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年下王子の重すぎる溺愛  作者: 文月 澪
第3章 乱舞
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第43話 報いるために

 やっと殿下、改めアルの腕の中から抜け出すと、脱ぎ散らかされていた寝衣(ガウン)を拾い上げ身にまとう。極薄だけれど、無いよりましだろう。しかしアルは、そんな私を楽しそうに眺めている。


「うん、そういうのもいいよね。隠されているのって、逆に唆るって言うか……ドレスの裾から足首が見えるの僕好き。あ、勿論リリー限定だから勘違いしないでね。透けてるのも色っぽくて、誘ってるようにしか見えないよ? それを今更着るのって逆効果じゃないかな」


 揶揄(からか)うよう弾む声に、私は固まった。昨夜は緊張で、よく自分の姿を確認していなかったけれど、見下ろす体には赤い跡が無数に散っている。寝衣(ガウン)の上からでもしっかりと《《それ》》が見えるという事は……。


 不安に駆られそっと腕を上げると、想像以上に見えてしまっていた。


「こ、これ……な、嘘……!?」


 なんとか体を隠そうと辺りを見渡しても、そんなものがある訳もなく、布団に逆戻りした。頭まですっぽりと被り、体を丸めるとアルの腕が優しく包んでくれた。


「ほんと、可愛いんだから。もう隅々まで見られてるのに、隠す必要なんてないでしょ。それに、中に入ると僕のが見えちゃうよ? 名残りなんかも……ね」


 アルの言うように、目の前には昨夜私を蹂躙(じゅうりん)した《《もの》》が。それから目を逸らすと、今度は赤い血痕が目に入り嫌でも記憶を引きずり出す。さっきも触られて戻ってきていた熱が更に増していく。


 しかたなく、もぞもぞと布団から目だけを出すと、アルと視線がかち合った。にんまりと笑う最愛の人は、年相応の無邪気さだ。それでも、昨夜だけでどれほど私を想ってくれているのか分かった。


「アル、ずるいです……」


 むくれながら文句を言うと、また可愛いの連発。この方は、どれだけ私を甘やかせば気が済むのだろう。

 

「アルも、可愛いですよ? もっと甘えてくれていいんですからね? 政務も忙しいとは思いますが、私と一緒の時くらい、子供に戻っても……」


 私が言いかけると、今度は不機嫌に眉を寄せた。


「リリーにとって、僕は子供なの? 昨夜の行為だけじゃ、まだ足りない? それなら分かるまで教え込まないとね」


 そう言って布団をはがすと、自分の裸体をこれでもかと見せつけてくる。逞しく引きしまった体と、猛った《《それ》》が迫ってきて、私は首を振った。


「ち、違います! 殿下、じゃないアルはいつも頑張っておいでですから、私といる時くらい、ゆっくりしてほしくて……こんな、その、こちらも頑張ると体が心配ですし……」


 しりすぼみになりながらぽつりと呟くと、何故か顔を覆うアル。深いため息を吐き、私にのしかかってきた。


「もう、なんでそう可愛い事言うかな。あのねリリー、よく聞いて。僕はね君と一緒にいるために頑張ってるんだ。はっきり言うと、政務なんて面倒くさいし、国民もどうでもいい」


 突然の告白に、私は呆気に取られてしまう。あんなに陛下や騎士団長と協力して、戦にも臨んでいたのに、それがまさか面倒くさいだなんて。間抜けな私の反応にも、アルは苦笑いで応え、更に続ける。


「でも君は違うよね? 領民を大切にするし、実家であるフェリット伯爵家の財務も、一生懸命に考えてる。そんな君に相応しくあるためには、善政を心掛けるべきだと思うんだ。報告でも聞いてるよ。僕が出征している間も、貴族院や教会に働きかけてくれてたって。父上や母上、妹達とも積極的に交流してくれていたみたいだしね。みんな喜んでいたよ。いいお嫁さんが来てくれたって」


 あまりにべた褒めされて、少し(おも)はゆい。


 でも、と私は控えめに口を開く。


「それは私がしてもらった事ですもの」

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