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第十章 魂の継承者たちの集結と世界の境界崩壊

――王都から数百キロ離れた荒野の縁。深夜の闇が広がる中、微かな灯りが点在していた。


その一つ、岩壁の裂け目を利用した古びた洞窟。そこには既に十数人の者が集っていた。


獣人、魔族、元冒険者、流浪の魔術師、そして一人の少女――グレイ。

彼らは皆、ユウトの“銀の意志”の痕跡を辿り、それぞれの過去の呪縛と怒りを胸にここに集ったのだった。


「……ここが、あの“銀の痕跡”の発生源か」


魔術師のレイナが魔法陣を描きながら呟く。


「ただの粘体生命体の域を超えてる。存在としての波動が複雑すぎる」


グレイは無言でうなずいた。


「奴は、単なるメタルスライムじゃない。あいつの魂は、何度も殺されては蘇った過去の怨念、未来の可能性、全てを飲み込んで強くなっている」


「だが、なぜ我々に呼びかけた?」


獣人の戦士カイルが鋭い目で周囲を見渡す。


「答えは単純だ。奴は一人じゃ世界を変えられない。だから“継承者”を探し、共に戦う意志を求めているんだ」


その時、洞窟の奥から銀色の光が差し込んだ。


「来たか」


静かな声。ユウトが現れた。


彼の身体はかつてのメタルスライムの面影を完全に消し、まるで生ける銀の戦士のように光っている。


「お前ら……ようこそ、俺の仲間たち」


ユウトの声には揺るがぬ決意が宿っていた。


「俺は“世界の鎖”を断ち切るため、ここにいる。神界の意志も、冒険者の暴虐も、俺たちには関係ない。俺たちの新しい意志だけが、世界を変えるんだ」


レイナが魔法陣の完成を告げ、周囲の空気がざわめいた。


「俺たちは、あらゆる抑圧に屈してきた。だが、もう終わりだ。奴の意思を継ぐ者たちよ、共に戦い、新たな時代を創ろう!」


カイルが力強く拳を握る。


「俺たちは、長い間鎖に繋がれていた。だが今、その鎖は切れた。これからは、俺たちの意志が世界を動かす」


グレイは仲間たちを見渡し、力強く言った。


「……この銀の意志が新たな希望になる。俺たちの復讐は、ただの破壊じゃない。未来を繋ぐ架け橋なんだ」


ユウトはふっと微笑む。


「これが、真の始まりだ」


――


その時、世界の裂け目が響くような轟音を上げた。


空間の壁が歪み、闇と光の境界線が崩れ始めていた。


「神界の封印が崩れ始めている!」


レイナが叫ぶ。


「これは……世界のバランスが大きく揺らいでいる証拠。封印が解ければ、神々の力が直接現世に降り注ぐ」


「……それは、恐ろしいことになる」


カイルが顔を硬くする。


「俺たちが戦う理由はただ一つ。世界が神々の暴走で滅びるのを防ぐためだ」


ユウトは洞窟の出口へ向かい、夜空を見上げる。


「これからは、俺たちの“銀の意志”が世界の新たな扉を開ける。どんな未来が待とうと、俺たちは逃げない」


闇の向こうから、まばゆい閃光が天を裂いた。


それは神界の力が現実世界へと波及し始めた瞬間だった。


彼らは立ち上がった。新たな世界のために。


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