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14.女子会(これから)

数ある作品から本作品を選んでいただきありがとうございます。

 アネットが眠った後、私はいつもの場所でアネットと向かい合って座っていた。今日は訓練はなしだ。大人しく感想会をしようと提案し、アネットも乗ってくれた。


「無事に終わったわね。」

「そうですね。」

「貴方のお父さんにザクのこと話さなくて良かったの?」

「話したかったんですけど、最近隣国が怪しい動きをしていると言って城に行くことが多くて・・・。今日は私も疲れていましたし、また後日にします。」

「そう。確かに帰った時にまだ家にいなかったものね。


 この国は隣国と停戦状態にあるが、それがいつ破られるか分からない。特に隣国の第1王子。彼は血気盛んで世界統一を企んでいる設定だったはず。最近隣国の動きが怪しいということは、この国に攻めてくる可能性があるということである。ゲームではルートによって攻めてくるかが変わっていた。こればかりは平和が続くことを願うしかない。

 あまり暗い話をしていても仕方がない。私は話題を変えることにした。


「1つ聞いていい?」

「はい?何でしょう?」

「何でジネットやランロットじゃ駄目だったの?2人共悪い子達じゃなかったけど。」


 ずっと疑問に思っていた。ジネットやランロットも最初はあれだったが、性根は悪くない子達だ。彼らのどちらかを選んでもアネットは幸せになれただろう。だが、見切りをつけるのが余りにも早い気がした。アネットは、最初からザクを選ぶ気しかないように見えたのだ。


「そうですね・・・。ノゾミさんには言いづらいのですけど、ザクだけが、私だけを見てくれたからでしょうか。」

「?どういうこと?」

「ジネットさんやランロットさんはノゾミさんと対面しています。特にランロットさんはノゾミさんに打ち負かされました。今後お付き合いするとしても、2人が私を通してノゾミさんを見ているのではって考えてしまうのが嫌だったんです。」

「なるほどね・・・。」


 確かにジネットやランロットと最初に絡んだのは私だ。その後はアネットが主だったとしても、付き合い始めた後に「なんか思っていたのと違うな?」と思われるのが嫌だったのだろう。ザクであれば、最初からずっとアネットだけだ。


「それなら私がいなければ、2人のどちらかとくっつく未来もあったのかしら。」

「馬鹿なことを言わないでください。もしノゾミさんと出会わなければ私はこの世界でずっと泣いていましたよ。」

「そっか・・・。それなら、私はいてよかったのかな。」

「勿論です。ノゾミさんのおかげで今の私があるんですから。」


 アネットは優しく笑う。そう言ってくれるのであれば嬉しい。私の自己満足だが、アネットが幸せになることが私の価値を示してくれる気がしている。だが喜んでばかりもいられない。


「それなら良かったけど。これからが大変よ。これからたくさんの障害が貴方を待ち構えているのだから。」

「そうなんですか?時戻り前もレグルス殿下の婚約者になっていましたから妃教育は受けていましたよ?」

「そのことは心配していないわ。重要なのは、貴方の立ち場よ。」

「?」


 アネットは意味が分からなそうに首を傾げる。少し脅しになってしまうかもしれないが、言っておいた方がいいだろう。


「いい?おそらくザクには時戻り前の記憶があるわ。」

「え!?そうなんですか!?」

「ええ。間違いないといっていいでしょうね。これまでの傾向からしても、私の予測ははずれていないはずよ。」


 私が予測していた、ゲームの攻略対象は時戻りの記憶があるという仮説は正しいだろう。

レグルス殿下、ジネット、ランロット、そしてカーラ先生。全て攻略対象だ。攻略対象は全部で7人。そのうち会った事ある全員が時戻りの記憶を持っている。ここまであっていれば残りの3人も間違いないと思っていいだろう。


「時戻りの記憶についての話をしていないのはザクを含めて3人。他2人は置いておくとして、ザクもレグルス殿下が時戻りの記憶を持っている可能性に辿り着いているはず。」

「そうなんですか・・・。」

「ええ。だって、貴方に対してのレグルス殿下の固執っぷりに説明がつかないもの。最悪の場合、貴方が真の黒幕なんじゃないかって思われている可能性すらあるわ。」

「そんな!?」


 アネットは驚き悲しそうな顔をする。だが常に最悪の可能性をしておかなければいけない。好きな人に疑われているという可能性を。


「だから心にとどめておきなさい。次に会った時に、彼があなたの事を疑っている可能性があるということを。そして決めておきなさい。時戻りについて聞かれた時に、正直に話すのかどうかを。」


 アネットは顔を伏せる。だが、すぐに顔をあげた。


「私・・・聞かれたら話そうと思います。全てを。」

「そう。あ、でも私の事は見抜かれるまで伏せておいてね。」

「え?どうしてですか?」

「単純よ。愛で私の事を見抜けるか知りたいじゃない。」


 私は楽しそうに笑う。だが、普通は無理だ。唯一の例外はアネットの父親だが、あれは彼女の父親だからこそわかった事だし、普通はこんな側面もあるのかと考えるだけだ。


「でも・・・。」

「冗談よ。言うか言わないかは任せるわ。ただ、1つの身体に2つの魂が入っているなんて普通は信じないからね。言うのであれば言い方に気をつけなさい。」

「はい・・・。」


 アネットは悲しそうに顔を伏せる。言うべきか言わないか悩んでいるようだ。まあ私としてはどちらでもいい。


「そしてもう1つ。ザクは王太子になるでしょう。それであればこれからたくさんの人がザクの相手になろうと名乗りをあげるはず。国王もどうするべきか悩んでいるはず。その競争に勝ち残らなければいけない。」

「そう・・・ですね。」


 アネットは顔を伏せたまま動かない。少し脅し過ぎたかもしれないと私は慌てる。


「大丈夫よ!!貴方とずっと一緒にいたいっていってくれたじゃない!!ザクが頑張ってくれるんだから、後は貴方が頑張ればいいだけよ!!」

「そうですよね!!私が頑張らないと。」


 アネットは持ち直したのか、顔をあげる。その顔は先ほどの悲しそうな顔とは違いやる気に満ちていた。


「その意気その意気。必要があれば私が出て蹴散らしてあげるから!!」

「それはちょっと・・・。」

「いやそうしなきゃいけないかもしれないのよ。残りの2人の時戻り者が癖のある人達だから何をしてくるのか読めないのよ。」

「そうなんですか?残りの2人ってどんな方なんですか?」

「ここまでくると、教えておいた方が良さそうね。いい?まず1人目は・・・。」


 そうして、私は残り2人について話しはじめたのだった。絡んでこなければいいなと願いつつ。だがそんな私の願いとは裏腹に、がっつり絡んでくることになるとは今は知るよしもなかった。


4章はこれで完結となります!!続きはしばらくお待ちください!!


作品の励みになりますので、評価・リアクション等をいただけると幸いです。また他短編なども投稿しておりますので、お暇がありましたら読んでいただけると幸いです。

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