11.ちょっと待って。フラグかいしゅ…晴れました
馬鹿みたいに眩しい明かりが射し込み、目を思わず開ける。
つまりは快晴だったわけだ。
寝る前に壮大なフラグを立てたから、雨が降るかと思ったが、回収されることは無く雲一つない快晴だった。
私たちがスラム、つまり時計なんてものは無いのを知っているため、商業ギルドの人たちはお日様が丁度真上になったお昼の12時を指定してくれた。
空を見るとまだ真上じゃない、7時くらいかな。なんて考えながら、朝ご飯を食べていると母親が何故か自室に行った。
珍しいなあ、なんて硬いパンを食べていると見たことが無い服を母親が持ってきた。
いつもはお古を繋ぎ合わせたり、持っていても綺麗とは言えないような服だったし私も文句は無かった。
けれど、その服は商業ギルドで見た人たちよりは粗末だが私達からすれば立派な服で、それを見た瞬間に家族の優しさに気付いた。
確かに昨日、遮音結界を張っていても私からは家の音が聞こえていたが、普段よりかなり騒がしかった。
かと思えば急に静かになっていた。母親の目の下には隈が見える。
前世は布も1m500円は超えていて、安い服を買った方が作るより安く済むこともザラだった。けど、この異世界は安い服なんてものは無いし、中古なんてものも無い。
布も高いけれど、服を作る方が遥かに安い。
まあ、つまり1日で母親が作ってくれたんだろう。何なら昨日は、あの騒がしかった声の中に思い返せば兄が居た気がする。
前世の記憶を戻してからは1度も会ってないし、記憶を戻す前もそんなに会ってない。でも、年齢はそんなに変わらなかった気がする。今、小学校の中学年くらいな気がする。
小学生くらいだと、親の手伝いや働きに出てる世界だ。確か、住み込みをしていると聞いた気がする。そんな兄が昨日は帰って来てた、ような気がする。
多分、兄が布を持ってきて、半日も無い時間で親が縫ってくれたんだろう。
私が寝たのが20時か21時だったし、その前には静かだったから、10時間くらい。ミシンも無いのに、コスプレイヤーの前日みたいな事をしてくれたんだろう。
兄の顔や声はうろ覚えだけど、きっと商業ギルドで聞いて駆け回ってくれたんだろう。
「お母さんからのプレゼントよ。折角、認めてもらえたんだから、おめかししないとね」
「ありがとう」
そう、めちゃくちゃ嬉しい。私は服には無頓着だったけど、見た目は大切だ。
見た目1つで最悪聴いてもらえないなんてこともある。お風呂に入れないのは嫌で、秘かにピアノよりも先に作ったから臭いがキツくて近寄らないなんてことは無いだろうけど、立派な服に袖を通したり自分たちが今できる精一杯のお洒落を施していると、そろそろお日様がテッペンに昇りそうだった。
兄は仕事があるから昨日のうちに帰ったらしいが、親は2人とも付いて来てくれた。汚れないように私のことを抱えて全員で待ち合わせ場所へと走ってくれる。
スラム街から待ち合わせ場所は近い側ではあるものの距離はある。スラムの人にだって音楽を届けたい、という私のお願いのもと丁度、境目くらいの栄えている場所を選んでくれた。
家からは距離があるけど、昨日開発した魔法を応用すれば多少遠くても音楽は届くだろう。




