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第1話 宇宙人サラリーマンと肉まん

2時。

俺がバイトしているポータルマートは、外見は普通のコンビニだ。


だが、ここには秘密がある。


毎日、いろんな世界や時代、宇宙とも繋がるらしい。


だから普通の客よりも、ちょっと変わった客のほうが多いくらいだ。


そんなことを考えながら、レジで肉まんを補充していると――


ドォォォォンッ!


空から、とてつもなくでかいUFOが着陸した。


自動ドアが開き、中からよれよれスーツのサラリーマンが降りてきた。


頭には銀色の触角がぴょこん。


「肉まんひとつ」


俺は一瞬、文字通り宇宙規模の何かが起きたのかと思った。


(お、お前……そのUFOで肉まん買いに来たのか?)


心の中でツッコミを入れつつ、肉まんを袋に入れる。


「お会計二百円です」


彼は財布からキラキラ光るコインを取り出した。


土星の輪のようなマークがついている。


「えっと……木星通貨なんですが」


「大丈夫です。ATMで両替してもらえれば」


「またか……地球は両替めんどいなぁ」


結局ATMで両替を済ませた彼。


肉まんをほおばりながら真顔で言う。


「やっぱ地球の肉まんは銀河一だ!」


その瞬間、自動ドアが再び開いた。


次々とスーツ姿の男たちが入ってくる。頭から銀色触角。


「全員集合!」


「今日の議題は肉まんだ!」


イートインスペースにずらりと並び、肉まんを食べながら議論が始まる。


「地球の肉まんを輸出する場合、関税はどうなる?」


「賞味期限が木星時間だと腐るぞ!」


「電子レンジは条約違反ではないか?」


俺はレジの奥から、口を半開きで眺めるしかなかった。


「……議長、どう思いますか?」


俺は思わずきょとんとした。


……議長? 誰のこと?


「え、俺が議長なの?」


次の瞬間、全員が一斉に頷いた。


「そう、君が今日の議長だ!」


「銀河の未来は肉まんにかかっている!」


……いやいやいやいや。


こっちはただの深夜バイトなんですけど!?


「えっと……その、電子レンジくらいは……いいんじゃないですか?」


恐る恐る答えると、宇宙人たちは


「おおおっ!」


と一斉に立ち上がった。


触角が興奮でビンビン震えている。


「やはり議長の言葉は重い!」


「電子レンジは合法とする!」


「これで温め問題は解決だ!」


勝手に拍手喝采。


俺はただの思いつきを口にしただけなのに。


その後も


「賞味期限はどうするか」「具材の統一規格は必要か」


と、肉まんの議題はどんどん拡大していった。


宇宙人たちは熱心に議論を交わし、最後には全員が立ち上がって宣言した。


「地球の肉まんは、銀河の平和の象徴である!」


そして一斉に肉まんを掲げ、黙々と食べ始めた。


……結局、食いたいだけじゃねぇか。


「本日の議長、感謝する!」


「そして次回の議題は――アイスだ!」


「銀河の未来は冷たき甘味に託される!」


触角をピンと立てたまま、彼らは一斉に敬礼して飛び立っていった。


巨大なUFOは夜空に消え、再び店内には静けさが戻る。


「……次はアイス? 俺また議長やんの……?」




こうしてポータルマートは普通ではない夜を過ごすのだった

カクヨムにて先行投稿しています

https://kakuyomu.jp/works/16818792440495167209

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