踏切
リアが乱暴に広間の扉を開けた。
「ローチェ!」
呼ばれたローチェが振り返りかける。
「許可する」
別の扉に向かってルノが言う。扉が開いた。
「イース!?」
ローチェが慌てて駆け寄る。
「今までどこに...」
進もうとするイースを止める。
「待って!ラズなら大丈夫だから」
その声が聞こえたのかイースが足を止める。仮面を着けた顔がローチェを向く。
「平気」
「...うん。だからとにかく、今は休んで。そのままだとキミも危ない」
大人しくなったイースをローチェは隣に運ぶ。
「...そいつは?」
「ボクらが襲った村の生き残り。なんでかわからないけど、ついてくるんだ」
「...それは」
「違う。何もしてない。というか、イースは術が効きづらい」
「「?」」
「そのままの意味だけど、詳しいことは知らない。本人があんまり話してくれねえから。おれらについて来る理由もだけど」
イースの様子を確認したローチェが立ち上がり、ルノの言葉に頷いた。
リアの後ろからルカが顔を出す。
「...ミヤ?」
「久しぶり、ルカ」
マホも扉のほうを見る。メオと一緒にミヤがいた。言葉を失うマホにミヤが微笑む。
「マホ」
「...ミヤ、今まで」
エルが突然前に出て、ミヤに向かう。
「どうしたんですか?」
「べつに?」
「まえから?」
スーダが目を細める。
「エルは会ったことあるらしいね。去年の冬あたり?」
「そのくらい。12がつの3だったかな」
「スーダ、知ってるの?」
「ヴァンリ」
「おまえらのどうるいだよ」
ユナが眉を顰める。
「なにしに」
「わたしが頼みました」
「メオ、あの後なにがあったの?」
「わたしは隠れていただけです。イースとミヤに助けられました」
「こっそりたすけたつもりだったんだけどな。あっさりバレちゃった」
「それからここに連れてきてもらいました」
「...まあ探しに行こうと思っていたから、ちょうどよかった」
「竜が出た」
テドム東部とワスラ東部にそれぞれ。
「どうするの?」
ルノはマホを見る。
「...連中と関係あると思うか?」
「それはわかんねえよ」
「向かうとしたら何分で着く?」
「どっちも10分かからないけど」
「...見てくる。一人でいい」
「許可する。無茶はすんなよ?」
「あ、戻って来た。どうだった?」
「間に合わなかった。...他の者は?」
さっきまでいたローチェ、リア、セリ、ユナ、メオ、ミヤ、イヴがいなかった。
「おまえがいなくなってすぐ、なんかいきなり倒れちゃって」
「今は隣。さっきからイヴとリアが見てるけど、意識が戻らないって」
しばらく黙っていると、ルノの声が聞こえた。
「これは余談なんだけど、悪魔の力の持ち主のうち、おれとラズとスーダと、あとおまえらの知らない一人だけ魔法が使える」
「?」
「あいつらによると、悪魔の子は本来魔法が使えないものらしいんだよねえ」
「...アンタたちは?」
「おれに訊かないで?」
ふと思ったんだけど、仮定が過去形と同じ形なのなんで?




