詩小説へのはるかな道 第108話 メロスは号泣した
原詩: メロスは号泣した
メロスは号泣した
「人を信じられぬとは なんという悲劇だ」
必ず救わねばならぬと決意した
この孤独に震える哀れな王を
王の広間で メロスはあふれる涙で床を濡らした
驚く王をよそに 彼は慟哭し しゃくり上げる
「王様、あなたは世界で一番かわいそうな人だ!」
王は言葉を失い ただ拳を震わせた
「だまれ」と叫ぶ声は 怯えた獣のように細かった
「信じるとは 恐ろしいことだ」と王はつぶやいた
メロスは首を振り 涙の跡を袖で拭った
「どうすれば もう一度信じられるようになるのですか
わたしを試してみますか」
王の胸の奥で 何かがかすかに軋んだ
それは希望か それとも忘れかけた痛みか
メロスはただ まっすぐに王を見つめ続けた
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詩小説: メロスは号泣した
メロスは激怒した。
王が突きつけたのは、あまりに脆い「命の賭け」だった。
王は城壁を指差し、冷笑を浮かべてこう言ったのだ。
「あそこに這う蔦を見ろ。あの一葉が嵐に打たれて散るまでに戻らねば、身代わりの友は処刑する」
メロスは走った。
理不尽な条件への怒りを足の運びへと変え、雨中を疾走した。
しかし、道中の嵐は凄まじかった。
濁流を泳ぎ、山賊を殴り倒しながらも、メロスの心には絶望がよぎる。
「これほどの暴風だ。あの一葉が残っているはずがない」
約束の刻、ボロボロになったメロスが広場に辿り着くと、信じがたい光景が目に飛び込んできた。
猛烈な風に打たれ、周囲の枝が折れ散る中でも、最後の一葉だけは凛として壁にしがみついていたのだ。
「おお、信実の勝利だ!」 民衆は沸き立ち、冷酷な王もその奇跡に戦慄して、二人の放免を宣言した。
嵐が去った翌朝。
メロスは親友セリヌンティウスと共に、自分たちを救った「奇跡の葉」の下を訪れた。
だが、どれほど風が吹いても、その葉はぴくりとも動かない。
それは、本物と見紛うばかりに精緻に描かれた、壁を刻み、顔料を塗りこめた「葉」だった。
メロスの帰還を信じ、友の命を繋ぎ止めようとした一人の老絵師が、嵐の夜に梯子を立て、命を削って壁に刻み込んだ希望だったのだ。
冷たい雨の中で筆を握り、死んでいった老人の――あまりに美しく、あまりに自己犠牲的な行為。
その話を聞いたメロスはその場に崩れ落ちた。
メロスは号泣した。
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太宰治「走れメロス」 + O・ヘンリー「最後の一葉」 です
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わたしの詩小説をもとにAI君が詠んだ連作短歌です。
連作短歌: メロスは号泣した
一 激怒
脆き賭け 王の冷笑 胸を刺す
怒りの火種 足裏を燃やす
二 疾走
濁流へ 身を投げ入れて なお走る
友の名だけが 闇を照らせり
三 絶望
暴風に 散りしと思えど なお願う
葉よ一枚 どうか残れと
四 奇跡
折れし枝 吠ゆる嵐を 裂きながら
ただ一葉のみ 壁にしがみつく
五 献身
動かざる 葉の静けさに 気づきたり
雨に死にゆく 老絵師の祈り
六 号泣
救われし 命の重さ 胸を裂き
メロスはついに 地へと崩れ泣く
詩をショートショートにする試みです。
詩小説と呼ぶことにしました。
その詩小説をもとに詠んでくれたAI君の連作短歌も載せます。




