ぎょうちゅう検査!
※タイトルの通り、蟯虫検査のお話です。
ご不浄の部位のお話ですゆえ、深層のご令嬢、御婦人の方々は、お気をつけくださいませ。「まあ、はしたない!」となるやもしれません……
しかし、寄生虫感染の早期発見、集団衛生の保持のためには大事な検査でもあるのです。なんとしても実行せんと、奮闘する母の記録です。
あれです。皆さんもご存知、お尻ぺったんテープです。
我が家の小さき御仁が、幼稚園から持ち帰った2つの神器。
「検尿」&「蟯虫」検査キット!
少し前まで、検尿は苦労しましたね。
おむつを履いていましたから。
綿を仕込んで絞ったり、なんとか容器に採取しようと、盛大な事故が起こったり。
でももう大丈夫。子どもの成長は早いのです。
「ふ。余裕だな」
勝ちを確信しておりました。我が家の御仁は、すでにオムツはさようなら。自力でお着替え、排泄もできる、小さな一人前なのですから。
***
【DAY1】
『なにすんねん!』
鋭い叱責とともに「ぱちん」と平手打ち。
私、呆然としております。
朝起きたら隣にすやすや眠る小さき御仁。
一糸まとわない、生まれたときと同じやんごとなきお姿。
――はい、裸族です。
彼は夜中に脱ぐのです。何度着せても脱ぐのです。母も頑張って、服飾文明の良さを語って聞かせるのですが、限界です。
「スッポニア・スッポン族」。そう命名した珍生物を、ぼんやり寝ぼけ眼でながめます。
(あ、今日検査だわ)
枕元に置いたキットに、意識が浮上します。
目の前には一糸まとわぬ――お尻。
(ちょうどいいわ)
そのままぺったん。それでおしまい。
昨年まではそうだったはずなのに。
「なにすんねん!」
いつものカタコト喋りからは想像のつかない滑らかな日本語が、関西の訛りを色濃く放たれたというのです。
ついでの平手打ちに、母は呆然と、手のなかのシールを片付けました。
***
【DAY2】
母は悩みました。
なんとか今朝はぺったん履行できたものの――このままでいいのだろうか。
幼いとはいえ、立派な一個人。
インフォームド・コンセント、すなわち本人の納得は大切だと思うのです。
夜、母は子と向き合いました。
「これはね、ぎょうちゅう検査。お尻に虫さんの卵がいないか、調べるの」
「ぎょーちゅーけんさ」
「うん。だから、明日の朝も、ぺったんしていい?」
「いいよ!」
なんと、快諾をいただけました。やはり納得が大事です。
きたる決行の朝。
輝く桃尻。すやすや眠る呼吸音。
(いきなりはダメだよね)
昨日の経験から、母も学んだのです。
「今からぺったんするからね」
もぞもぞ動く小さき御仁。
くるりと反対に寝返りました。
「ぎょーちゅー検査するからね?」
再確認。くるりと反転。
奴はしっかり夢の中。
(……仕方ない)
事前通告はしたのです。これだけ寝てればいけるだろう。私は決行を決意し――
「閉まってる……だと!?」
毎日夕方、2キロランニングを欠かさない小さき御仁。引き締まったその筋肉が、お尻をキュッと閉じるのです。
「いや、起きてるよね? ぺったんしよう?」
再三の声かけに、奴めは転がり、尻を閉じ、挙句の果てに、布団の中へと潜ります。
仕方ない。
ここは実力行使!
――早朝からの大騒ぎ。
それでもなんとか実行しました。
結局頼れるのは己の筋肉のみ。
「ママ、おしりぺったんしよー!」
私のお尻を標的に、セロテープ片手に追いかけてくる我が子から逃げ惑いながら、私は強く思うのです。
「パパにやらせれば良かった……」




