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第1章 第3話

いやな事があった朝。

人生について何かと考えてたら、授業はいつのまにか区切りを迎えていて昼休みになった。

昼休みになっても俺の臭いは取れなくて若干憂鬱だ。

まとわりつくなよフローラルの香り……。

今後フローラルの臭いが憎いと感じるかもしれない。

そんな俺のダウナー気分をよそに学校は盛り上がっている。

昼休み。

腹をすかせた生徒達が本能のままに動く時間。

もはや生徒と書いておおかみと読むに相応しい程狼の動きは俊敏でみんな食堂に向かっている。

真台学園の食堂は種類が多く、狼側の選択肢が豊富なのだが、種類が多いため各メニューの用意が少ない。

人気メニューはすぐに売り切れる。

逆に不人気メニューは売れ残る。

真台学園の食堂には、食堂のおばちゃんの無駄にあふれるチャレンジ精神により出来た創作メニューがいくつか存在する。

限界の辛さに挑戦した激辛麻婆豆腐とか、サラダスパに対抗するべく作られたサラダラーメンとか、何で黒いのか解らない黒いシチューとか、餅は元々米という閃きから生まれたおしるこおかゆとか。

挙げれば挙げるほどどんどんひどくなるラインナップ。

最早、罰ゲームと言うに相応しい。

そして売れ残るのはそれらで、遅く来てしまった者には苦渋の選択を迫られる羽目になる。

そういうのを避ける為に狼たちは必死に食堂に走ってる訳だ。

ふと、光一の方を見る。

あいつはまだ寝ている。

それはもう、健やかな寝顔で。

……起こすのもかわいそうだし、そっとしといてやるか。

……でも腹すかせた状態で授業受けさせるのもかわいそうか。よし、後5分したら起こしてあげよう。決してそこに悪意はない。決して。



――5分後――



「おい、光一起きろ」

机に突っ伏したまま寝ている光一の体を揺さぶって起こす。

「んー。なんかラベンダー畑が見える」

未だ夢の国の住人になっている光一。

ラベンダーの臭いは夢に出てくる程強烈な臭いを発しているらしい。

もっと強く揺さぶってみる。

「ほら、起きろ。昼休みだぞ!」

「んー、かわいい女の子が先輩とかお兄ちゃん、または弟とかいいながら優しく体揺すって起こしてくれなきゃいやだ」

こいつうぜえ。

つうか、注文細けぇ。

「お前を起こしてくれる危篤……奇特なやつなんていねぇよ」

髪をといた彩夏という選択肢もあるにはあるが絶対やさしくない。

そんなセリフを強要したらまず怒るだろう。

「そんなはずない。にしてもなんか臭いがすごいなー」

「うるせぇ。朝っぱらから彩夏にやられたんだよ」

よくよく考えてみれば事の原因はこいつにあるんだよな。

そう考えたらなんかいらついてきた。

「おら、起きろつんつん頭」

「つんつん頭? 残念。俺はどちらかというとサラリとしたストレートヘアーです」

「お前みたいな弾けたストレートヘアーがいてたまるか」

「……」

拗ねた!? っていうかこいつ起きてるだろ!?

「解った。ほら、起きろサラリとしたストレートヘアーの光一」

つんつん頭をばさばさ叩きながら起こす。

「俺の髪型がストレートなんて本気で言ってんの?」

「こいつうぜえ!」

しまった。つい本音が。

「とにかく起きろ。起きないと食堂のメニューがなくなっちまうぞ」

それを聞いた瞬間ガバっと起きる光一。

俊敏な動きに少し驚いた。

「なんで、早く起こさないんだよ!?」

起きるやいなや俺を責め立てる光一。

時間は昼休みが始まってからもうすぐ10分ぐらいを経過する。

「いや、起こしたじゃん」

全く心外だ。

「そういう問題じゃなくて! なんで起こすならもっと早く起こさないんだよ! さっきの会話で10分もかからないだろ?」

「健やかに寝てたから、そっとしといてやろうかなとか思って……。それより、やっぱり起きてたのか」

「そんな気遣いいらねーよ!? どうせ起こすなら早めに起こせよ。起こさないなら寝かしといてあげて!?」

本当にはなはだ心外だ。人の気遣いがいらないとは。ただ、俺はメニューがなくなり苦しみ葛藤しながら選択を迫られる光一が見たいだけなのに。

「いや、悪い。今度から気をつける。それよりいいのか?話してる間にも時間が……」

「あー! もう15分ぐらい経ってる!? それじゃ、俺行くわ!」

「はいはい。はよいけ」

シュタっと教室から出て行く光一。

俺はそれを見送った。

出て行く光一の目は、まだ残ってるという希望を胸にしていそうな感情ともう残っていないと諦め黄昏れてそうな感情が入り交じって複雑な顔をしていた。

そしてドタドタと足音を立ててまた戻ってくる光一。

「食堂からテイクアウトしてくるから一緒に飯食おうな! 約束だーぞー……」

言葉の途中から慌ただしく教室を出て行ったため声が遠くなった。

まあ、今更急いでも多分残ってるのは創作メニューなんだけどな。

計画通り(ニヤリ)



さて、俺も光一が戻ってくる頃には弁当を食べたいんだが、鼻腔をくすぐりすぎて苦痛になりつつあるフローラルの臭いが食欲を邪魔する。

多分、食べ始めればなんとでもなりそうなんだけど……

食べ始めるのに苦労する。彩夏め……。


こうして昼休みの時間は過ぎていく。


読んでいただいてありがとうございます。

宿なし娘と貧乏少年 第1章 第3話いかがだったでしょうか?

光一くんをうまく描きたかったんですがなかなかうまくいかないですね(マテ

次回は彩夏の話になると思われます。

更新は近日予定です。

お楽しみにしてくださると嬉しいなぁ……


感想、ご意見お待ちしています。


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