第1章 第4話
光一が慌ただしく食堂へと向かった後、俺はというと特になにもすることがなかった。
ファブリーズの臭いを消してこようとも思ったが、頭に原液かけられたから消すためには校内で頭を洗わなくてはいけない事を考えるとよした方がよさそうだ。
弁当を食おうと考えたが、さすがに光一がかわいそうな気がして食べられなかった。
先に食事を済ませた俺を見た光一の反応を考えると、食欲なくても食べられる気がしたんだけどな……。
俺の良心めぇ……。
俺の食欲により光一は犠牲になったのだとか一回言ってみたいんだけどな。
特になにもすることがない俺はなんとはなしにぼーっとした。
……今日はバイト。
今日は廃棄あるかな?
あるとおかずが豪勢になって助かるんだが。
こればっかりは今日の客が少ない事を祈るしかないな。
食費は一番切り詰めないといけないから、頭使う。
当面の今日、明日、明後日の晩飯はカレー食うだけで大丈夫だな。
明日もバイト。
なんか特売とかないかな。
シャンプーがもう少なかった気がする。
「――とっ!」
インスタントラーメンの買い置きもやばかった気がする。
光一がいつも食っていくせいだ。
明後日は休み。
特売あれば買いに行く。
光一達が遊びにくるのもその日だ。
何時頃くるんだろうか?
家主の俺としては、友人とはいえちゃんとおもてなししないとな……。
それにしてもやっぱり臭いがすごいな。
彩夏の奴め……。
「――まとっ!」
人の事捕まえてカレー臭いだなんて……。
確かに臭いかもしれないけど、そこはオブラートに包むべきだろ……。
言葉を選ぶって事を知らないからなあのバカは!
カレー臭いなんていう奴は加齢臭にまみれてしまえばいいんだ。ババァめ。
いつかあいつがババァになったとき、あら加齢臭がすごいねとか言ってやる。
しかも、ファブリーズ原液かけやがって!
明らか使用方法間違ってるだろ。説明書の日本語読めないのか? あのアマはよぉ。
「大和っ!」
「うぉ!?」
急に耳元で大声出されて驚く。
声の方向に恨めしそうな目を向けると、視界に入るのは彩夏の顔。
「なんだよ。急に大声だして」
「あんたが呼んでも全然返事しないせいじゃない」
「へ? そうだったのか」
むくれつつも真剣そうな彩夏の顔。
悪い事したな……。
「なんかぼーっとしてたよ。全然反応なかった」
「そっか。悪い」
真剣な顔で俺を見てくる彩夏。
「大丈夫? 体疲れてるんじゃない? やっぱり無理してるんだよ」
あれ? なんか心配されてる?
「いや、大丈夫だ。少し考え事してただけだ」
お前の愚痴を脳内で繰り広げてたなんて、口が裂けても言えない。
「それで、どうしたんだよ?」
考え事が何か詮索される前に本題に。
彩夏は俺の事情を知る数少ない人間だ。
そのため、余計に心配をかけてしまうのかもしれない。
幼なじみってのも考え物だな。
「あ、うん。大和、もうお昼食べた?」
おずおずと聞いてくる彩夏。
「いや、まだだけど」
「さっきからお弁当箱一回も出してないもんね」
「解ってるなら聞くなよ……」
それより彩夏、細かい所を見過ぎだ。
「ふーん。じゃあさ一緒に屋上で食べない?」
したり顔で誘ってくる彩夏。
「? なんで屋上?」
「べ、別にいいじゃない! ……た、たまには開放感を味わいながら食べたいだけよ」
少しどもりながら言う彩夏。
少し挙動不審だ。
こ、これはもしかして? お約束にして王道の展開が待っているのか?
いや、ないな。
長年一緒にいて今更そんな事になるわけがない。
彩夏を見ると目線を合わせようとしない。
……これはもしかするのか?
「で、どうなのよ?」
目線を合わせないまま聞いてくる彩夏。
「解った。行こうか」
なんか、自分も調子狂っていつもと違う声がでた。
「じゃあ、屋上に行きましょ」
彩夏は自分の弁当箱を持って、屋上へと向かっていく。
俺はその後ろ姿を見て、なぜか重かった腰を上げて俺も屋上へと向かった。
読んでいただきありがとうございます。
宿なし娘と貧乏少年 第1章 第4話です。
第1章は全8話構成を予定していますので、ちょうど折り返しです。
今回の話の文字数は少し少なめです。
前回の更新の時、知ったんですが最大文字数は40000文字だったんですね……
ずっと4000文字だと思ってました。画面ちゃんと見ないとダメですねw
次回は彩夏の緊迫したシチュエーションはひとまず置いといて(マテ
ついにタイトルにあるのに出番がなかった人物が登場します。
いったいどんな人物なのか?
乞うご期待。
近日更新予定です。
といいつつ最近は毎日更新してますがw
大体書くのに1時間ぐらいかかるのでその時間が用意できれば更新する感じです。
よろしくお願いします。
誤字、脱字訂正、感想、ご意見お待ちしています。
していただけると筆者である自分が大変喜びます。