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3.アネット・セレナーデ

「私は・・・セレナーデ侯爵家の1人娘として生まれました。両親は私の事を愛してくれました。私も両親の期待に応えようと思い頑張って勉強しました。そのかいがあったかはわかりませんが、私は王太子殿下の婚約者になりました。」

「王太子・・・レグルス殿下の事かしら?それともイザーク殿下?」

 確かあの世界に王太子は2人いたはずだ。どちらが王太子になるかはアネットの行動によって変化する。普通に考えれば第1王子のレグルス殿下が王太子になるはずだ。

 アネットは私の言葉に驚いたようだったが、すぐに納得したように頷いた。

 

「本当に私の事をご存じなのですね・・・。おっしゃる通り、レグルス殿下です。殿下は最初の方は、私の事を大事にしてくれて、私も殿下の事を愛していました。ですが、世間に婚約発表をする日・・・。殿下は私ではなく別の女性を婚約者として発表しました・・・。」

「別の女性を・・・。もしかしてキャリー・クラーク男爵令嬢の事かしら?」

「はい・・・。おっしゃる通りです。」

 レグルス殿下ルートのバットエンドだ。彼のルートは中々面倒で、婚約者になっても油断してはいけないのだ。レグルス殿下は優柔不断で流されやすい。そのため彼の言葉に頷くだけではなく、間違えた道に進もうとした場合は優しくしつつも、体を張って彼を止めなければいけないのだ。

レグルス殿下のルートの中で、キャリー・クラーク男爵令嬢は一番厄介だ。彼女は出会いを演出する。それを繰り返すことによって、彼女は自分がレグルス殿下の運命の相手かのように演出するのだ。そうなったら彼はキャリーにぞっこんになり、アネットには見向きもしなくなる。私も最初に彼のルートをやった時は発狂したものだ。ふざけんな!!こんなやつが王になったら国が滅ぶ!!と。どうやっても攻略できず、結局攻略サイトに頼って進めたのはいい思い出だ。


「頭の痛い話ね・・・。それで貴方は側妃とされたのかしら。」

「いいえ。皆の反対もあり、表向きは私が正妃となり、彼女は側妃となりました。しかし結婚後、すぐに私は離宮に軟禁されました。外に出ることもできず、満足な食事をさせてもらえない日々が続きました。」

「はぁ?何それ。腹が立つ話ね。」

 私が知っているのはゲームの話だ。ゲームの中でバットエンドになった場合、「彼女は冷遇され、悲しみのまま人生を閉じることになりました。」とモノローグが流れて終わりだ。それ以降の話は書かれてはいない。実際はモノローグ以上にひどい生活用だったようだ。


「そして殿下とキャリーさんは王家で散財を始めました。高い税をかけて住民達を苦しめ、2人は贅沢三昧。他の者達は当然諫めましたが、諫めた方はキャリーさんが苛められたとレグルス殿下に報告して、殿下に解雇されていきました。」

「貴方はその話をどこから聞いたの?」

「私にはお付きの人が1人だけいて、その人が色々話してくれました。」

「そう・・・。だけど陛下は?陛下はそんなことを許すようには思えないのだけれど。」

「陛下は・・・私が幽閉された後、崩御されました。」

「!!」

 私は思わず言葉を失った。バットエンドの先はそんなことになるのか。陛下は優秀な設定だったので、てっきりレグルス殿下から継承権を剝奪し、幽閉でもするのかと思ったのだが。レグルス殿下が愚かなのか、キャリーが悪女なのか。恐らくその両方だろう。


「おそらくは・・・・暗殺されたのだと思います。イザーク殿下は原因不明の病で寝込んでいましたが、陛下に続いて亡くなられたと聞きました。こちらも暗殺されたのだと思います。」

「ひどい・・・。」

「それでも陛下が今まで頑張られていたおかげで、国にはかなりの財産がありました。しかし、2人はそれをあっという間に消費していきました。優秀な人は国をさり、残った人間は殿下に媚びを売りつつ、自身の領地で好き勝手を始めたようです。そんな国が持つはずはありません。城下町は貧民街のようになり、民は不平不満を募らせていったようです。そして・・・。」

「そして?どうなったの?」

「私が幽閉されて4年後、民が蜂起し王城に攻めいりました。」

 私は何も言うことができなかった。ゲーム上では他国が攻め入ることができない強固で立派な国。そんな国が4年でそこまでおちぶれるのか。


「そして貴方は・・・どうなったの。」

「私はキャリーさんに身代わりにされました。」

「!?」

「お付きの者が来なくなって数日、いきなり彼女が離宮に現れました。そして私に自分の服を着せ逃げ出しました。最後に「駄目な貴方を使ってやるのだからせいぜい役目を果たしなさいよ」と言い捨てて。」

「ひどすぎる・・・。」

 怒りで叫びそうになるのを必死に堪える。だが、ここで彼女に対して怒りをまき散らしてもしょうがない。何より一番悲しむべきなのはアネットだ。


「そして私はキャリーとして民の前に連れていかれ、殿下と一緒に処刑されました。なんで私がという思いがありましたが、それと同時に思いました。ようやく終われると・・・。」

「それなら・・・何故。」

 何故目の前にいる彼女は少女の姿なのだろう。16歳で婚約が発表されて1年準備期間があったとしても、17歳。そして幽閉されて4年とすれば彼女は21歳だ。だが、目の前の彼女は21歳には見えない。10歳ぐらいの少女に見える。

 アネットは再び涙を浮かべて呟いた。


「処刑された後、気がついたらこの姿でベッドに寝ていたのです。」

「!!」


作品の励みになりますので、評価・リアクション等をいただけると幸いです。また他短編なども投稿しておりますので、お暇がありましたら読んでいただけると幸いです。

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