罠
「「...」」
視線がルノに集まる。
「...おれは何もしてない」
見回したルノがイヴに目を向ける。
「どうしたの?」
「...」
「イヴ?」
視線がゆっくりルノに向く。
「今のは」
「?何が?」
イヴがトワを振り返る。
「来る」
近くの地面が割れて触手が飛び出してきた。途中で黒い壁にぶつかる。
「逃げないと!ルノ!」
「無茶いうな!この人数を一度には無理!」
隣から飛び出してきた触手が直前で弾かれる。
「こんなこと今まで...。何が起こった」
触手の数が増えていく。向かって来る触手をユナが弾き返し、セリが広げた羽で叩き落す。
ユーリの展開した防御魔法があっけなく破られる。そのまま進む触手をトワの黒い盾が広がって受けとめる。
「ごめん。...これヒルシュタンだな。というかその力竜にも通るんだ」
「弾けない」
トワの盾は触手を受け止めただけで押し返すことができない。動きが止まった触手に横からスーダが触れると、吹っ飛んだ。
「悪魔の力は通るのか」
「うごきを」
スーダに頷いてトワは周囲を囲むように小さな盾を並べる。動きを止めた触手をスーダがありえない速度で飛び回りながら片っ端から吹っ飛ばしていった。
頭上を大きな影が横切った。
セリが背後のユナに声をかける。
「皆包めないの?」
「流石に広すぎるし、向こうはどんどん増えている。この調子だと防御に回ると動けなくなるぞ。お前が外で切り飛ばしてくれるというならいいが。そろそろ刃を出したらどうだ」
「うるさいわね。ルノ、なんとかならないの?」
「わからない。隠れ家が見当たらねえの」
「...外に出るのが久しぶりすぎて帰り方を忘れたか」
「...悪かったね引きこもりでっ」
ルノが頬を叩く。
「こうなったらやってやる。一か所に集まれ!」
ルノの声で全員が周りに集まる。
「ユナ、頼む。10秒くらい」
囲むようにに触手が絡んだがそれ以上は近づいてこない。
「もうちょっとそっち寄って」
「押すな」
「騒ぐな」
みるみるうちに数を増やした触手がドームの形に覆う。
「10秒経ったんじゃない?」
「騒ぐなと言っている。何秒でも問題ない」
塞がれかけた視界の向こうで、ヘビに似た頭が見えた。
「よし!」
「あったまいたーい...」
「全員いますか?」
「十七人?初めてやった...」
「助かった...のか」
「どこへ向かっているんだ?」
「行けばわかるよ...」
「そうなんだけど...。わからないって言いなよ」
「少なくともさっきとは違う場所」
「ユナ、その運び方はやめてくれないか」
「ラズはまだいいよねえ...。見てよおれを...」
「「!」」
立方体の部屋が無数に並んだ空間だった。
現れた17人を取り囲む人影。光る武器を構えて向けてくる。
「...こんなにいたんだ」
「罠ですね」
包囲が一歩縮まる。
「粗雑もいいところだけど」
「どうするの?」
「...おれがゴーって言ったら走る...」
さらに一歩距離を詰めてくる。
音もなく空間に切れ目が入った。
「...ゴー」
「ちっさ」