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第七章「神界布告と“第四の標的”」

空が揺れていた。


青空の中心が、静かに“ひび割れ”始めているのに気づいた者は少ない。だが、それは確かに世界の“法”が書き換えられる前兆だった。


王都セイグレムの大聖堂――《神律院》。

最高司祭である〈白炎の神官〉ラオ・セリフィウスは、神界からの啓示を受けていた。


「異端存在――ユウト・メタルスライム」


神の声は、冷徹だった。


「彼の存在は神律に背き、輪廻の枠外に逸脱せしもの。我々はそれを“神の外側にいるもの”と定義する」


「布告する。“神界の鎖”を解き放ち、“聖鎖術士”を降ろす」


ラオは目を見開く。


「……本当に、第四界の鍵を開くおつもりか。あれは、“神殺し”にすら通じる……!」


だが声は静かに告げた。


「“名を持たぬ存在”は、神々を脅かす。ゆえに、この世界の均衡を保つため、“聖鎖”で縛らねばならぬ」


天が割れる。


その瞬間、王都の空が“銀の鎖”で満たされた。空から降りてきたのは、鎧を身に纏った少女――いや、神の器そのもの。


「我が名は――ミリア=カテリナ・イェルナス。第七聖鎖術士、“神界の杭”なり」


地上に降り立ったその少女の一瞥で、半径百メートルの聖堂兵が沈黙する。彼らの心臓は、神の力によって止められていた。


……


一方その頃――


ユウトは黒渓谷を離れ、南の古代遺跡“エルヴェ=サグラの塔”へ向かっていた。そこに、第四の標的――神に魂を売った異端の神官〈カルゼ・ユイア〉が潜んでいると知ったからだ。


「……この世界の“信仰”ってやつが、どれだけ偽善的か。確かめてやるよ」


静かな声とは裏腹に、ユウトの中では銀の力が蠢いていた。


すでに彼の身体は、完全に“物理干渉”を受けつけなくなっていた。剣も魔法も、その皮膚を通さない。むしろ、触れたものを“構造崩壊”させる能力へと昇華しつつあった。


その足取りは、人間の遺した大罪を一つずつたどる巡礼のようでもあった。


そして――


エルヴェ=サグラの塔、頂上。


神官カルゼが祈りを捧げる中、銀の渦が現れる。


「……来たか。死に戻りの怪物」


ユウトは姿を現す。


「いや、もはやお前たちが“怪物”に見えるよ。何百回も俺を殺し、笑っていたくせに、神の名を借りて生き残ってる」


カルゼは肩をすくめる。


「必要な犠牲だった。我々は世界の“均衡”を守るために、魂を削った。お前のような外道が、なぜそれを非難できる?」


ユウトは歩みを止めず、ただ淡々と呟いた。


「俺は、均衡なんかどうでもいい。ただ――“その時に笑ってた奴”を、順番に殺していくだけだ」


カルゼが神律詠唱を完成させる前に、ユウトはただ目を合わせただけで、その“神法陣”を崩壊させた。


構成文字がねじれ、空間が歪み、塔そのものが崩れる。


「お前は――もう“祈れない”。神はお前に、背を向けた」


カルゼの断末魔が消えると同時に、空が震えた。


――銀の杭が、空から落ちてくる。


「……ユウト・メタルスライム。神の名を持たぬ者よ。汝に“拘束”を告ぐ」


ユウトが見上げると、そこにはミリア=カテリナが浮かんでいた。


「ようやく……“神界”が直接、動いてきたか」


そして、初の“神の器”との戦いが幕を開ける。


それはもはや、冒険者との戦いではない。


世界と、法則と、運命そのものとの戦いだった。


第二部構想案:「神を超える意志」

サブタイトル:

『超法則体ユウトと魂の継承者たち』


あらすじ:

第一部で“神の外側”に到達したユウトは、完全な個体として神界から認知され、以後は“存在災害”として歴史に残る。


だが第二部では、ユウトに共鳴し、世界の矛盾に気づいた若者たちが現れる。


彼らはそれぞれ、“虐げられた存在”――獣人奴隷、穢れた血族、反逆者の末裔――といった、歴史の闇に葬られた者たち。


彼らはユウトの復讐に“意味”を見出し、「彼の剣になる」「彼の目になる」「彼の声になる」と誓い、“継承者”となる。


やがてユウトの“存在そのもの”は、複数の意志と共鳴し、「一なる神を否定する、多心の意志体」へと進化する。


この時、神界は最後の切り札、“神自身の降臨”を試みる――


しかし、そこにはかつて神だった者たちの「屍山血河」が立ちふさがる。

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