101話:謁見
謁見の間にランスにエスコートされ、向かうことになった。
ターニャはホークがエスコートしている。
ランスはセレストブルーのフロックコートを着て、パールホワイトのマントを着用。その姿はまごうことなき王子様でとても神々しい!
ホークは黒のフロックコートで、全身が引き締まって見えて大変ハンサム!
こうして謁見の間に向かい、中に入ると国王陛下夫妻は玉座に座り、そのそばに青年が一人控えている。これがランスの弟だろう。その他に宰相ほか重鎮たちが揃っている。
まずはカーテシーで挨拶を行い、国王からの言葉を賜る。
「ランス、よくぞ無事に戻った。まさか宿敵を倒しに向かったはずが、こうやって連れ帰るとは。何があったのか、報告するといい」
国王キーファー・エドワード・エヴァレット。
金髪に碧眼で、口ひげがあるが、なければランスにそっくりかもしれない。
アラフォーというがアラサーぐらいにしか見えなかった。
ブルーのフロックコートに白いファーのついた濃紺のマント、そして頭上には黄金と宝石でできた王冠。若々しい国王だった。
かの国王に問われたランスは、ターニャをこの地へ連れ帰ることになった経緯を分かりやすく話して聞かせた。その際ターニャは、呪いを受けていたとはいえ、多くの間違った行動をとったことを心から詫びている。
「なるほど。“クピドの矢の呪い”なるものがかけられていたと。それは……それならば仕方なかったのか。それでも多くの女性が石像に変えられ、彼女たちの両親から抗議の声が届いている。魔法を解いたとしても、彼らの怒りは収まらないだろう。こうなると……北の魔女に呪いをかけた、魔女なり魔法使いを見つけ出さないとならないな」
そこで国王は宰相ら重鎮たちの方へ視線を向けて問いかける。
「ソルモン。どうであろう。“クピドの矢の呪い”なるものを扱う魔女や魔法使いに心当たりは? ああ、紹介しよう。こちらは王室付き魔法使いのソルモン。普段は魔法の塔に籠り、滅多に姿を見せない。ランスもロディも初めて会ったのでは? 実は二人とも赤ん坊の時にソルモンに会い、祝福を与えてもらっているが、まあ、覚えていないだろうな」
王室付き魔法使い、ソルモン。
銀髪の長髪で、長身。瞳の色は銀色。その眼光は鋭く、年齢はランスよりやや上に見えるが、圧がある。明るいグレーのローブの下は、濃いグレーのフロックコート。
魔法使いらしく、黒曜石が埋め込まれた自身の身長に等しい杖を手にしていた。
彼はニコリと笑うと国王の問いに応じる。
「“クピドの矢の呪い”は、力のある魔法使いや魔女であれば、比較的扱いやすい呪いです。よってこの呪いの名称だけで、特定は難しいと思われます。この場にいる二人の魔女も、“クピドの矢の呪い”が使えるのでは? 北の魔女ターニャ殿、王太子殿下の婚約者であるサラ殿、どうですか? わたしは使うことができますが」
この問いにターニャは「必要に応じ、使用は可能です」と答え、一方の私は……。
「未熟者ゆえ、呪いに関しては分からないことが多く……何とも申し上げられません」
私の答えを聞くと、ソルモンは「王太子殿下の婚約者の魔女殿は、実に初々しいですね」と口元に微笑を浮かべる。
「ソルモン、サラは誰かを呪うような魔女ではありません」
ランスが私を庇うようにそう言うと、国王はこのように言って締め括る。
「いずれであれ、“クピドの矢の呪い”を行使した魔女なり魔法使いを見つける必要がある。この件に関してはソルモンの協力を得て、ランス、サラ、サラの使い魔であるホーク、そして北の魔女ターニャで犯人捜しを行うように」
「父上」
声をあげたのはロディ・チャールズ・エヴァレット。
ダークブラウンの髪にグリーンアイのランスの弟であり、第二王子。
王妃がダークブランの髪にグリーンアイなので、第二王子は完全に母親似だった。
エメラルドグリーンのフロックコートに黒のマントを身に着けたロディは、こんな提案をする。
「ボクも協力します。兄上のために」
「まあ、ロディ素晴らしい心掛けね。あなたは本当に優しい子だわ。陛下、よろしいですわよね、ロディがランスを手伝っても」
王妃が問うと、国王陛下は笑顔で応じる。
「ああ、構わぬ。兄想いの良き弟だ」
ロディは笑顔でランスを見て、ランスも「ありがとう」という表情になっている。
以前、ランスが言っていた通りで、仲が良い兄弟なのだろう。
「犯人捜しとは別として。呪いをかけられていたとはいえ、ターニャがしたことをなかったことにはできない。相応の罰も与えることになるだろう」
それに関してターニャは異論がないようだ。
北の魔女として他の魔女や魔法使いから“クピドの矢の呪い”を受けたことはまさに不覚。だが本人は迂闊だったと思っていそうだ。
「今回の騒動の件はランス、今、口頭で話したことを含め、すべて書面にして提出するように」
「御意」
「騒動もそうであるが、もう一つ重要なこと。それはランス、お前の婚約者だ。今日初めて顔を合わせた。本当は昼食を共にしたいが、会議がある。そこで今晩、家族での夕食会を開くので、そこでゆっくり話そうではないか。なあ、サラ」
そう言って国王陛下が柔和に微笑むので、嬉しくなってしまう。
国のトップとして、犯人捜しを命じ、ターニャに罪を問い、ランスに報告書を求めた国王であるが。今、見せた笑顔は父親としての一面だと思う。
しっかり者の素敵なお父さんだ。
「ひとまず王太子の帰還とサラへの爵位授与、婚約者確定を発表する舞踏会は、十日後に行うよう、準備を進めよう。以上だ。ランスは残り、わしと打ち合わせだ。ソルモンはターニャを、石像を安置した部屋に案内するように。ターニャ、魔法を解除するように」
「かしこまりました、陛下」
ターニャが返事をした後、国王陛下が私を見た。
「サラとホークは……」
「父上、僕がサラ様とホーク殿を案内しますよ。まずは宮殿を」
そう声を上げてくれたのはロディだ。
国王陛下はこの提案を喜び、ランスも私を見て「サラ、ホークと一緒に弟に案内してもらうといいよ」と微笑む。私も笑顔で応じ、この後、それぞれがすべきことが決まった。
お読みいただき、ありがとうございます!
最終章がいよいよスタート。
次回は「102話:ボク、嬉しいです」です。
ロディはなんだか積極的な様子。
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