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天地の変  作者: 匹々
轍刻の章
44/55

踏切

リアが乱暴に広間の扉を開けた。

「ローチェ!」

呼ばれたローチェが振り返りかける。

「許可する」

別の扉に向かってルノが言う。扉が開いた。

「イース!?」

ローチェが慌てて駆け寄る。

「今までどこに...」

進もうとするイースを止める。

「待って!ラズなら大丈夫だから」

その声が聞こえたのかイースが足を止める。仮面を着けた顔がローチェを向く。

「平気」

「...うん。だからとにかく、今は休んで。そのままだとキミも危ない」

大人しくなったイースをローチェは隣に運ぶ。

「...そいつは?」

「ボクらが襲った村の生き残り。なんでかわからないけど、ついてくるんだ」

「...それは」

「違う。何もしてない。というか、イースは術が効きづらい」

「「?」」

「そのままの意味だけど、詳しいことは知らない。本人があんまり話してくれねえから。おれらについて来る理由もだけど」

イースの様子を確認したローチェが立ち上がり、ルノの言葉に頷いた。

リアの後ろからルカが顔を出す。

「...ミヤ?」

「久しぶり、ルカ」

マホも扉のほうを見る。メオと一緒にミヤがいた。言葉を失うマホにミヤが微笑む。

「マホ」

「...ミヤ、今まで」

エルが突然前に出て、ミヤに向かう。

「どうしたんですか?」

「べつに?」

「まえから?」

スーダが目を細める。

「エルは会ったことあるらしいね。去年の冬あたり?」

「そのくらい。12がつの3だったかな」

「スーダ、知ってるの?」

「ヴァンリ」

「おまえらのどうるいだよ」

ユナが眉を顰める。

「なにしに」

「わたしが頼みました」

「メオ、あの後なにがあったの?」

「わたしは隠れていただけです。イースとミヤに助けられました」

「こっそりたすけたつもりだったんだけどな。あっさりバレちゃった」

「それからここに連れてきてもらいました」

「...まあ探しに行こうと思っていたから、ちょうどよかった」


「竜が出た」

テドム東部とワスラ東部にそれぞれ。

「どうするの?」

ルノはマホを見る。

「...連中と関係あると思うか?」

「それはわかんねえよ」

「向かうとしたら何分で着く?」

「どっちも10分かからないけど」

「...見てくる。一人でいい」

「許可する。無茶はすんなよ?」


「あ、戻って来た。どうだった?」

「間に合わなかった。...他の者は?」

さっきまでいたローチェ、リア、セリ、ユナ、メオ、ミヤ、イヴがいなかった。

「おまえがいなくなってすぐ、なんかいきなり倒れちゃって」

「今は隣。さっきからイヴとリアが見てるけど、意識が戻らないって」

しばらく黙っていると、ルノの声が聞こえた。

「これは余談なんだけど、悪魔の力の持ち主のうち、おれとラズとスーダと、あとおまえらの知らない一人だけ魔法が使える」

「?」

「あいつらによると、悪魔の子は本来魔法が使えないものらしいんだよねえ」

「...アンタたちは?」

「おれに訊かないで?」

ふと思ったんだけど、仮定が過去形と同じ形なのなんで?

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