Ⅶ、夢と現実
≪翠簾野 華月≫
「今日は…もう寝よう…」
特別病棟の一室。
私の部屋は角部屋。
私1人しか居ないけど、色々な器具があって狭く感じる。
ぱちりと電気を消して、眼を閉じた。
★
すく「おかあ…さ、ん?」
少女は変わり果てた母を見つめ涙を落とす。
「ねぇ、ね、ぇ…おか…ぁさ…ん」
必死に泣かない様と堪えるのが伝わる。
しかし、
「――此処に所有者が居るのか?」
「そうだ。子供が居る筈だ。そいつが所有者」
「親は大丈夫なのか?」
「ああ、殺した」
バタバタと足音が聞こえる。
少女は声に怯え、しゃがみ込む。
ドアが開く音がした。
「ひぃっ…お、かーさ…ん」
男達の声が聞こえる。
「居たか?」
「奥の部屋に居そうだ」
「どーこーでーすーかぁー?」
そして、少女を守っていた最後の扉が開かれた。
男が踏み込んできた瞬間少女は叫ぶ。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
そして、
「見つけた」
と言われた刹那、少女の背から白い物が現れた。
其れは、神話に在る天使の翼の様で、神々しく犯し難い物。
「…所有者から、発現者に、確定」
そして、少女は強いショックで気を失う。
翼は霧の様に消え去り、血に濡れた背中だけが残った。
「連れて帰るぞ」
「了解です」
少女は男達に連れ去られ、後には変わり果てた女だけが残った。
★
「っあ!」
此処は…
華月は考える。
「夢…?」
今、起きた事は夢だった。
余りにも生生しく、鮮明な記憶。
「もう…嫌だよ…」
ぽたりと落ちたモノ。
其れは華月の頬を伝ってシーツに落ちた。
窓の外は夜。
気付けば小雨が降っていた。