104話:それは罰? ご褒美?
ティータイムがようやく終わり、ロディから解放された!
今日、到着したばかりなので、ターニャに呪いをかけた犯人捜しは明日からとなったが。
ロディのおしゃべりに付き合うなら、私一人でも動けばよかったと思わずにいられない。
そしてこの後の夕食会。
ロディと席が離れることを願うばかり。
「サラ、苦手なんだろう?」
ティータイムの後。
滞在先となる客間に向かうにあたり、ロディのエスコートは断り、ホークにお願いした。
ロディは王宮に戻るが、ホークと私は宮殿の客間に行くのだ。
目指す方向が真逆ですよね、ということで私なりに上手いこと逃げ切ったつもりだった。
その私にホークが尋ねたのだ。ロディが苦手なのだろう、と。
「苦手。そう、その通り。ランスも可愛がっているのが分かるし、悪い子ではないと思うの。無邪気なだけ……なのでしょう。無邪気で無自覚なだけに、キツイわ。今はとにかく魔法を使いたくて仕方ないのでしょうね」
「まー、十六歳だろう? そういう年頃なんだろうな。殿下と比べると、かなりガキだよな、ロディは。でも義弟になるんだから、しゃーないよな。仲良くしないと」
「うっ。分かっているわ。努力する」
こうして客間につくと、メイドさんがすぐにやってきて、イブニングドレスへ着替えることになる。それを機に、一旦、ロディのことは忘れることにした。
夕食会で着るのは、アイスブルーのグリッター生地のドレスで、スカートにはビジューレースが重ねられている。銀糸で大小の雪の結晶が刺繍されており、冬ならではのデザインだ。
ランスにもらったパライバトルマリンのネックレスとイヤリングは持ってきていたので、それをつけることにした。髪はアップにし、ドレスの生地と共布のリボンを飾ってもらう。
着替えが終わったところで部屋には、ターニャをエスコートしたホーク、そしてランスが来てくれた。
ターニャは光沢のある黒のシルクのドレスで、体にフィットしメリハリがあるデザインだ。ホークも黒のテールコートなので、二人が並ぶとバランスが取れている。
ランスはというと。
白に近いライトシアン色のテールコートで、ベストとタイが差し色でスカイブルー。宝飾品はホワイトゴールドで統一され、マントは白。彼のブロンドと碧眼に映える、大変素敵なカラーチョイスだった。
「サラ、今日のドレスもよく似合っていますね。何よりも僕の贈った宝飾品をつけてくれて嬉しいです」
碧い瞳をキラキラさせて私を見るランス。
それをされると今、世界でランスと私の二人きり――というモードにすぐ入りそうになる。そうなると、ぎゅっと抱きつきたくなるし、キスもしたくなってしまう。
「殿下、行かないのか?」
ホークが現実に戻してくれる。
「行きます。ではサラ」
優しく名を呼ばれ、ランスのエスコートで部屋を出た。
廊下が広々としているので、四人で並んで歩ける。
するとターニャがこんなことを言い出した。
「私への罰として、国王陛下から提案されたのは、王室付きの魔女になることでした」
これにはホークと私が「えっ」と驚くことになる。
ランスはどうやら既に知っていたようだ。
「王宮付きの魔女。それって破格の待遇では!?」
ホークの問いにターニャは頷く。
「ソルモンが魔法の塔に籠りがちだから、王宮に部屋を与えるからそこで暮らすようにと言われました。給与も文句なし。……これって罰なのかしら?」
「人間と権力を嫌う魔女からしたら、罰だと思います! ですが私は賛成です。ターニャさんのような強い魔女がいてくださると、心強いですもん!」
私が思わずそう言うと、ターニャは嬉しそうに目を細める。
「そう言ってもらえると嬉しくなるわ。でも既に王室付き魔法使いがいるのに、魔女も必要かしら?」
「関係ないと思います。ソルモン様は魔法の塔に引きこもりがちと聞きましたし、それに王都にいれば、マーク団長とも会えますよ! ちなみに仕事一筋で不器用なマーク団長は、いまだ独身だそうです。年齢は現在、二十四歳」
ターニャが王室付きの魔女になりたくなるよう、畳みかけてしまう。
マークのことを気に入っていると言っていたので、彼の情報まで開示して。
やはりベテラン魔女がそばにいてくれることは、本当に心強いと思う。さらに同族、同じ魔女が近くにいることも、頼もしいと思うのだ。ソルモンもいるが、彼は魔法使い。しかも人付き合いより研究タイプ。私に関心もあまりなさそうだし、お茶会に誘っても「忙しくて」とあっさり断られそうだった。
そんなことを思うにつけ、ターニャにはぜひ王室付き魔法使いになってもらいたい!
「そこまで未来の王妃様に請われたら、受けるしかないわね、罰を」
「はい、罰を受けてください!」
そんな会話をしているうちに夕食会の会場となる“美食の間”に到着した。
バトラーが扉を開け、中に入ると、既に国王陛下夫妻とロディが着席している。
これには焦るが「これはあくまで私的な食事の席です。それに父上達が主催なので、気を遣い、先に着席していただけです。気にしないで大丈夫ですよ」とランスに言われ、席に着く。
国王陛下夫妻が私と話したいということなので、二人の対面にランスと私で並んで座ることになった。私の隣にホーク、ターニャ。ホークの対面にロディが座っている。
「それでは家族水入らずでの夕食としよう。まずは帰還を祝い、乾杯だ」
国王陛下がグラスを掲げた。
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次回は「第105話:お楽しみの時間(1)」です。
国王陛下夫妻とロディとの夕食会が始まります!






















































