プロローグ
「……死んだのか、俺」
山澤悠人、35歳。ブラック企業に勤め、週6勤務・残業月120時間の末に過労死したサラリーマン。目が覚めた瞬間、彼は自分が金属の身体とぬるりとした感触を持つ奇妙な生き物に転生したことに気付いた。
「……スライム? しかも、銀色……?」
彼は【メタルスライム】として異世界に転生していた。身体は小さく、攻撃力もないが、圧倒的な防御力と逃走能力、そして――「経験値ボーナス」という忌まわしい特徴があった。
それゆえに、冒険者たちは彼を狩る。「倒せばレベルが上がる」と、目を輝かせて。
捕らえられた悠人は、牢に入れられ、日々何度も斬られ、焼かれ、砕かれた。だが、彼は死ななかった。なぜなら、冒険者ギルドは蘇生魔法で彼を生き返らせ、再び殺すという“無限周回”を行っていたからだ。
「……これが、異世界転生ってやつかよ……ふざけんな」
気が狂うほどの地獄。苦痛と絶望の連鎖。だがある日、偶然の事故で牢が崩れ、悠人はついに逃げ出す。
自由を得たメタルスライムは、かつての冒険者たちの名をすべて記憶していた。
「俺を殺し続けた連中……一人残らず、地獄に落としてやる」
かくして、最弱のはずの魔物が、異世界最恐の復讐者となる。