Ⅰ、出会い
残酷な表現がある可能性があります。
苦手な方は、気を付けて下さい。
章の中に≪●●(人名)≫というのがありますが、その人名は語り手の名前です。
閉ざされた屋上。
僕は彼女と出会った。
≪如月 雷華≫
「はぁ…退屈だな…」
僕は病院内をうろうろしていた。
勿論看護師さんに会ったら、怒られるのは承知している。
しかし、退屈だ。
検査入院の為此処に居るが、僕は元気なのだから。
事故に在ったからと言って、必ず怪我するわけじゃないし。
僕は1週間前、事故に在った。
学校の教室で話して居た所、窓から落ちたのだ。
誰かに押されたとか、そう言う訳ではない。
唯、窓際で話していただけだ。
見ていたクラスメイトによると、
「ゆっくり落ちていった。まるで跳ぶ様に」
ゆっくり落ちたからなのか、僕は無傷だった。
しかし、万が一の為、僕は検査入院をしている。
「…お?」
何時もは閉ざされている屋上への扉。
今日は違った。
その扉が少しだけ開いていて、光が差し込んでいたのだ。
周りに誰も居ないか確認して、その扉を開けた。
がちゃり
呆気無く開いた扉は僕に春風を運んできた。
温かい風は優しく扉を閉めた。
僕は前を見た。
――女の子が立っていた。
その少女は銀の髪を風に揺らしていて。
在り得ないほどの抜けるように白い肌が。
何よりも特徴付けていたのは、
大きな赤い瞳。
「だ、誰ですか…?」
女の子は怯えたように僕を見た。
取り敢えず、自己紹介をしようか。
≪翠簾野 華月≫
何時もみたいに私は屋上に行った。
私だけに許された秘密の場所。
誰も居ない私だけの園。
園といっても花は咲いてないけど…
「~♪」
私は移り変わる景色を見るのが好き。
春は桜で夏は新緑。
秋は紅葉で冬は雪。
美しく変わる町がとても愛おしくて。
だけど、何時に成ったら私は外の世界に行けるのかな。
って寂しくなるの。
がちゃり
「!」
何の音だかすぐに解った。
私の世界を崩す音。
いつも黒羽 星歌先生が入ってくる音。
星歌先生は私の世界を崩す。
私に痛いことをする。
怖いよ…
私はゆっくり振り向いた。
其処には、男の子が立っていた。
その子は、肩にちょっと付く位の茶色い髪。
綺麗な緑の瞳。
美人だった。
だけど、悪い人かもしれない。
「だ、誰ですか…?」
声が震える。
男の子は口を開いた。