幻の
ララララララ
イースの頭上の枝に鳥がとまっていた。
白い影が飛び立ったのを見た。
「うわーまただー」
「もうちょっと悔しそうにしてよ。盛り上がらないじゃん」
暗い広間で二人は遊んでいた。
町の人にも聞いてみることにした。
エルと、もう一人。仮面をつけていた。仮面をつけている者はいないわけではないが、顔を覆うものは珍しく、白の目立つ外套も印象に残りやすかったのか情報自体はあった。わかったのは、昨日バフスの町に来て、今朝宿を出たのが最後。昨日は通りを何も買わずフラフラ歩いていたらしい。
足跡をたどっているような感覚だった。目立つところにあるのに、途切れ途切れな。近づいている気もしない。肝心の行動の詳細は全くつかめなかった。
「ちょっと出かけてくる」
「今度はいつまで?」
「わかんない」
「...適当にごまかされるよりマシか」
「珍しく報告したしいいんじゃない?どうせ止められないけど」
「ありがとう!お土産にパフカッタ氷味買ってきてあげる。全員分!」
四人全員からやめろと言われて上機嫌で研究所を後にした。
翌日、5人はバフスの町を北へ向けて出発した。
「あとは...この近くに遺跡ってあるかな?」
「なかったと思う。イルテラの向こうに古いのはあるけど」
「それくらいですかね。そこも行ってみましょうか」
「トワはどこの出身なの?」
「メウナク」
「...わからん」
「どこだっけ」
「イジモの北の町です」
「それもわからない。なんか変わった名前だなーと思って」
「言われてみればそうかもな」
「最近変わった名前によく会う気がするんだよねー。イヴとかも若干発音しづらい」
「そうですか?」
「アタシはエルも最初噛んだよ」
「あれは食いながらしゃべろうとするからだろ」
「その服は?たまに商人が着てるのと似てるけど。こっちで買ったの?」
「古いやつが着れなくなったんだ」
「そんな黒いのは初めて見た」
「レタはその服装暑くないですか?」
「だめだよレタは。真夏でもずっとこうだから。暑いとかないの。どっかおかしいんだよ」
「お前には言われたくない。一年中同じのだろ」
「どっちもやばい」
歩いているうちに曇ってきた。
リアがなにかを見つけた。地面にしゃがむ。
「?」
鳥の羽根だった。
「ゼルドでしょうか」
「これが?」
ゼルドは世界中に広く分布しているが人前に姿を現すことはほとんどない。実際に見たことのある者は少ない。
「...みんな何色に見える?」
その羽は見る者によって違って見えるといわれている。
末路を示しているというものや、鏡鳥という異名の由来になった見る者の魂を映すというものなど、珍しいだけに様々な伝説がある。
リアは黄、ルカは赤、レイは青、イヴは灰に見えた。
「トワは?」
リアが羽根を顔の前に持ち上げて見せる。
「...黒い」
「バラバラじゃん」
リアが笑う。結局どういった仕組みなのかもわかっていない。
「これって持っていっていいんだっけ?」
「問題ないと思います」
リアがカバンから空瓶を取り出し、羽根を入れる。
「なんだろあれ」
ルカが右手側を指さす。
「村かな。ちょっと大きい?」
その近くにゲマードの影を見つけて全員で近寄る。
「今度は気のせいじゃなかった」
飛び立った相手にレタが素早く弓で狙いをつけて射つ。首に掠って空中で体勢を崩したゲマードの胸を球状の弾が貫く。
「...やるじゃん」
「よかった」
杖を下ろしてリアが言う。
「...誰もいない」
村のほうをみていたトワが呟く。
ゲマードが音もなく落ちる。色を失ったそれは、やがて陰に溶けるようにして消える。
誰のためだと思っているか