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天地の変  作者: 匹々
顛痕の章
49/55

まだ最初だから

「これ本当に一回しか使えないの?」

逍喧の声にマホが口を開く。

「私も使ったことはなかった」

「ないの?」

「最終手段だよ。対象も指定できないし」

「へえ。あまり面白いものじゃないね」

気を失ったローチェを連れて逍喧が去る。それを黙って見送るしかなかった。

「マホ」

ユーリがマホを呼んだ。

「さっきの何?」

マホが逍喧の投げ捨てた機械を拾う。

「パミレー。丁軍の者が装備している兵器だ。周囲の人間の魔力を一時的に奪う」

「人間だけ?」

「そうだ。犯罪者を強制的に無力化できる。私は使う機会がなかったが。一時的とはいえ使用者も含む半径10メートル程度の人間を巻き込む」

「無差別過ぎない?」

「しかも一度しか使えない」

「なんでそんな使い勝手悪いものを」

「さあな。しかし、いつの間にとられたのだろう。なぜ使い方を知っていたのだろう」

「わからないけど、遊ばれてたのはたしかかな。あんなもの使う必要なかったでしょ」

「そうだな」


ローチェを寝かせた逍喧に首陵が声をかける。

「順調か?」

「全然だね。mさんは見たけど、目が合った瞬間に逃げられちゃった。眼鏡さんたちも一緒にいたよ」

「...丁軍のか」

首陵は顎に手を当てる。

「そっちは?卵さんは見つかった?」

「ああ。濫酩たちが向かっている」

「どうにかなりそう?」

「どうだろうな。崔冠は見たか?」

「王様さんか。見てないね」

「そうか」

首陵はローチェの手に光る輪をかけて立ち上がる。

「それで大丈夫なの?」

「精霊の加護のないヴァンリにはこれで十分のはずだ」

「へえ。あ、そういえば髪飾りさんたちは見たよ。磁石さんがいたから放っておいたけど」

「そっちはいい。ヴァンリはいない。...崔冠にはおそらくガキがついている。旅人は匡瑚が相手をしている。あと一人、気になる奴の居場所がわかっていない」

「あれは怖いよね」


「?」

一人になった逍喧の目の前を人形が通り過ぎた。

逍喧は深く考えることなくそれを追った。

ラズと目が合った。

「うご――」

ラズの声が高い音にかき消された。ラズが展開した防御魔法が繰り返し音を立てた。

右腕を振り上げた逍喧が咄嗟に防御魔法で攻撃を弾いた。

振り返るとイースが立っていた。声をかけようとした逍喧が再び攻撃を弾く。続けざまに魔力の塊が飛んでくる。

イースはただ立ったまま仮面ごしに逍喧を見ていた。

「逍喧!動くな!」

ラズの声で逍喧は動きを止めた。同時に逍喧に飛ぶ攻撃もやんだ。

呼吸を整えたラズに逍喧が振り向く。

「王様さん」

「その呼び方はやめろ」

それから、まだ逍喧に顔を向けているイースを見た。

「さっきのは」

ラズが知っている逍喧も常に笑顔だった。だが今ほどの笑顔を見たことがない。

「何?」

イースは黙ったまま。

「綺麗」

皆目見当もつかない

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