第一章 蘇る怒りのスライム(前半)
深夜の森に、一つの銀色の影が音もなく滑るように進んでいた。
「……この森、ダークウルフが多いって噂だったけど……いないな。まあ、今の俺にはちょうどいい」
転生直後より比べて、悠人の姿は少し変わっていた。幾度も殺され、蘇る中で、彼の肉体は少しずつ「進化」していたのだ。
【スキル獲得:精神耐性 Lv5】
【スキル獲得:痛覚抑制】
【称号:蘇りし者】
さらに、悠人には他のスライムにはない特異な能力が備わっていた。
「スキルコピー……この力があれば、奴らの力を奪える。あとは、力を蓄えて……一人ずつ“狩る”」
彼が最初に狙ったのは、“レオン”という若き冒険者だった。
筋骨隆々で、剣術にも優れた男だったが、悠人を「経験値袋」と呼び、笑いながら斬り殺していた記憶は鮮明だ。
レオンは今、町の傭兵団に所属し、酒場で豪遊していた。
「次の依頼? 楽勝だって。あのスライムで一気にLv20まで上がったからな!」
その夜、レオンの部屋には音もなく何かが忍び込んでいた。
銀色の滴が、天井から静かに垂れ――
「が、あ……!?」
悲鳴が響くことはなかった。メタルスライムに進化した悠人は、新たに得た【神経毒生成】スキルで、レオンの動きを一瞬で封じたのだ。
「久しぶりだな、レオン。俺を覚えてるか?」
床に倒れたレオンの耳に、確かに“声”が届いた。スライムのはずの存在が、言葉を話したのだ。
「お、前……は……!」
「ようやく思い出したか。俺は……お前に百回は殺された。だから、これから百回――お前を殺す」
復讐が始まった。