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1.目覚め

数ある作品から本作品を選んでいただいてありがとうございます。時間がかかるかもしれませんが、完結までいきますのでお付き合いいただけると幸いです。

「ここは・・・。」

 私、佐々木望は目を開けると、目の前には見知らぬ天井が映っていた。状況を把握するために辺りを見渡した。窓の外を見ると日は沈んでおり、どうやら既に夜のようだ。次に部屋の中を見渡した。私がいる場所は、豪華な調度品がある綺麗な部屋の一室だった。その部屋の大きなベッドで私は眠っていたらしい。身体を起こしてベッドから降りる。部屋の中に置いてある鏡に近づき、自分の体を見つめる。金髪の髪に可愛らしい少女の姿がそこにはいた。佐々木望の姿ではないが、この姿には見覚えがある。


「この姿・・・。“アネット・セレナーデ”の体よね。」

 この姿には記憶がある。ゲーム、「恋する乙女の冒険物語」の主人公だ。私が20代の時、仕事が辛くて現実逃避でやりこんでいたゲームのキャラクターである。このゲームは恋愛シミュレーションで恋人候補は7人と多いのだが、恋愛以外の要素も多いのが特徴だった。恋人候補と関係を進めずに生きる事ができ、誰かと結婚しなくてもゲームオーバーにはならないのだ。そのため、剣や魔法を極めて、冒険者として名をはせる、知能をあげて事務員として仕事に生きる等、好きな人生を歩めるのだ。さらに周回プレイも可能で、周回する毎にステータスを一部引き継ぐことができる。そのため周回すればするほどステータスが増加し、無双することができるのだ。私はゲームでは恋人候補を一通り攻略した後、基本は独身で生き、様々な人生を謳歌して楽しんでいた。

 しかし、その“アネット・セレナーデ”に自分がなるとは思わなかった。


「まさかあの時の事が夢じゃないとは・・・。」

 私が彼女の姿になったということは、この世界に転生したということだろう。漫画やゲームなどで異世界転生ものはたくさんあったが、まさか自分がなるとは思いもしなかった。思わずため息をつく。

 しかし、このままこうしていてもしょうがない。私は部屋の中を調べ始めることにした。部屋に置いてある本を開いて中を読もうとしてみたり、クローゼットの中を調べてみたりした。そこで1つの事実に気がついた。どうしようかと考えていると遠くからバタバタという足音が聞こえてきた。足音は部屋の前で止まると、大きな音を立てて部屋の扉が開かれた。


「お嬢様!!」

 部屋に来たのはメイドの1人だ。アネットとも仲が良いメイドで、名前はエルだったはず。私の姿を見ると涙を流して私に飛びついてきた。


「お怪我はございませんかお嬢様!?大丈夫ですか!?」

「ええ。大丈夫よ。心配かけてしまったわね。」

「本当に!!お嬢様がいつも通りに起きたと思ったら取り乱されてそこのバルコニーから飛び降りられたのです!!偶然木の枝が折れて落ちており、その上にお嬢様が落ちたので怪我が少なくて済みましたが、下手をしたら、命を落としていたのですよ!!」

「・・・とりあえず、言葉は通じるようで安心したわ。」

「?」

「何でもないわ。」

 言葉が通じない等はなさそうで心の底から安心した。いきなり違う言語で話し始めたら頭がおかしくなったと思われるに違いない。アネットのためにそれは避けたかった。


「お嬢様?まだどこか痛むのですか?」

「何でもないわ。もう大丈夫よ。それよりもお父様とお母様はまだ起きていらっしゃるかしら?心配をかけてしまったから謝りたいの。」

 エルはその言葉に2人の事を思い出したようで、慌てて頷いた。


「はい!!お二人とも起きていらっしゃいます!!今すぐ呼んで来ますね!!・・・でもお嬢様。」

「何かしら?」

「本当にもう大丈夫です・・・よね?私が離れた時にまた飛び降りたりしませんよね?」

「神に誓ってしないわ。それに窓は開けられないようになっているじゃない。」

私はエルを安心させるように彼女に向かって笑いかける。

部屋のバルコニーに出る扉は、開けられないようにノブをロープで止められていた。飛び降りるのを防ぐためだろう。


「信じますよ!!これからお二人を呼んで来ますが絶対に部屋にいてくださいね。」

「ええ。だからお願いね。」

「はい!!」

 私が頷くとエルは慌てて部屋を出ていった。よほど嬉しかったのだろう。扉を開けっ放しで走り去っていった。

いきなりの異世界転生だが、波乱の幕開けのようだ。だが混乱は少ない。何故かというと・・・。


「アネット・・・。いるわよね。」

(・・・はい。います。)

 自分自身に語りかけるように話しかけると、頭の中で声が聞こえた。そう。この身体の中には、元の人格がまだ中にいるのだ。


作品の励みになりますので、評価・リアクション等をいただけると幸いです。また他短編なども投稿しておりますので、お暇がありましたら読んでいただけると幸いです。

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