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4.入学式から一夜明けて

 入学式から一夜明けた。アネットは昨日親に甘やかされたおかげで、メンタルもある程度回復したようだった。そしてレグルス殿下の行動に抗議した件について、早朝に王家から返信がきた。王家として謝罪するとともに彼は当分の間謹慎させるとのこと。その上で復帰したとしてもアネットには絶対に近づかせないようにすると記載してあった。それを見てアネットも私も安心したものだ。

 今日からはレグルス殿下に怯える必要がないので、アネットは嬉しそうだ。昨日のうちに友人もできたので、その人達に会えるのが嬉しいらしい。アネットの両親は心配していたが、私がいるから大丈夫だと説得していた。

 馬車で向かう中、私は昨日と同じようにアネットと会話していた。


(アネット?昨日私が暴れたせいで、教室で好奇の視線を向けられると思うけど・・・。私に変わらなくていいの?)

(はい。大丈夫です。ちょっと不安ではありますけど・・・。レグルス殿下はいませんし、昨日楽しくお話させていただいた人達は大丈夫だと思いたいので。)

(わかったわ。でも耐え切れないと思ったらすぐに言いなさい。私がでるから。)

(くすっ。)

(・・・何?)

(いえ。ノゾミさん。なんだかお母さんみたいだなあって。)

(無理矢理変わって、学校行けないようにしてやってもいいんだけど?)

(わあ!!ごめんなさい!!ごめんなさい!!)

(まったく・・・。)


 そんなことを会話している間に馬車は学校に到着した。アネットは馬車を降りて教室に向かう。

 教室に着くと、やはりアネットは周りから注目をあびていた。だがアネットは表面上は変わらず周りの人に挨拶をして自分の席に着く。私と替わろうかと提案しようとした時、アネットが友人と話していた女生徒2人がアネットに近寄ってきた。


「おはようございます。アネットさん。昨日は大変でしたね。」

「おはようございます。フェラールさん。ええ。昨日は驚きましたわ。」

「でもでも!!素晴らしかったですよ!!殿下相手に一歩も引かず対応していて。殿下が床に突っ伏しているのを見てすかっとしました!!」

「おはようございます。ミランジェさん。そう言っていただけると嬉しいですわ。でもああ見えてあの時は必死だったんです。」

「そうだったんですか?」


 彼女達3人が話していて盛り上がっているのを見て、彼女に向けられていた視線は減り、徐々にアネットの周りに人が集まってきた。視線は、アネットの事が気になっていたからのようだった。王子相手にあれだけの大立ち回りをしたのだ。皆気になってはいたが話しかけづらかったのだろう。


(これなら大丈夫そうね。フェラール、ミランジェ。彼女達に感謝かしらね。)


 私は彼女達の話に耳を傾けながら、万が一に備えて、中からアネットを見守り続けるのだった。

 私の心配は杞憂に終わり、学校の授業は特に問題なく終わって、放課後の時間となった。今日から部活動等の活動に参加できるようになる。部活動は音楽、剣、魔法やダンス等多種多様で、好きなものを選べるようになっていた。家から通っている者達は、時間的に参加できない者達も多いが、寮に住んでいる者達等、多くはどこかに所属するようだった。趣味を楽しみたいという思いもあるだろうが、多くは他生徒との交流、つまり人脈作りが目的のようだ。

 放課後、アネット達もどこの部活に所属するかで盛り上がっているようだった。


「アネットさんはどこの部活動に参加するか決めましたか?」

「まだ悩んでいるんです。フェラールさんは?」

「私は音楽をやりたいので音楽部に所属するつもりですわ。」

「まあ・・・。素敵ですわ。ミランジェさんは決まっているのですか?」

「私は・・・今しかできないから剣を学んでみたいなあと。身体動かすの好きだし。」

「いいじゃないですか!!素晴らしいです!!」

「本当?そう言ってくれて嬉しい。」


 アネットの応援にミランジュは恥ずかしそうに顔を赤らめていた。確かに女性で剣を学ぶ人は少ない。だが決していないわけではないのだ。私のいた世界でも、剣道等の武道を習っていた人はいたのだ。


「じゃあ、私はこれからグラウンドに行ってくるね!!」

「私も音楽室に行きますわ。」

「ええ。フェラールさん。ミランジェさん。また明日。」


 そう言ってアネットは2人と別れた。別れた後アネットは歩きながらため息をつく。部活動について迷っているのだろう。2人が完全に視界からいなくなった後、私はアネットに話しかけた。


(それで?アネットはやってみたいのがあるんでしょ?何がしたいの?)

(!!・・・わかっていたんですか?)

(なんとなくね。それなりの付き合いだから見ていればわかるわよ。さあ白状なさい。)

 

 アネットは最初言うのを躊躇っていたが、私がつつき続けると、おずおずと喋りだした。


(実は・・・。生徒会に入りたくて。)

(なるほどね・・・。いいんじゃない?)

(え?怒らないんですか?)

(まあね。本当は反対だけれど・・・。アネットが自分でやりたいと思ったことを却下するほどひどい人間ではないつもりよ。)

(あ、ありがとうございます!!)

(ただ、生徒会となるとレグルス殿下が入ってくる可能性があるけど大丈夫?)

(う・・・それは・・・。)


 そう。ゲーム内では、レグルス殿下が生徒会に入るルートもあった。アネットがレグルス殿下を生徒会室に連れていき、2人共生徒会に入るのだ。生徒会で一緒に過ごして彼との仲を深める。レグルスルートで好感度をあげる手段の1つである。


(まあ、今のレグルス殿下なら面倒くさがって参加しなさそうだけどね。それに学園ではアネットに近づくなと言われているし、アネットが生徒会に入れば許可されないでしょう。初日にあんな事をやらかしているのだから、生徒会の心象も悪いでしょうし。)

(そうですよね!!きっとそうです!!よかったです!!)


 入学初日にあれだけの事をやらかしたのだ。もう既に情報が回っていることだろう。特に王子だから、こういう噂話は回るのが早い。それにゲーム上でもアネットがレグルス殿下を連れていかなければ、彼は生徒会に興味を示さなかった。心配するのも杞憂だろう。


(まあ、前に話した通り、万が一殿下が来たら私が対応するわ。とりあえず生徒会室に行きましょう。)

(はい!!)


 アネットは嬉しそうに頷くと、生徒会室に向かった。


作品の励みになりますので、評価・リアクション等をいただけると幸いです。また他短編なども投稿しておりますので、お暇がありましたら読んでいただけると幸いです。

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