」
人影は此方に向かって歩いてくる。
「…貴女が、"発現者"なの…?」
「え?」
聞き取れた言葉。
私は耳を疑った。
――何故、"発現者"を知っているの――
「悪いけど、死んで欲しいわ」
「?!」
彼女は、そう呟くと私に掴みかかってきた。
「きゃぁっ!?」
「死んで?」
首を絞められ、屋上の手摺りの近くまで押された。
「止め…て…」
「嫌だよ」
ぐいっ、と身体が強く押される。
――落ちる…――
「このまま落ちたらいくら天使でも死んじゃうよねぇ?」
「わ…たし…は、天使…じゃ…な…い…」
「五月蝿い黙れ」
死へのカウントダウン。
――怖いよ…助けて――