Ⅷ、小雨
≪如月 雷華≫
昨日から降り続ける小雨は、僕を陰鬱にさせるのにぴったりだった。
唯でさえ、調子悪いのにな。
雨は、嫌いだ。
何故かって?
其れはあの日を思い出すから。
★
「つ、付き合って…下さい」
少女は少年に思いを打ち明ける。
「悪いけど…僕は、君を好きにはなれないんだ」
2人の間に微妙な空気が流れる。
先に動いたのは少女。
打ちのめされた表情を浮かべる。
「そ…んな…」
少年は悲しそうな笑みを浮かべると少女に言葉を掛けようとした。
しかし、少女は眼に涙を浮かべると走り出す。
「あ…!待って!」
少年は追いかけようと手を伸ばす。
その手は少女に届かず、少女は道路に飛び出した。
「…サヨナラ……雷華先輩。」
雨の中、彼女は笑っていた。
そして、笑顔の彼女を車が撥ね飛ばした。
赤が少年の前に散る。
其れはまるで花の様に、広がった。
狂ったように踊る、少女の身体。
死の舞踏は少年の心に深い傷を付けた。
「――!!!」
★
「…」
嫌な思い出のページを開いてしまった。
あの時の少女は、即死。
全て、僕の所為なのに…
彼女は、僕に罪悪感を植え付けた。
そして、僕は償いとして、あの時の映像を思い出しては、一人罪悪感に苛まれる。