知らないこと
Who are you?
「竜って、あの昔話にでてくるような?国を滅ぼせるっていう?」
「?まいいや。多分それ。それがね、すぐにいなくなっちゃったの。協会所属の狩人で予定がない人はみんなで探すことになってる。アタシらは所属してないけど。北に向かってたように見えたからエルの話にも出てきたこの町に来た」
イヴとトワがちらっと顔を見合わせる。
「みんな知ってたならもっと早く言ってよ」
「ニュースでやってたでしょ。知ってたのかと思った」
「見てないんだってば」
「新聞は?」
「読んでないんだってば」
「誰か噂してなかったの?」
「今日誰とも話してないんだってば。昨日野宿」
「お腹空いてる?お昼にしない?」
リアがわざわざ走って戻ってきて言った。
「結構話題にはなってるみたいだけど、誰もどこに行ったのかは知らないみたい」
「相当でかかったぞ。見失うもんかな」
「しばらくはここで情報収集かな」
竜に関して有名な話はいくつかあるが、古いものだからか人によって違う。
「スェトナが一度滅ぼされたのは?」
「知ってる」
「テドムの大火事は?」
「知らない。竜なのそれ?」
噛み合わない。
「どうした?」
トワがイヴに訊く。
「何か大事なことがあった気がするんですけど。思い出せません」
翌朝、出かけていたリアが血相を変えて帰ってきた。
「みんな揃ってる?」
「はい」
「おはよう。早いんだね」
「軍のやつに聞いたらさ、イルテラの近くで目撃情報があったって」
「そんな話聞いていいものなの?公表されてないんでしょ?」
「前に助けたことがあってね...ってそれはいいから聞いてよ」
「いや...アタシらが見たやつに翼なんてあったっけなと思って」
リアの問いを受けてルカが言って、レタも頷く。
「町の上を飛んでったのを見ただけだけど、なかった気がする。体が細長くて、翼というより鰭だったな」
「鶏冠というよりあれは棘かな。頭の横とか背中に何本も」
「そんなん全然聞かなかったな」
「...ここまで違うことあるか」
「軍の情報がそんな間違ってるとも思えないんだけどな。どっかで食い違ったのか」
しばらく考え込んでいたイヴが口を開く。
「イルテラにでたのが怒じゃないですか?」
「「...?」」
「2人がフフトナで見たのが妬...」
そこまで言ってイヴは3人が首を傾げているのに気付いて言葉を切った。
「たしか...ヴェアレアですよ」
3人が顔を見合わせて再びイヴに向ける。誰も納得した顔をしていなかった。
そばで黙って聞いていたトワを見る。
しかしトワもまた、珍しくも困惑した表情を浮かべて、イヴを見ていた。
No, it isn't mine.
There are so many――