なれあい
「イヴ、竜の名前は誰がつけたか知ってる?」
「...わかりません」
「ではなぜ感情の名で呼ばれるのかは?」
「ぼくが知ってる話は二つですね。その感情に反応すること、周りでその感情が強い時に大きくなること」
しばらく沈黙があった。
「...あれは?傷痕みたいなの」
「...」
しばらく頭を捻って首を振った。再びの沈黙の後にセリとユナが同時に口を開いた。言いなおしてセリが先に問う。
「あなた何者?」
「覚えてません」
イヴが口を閉じてユナに促す。
「...いや。お前が何とかして思い出せればと」
「いろいろしってるから、それですくなくともじょうほうでゆうりに」
「それができたら今まで苦労してねえっての」
「ウチらと組むまでもなかったかもね」
ルノに言ってリアがセリたちに目を向ける。
「今後のあいつらの動きはわかる?」
「残念だけど、新しい情報はないと思う」
「やつらも実際に何をすべきかを探っている状態だからな」
「それがわからないとこっちも待つしかないか」
レタが隣のルカを小突く。
「それなんだけどさ、メオを探した方がいいんじゃない?」
「...ああ」
「そうだね。一人になった今狙われる可能性は高い」
リアが立ち上がり隣の部屋へ向かう。
「ルカ、マホ、こっち来て」
「心配?」
「それはまあ」
話しながらリアが見せたのは不思議な球体だった。透き通っているようなのに、向こう側は見えない。光を放ってはいないが、光がゆっくり踊るように動いている。
それをじっと見てマホがしばたく。
「目が痛い」
「そういう人もいるのか。無理そうだったら戻ってていいよ。結構かかるかも」
マホが頷いて戻った。
「出来れば仲良くしててー」
殆球を挟んだ向かいからリアがいくつか質問し、ルカが答えた。それからしばらくそれを眺めた。
「聞いてもいい?」
ルカが口を開く。
「ん?何かわかった?」
「リアはさ」
リアは黙って耳だけ傾ける。
「どうしてエルたちと一緒にいたの?」
「...ウチにとってはほかになかったよ。知らなかったことを知る機会があって」
ルカは殆球を見たままゆっくり目線を泳がせる。
「ユーリは?知っていたんでしょ」
「知ってたけどさー」
「死んだと思ってたって」
「うん」
「いつから」
「...」
「なんで名前を」
「それは本人から聞いたでしょ」
「わからない」
ルカがゆっくり息を吐く。
「アタシはわからない」
「...よくわかんないけどさ、ウチにとって一番大切なのは、知ることなの」
「家族よりも?」
「うん」
即答して、それから小さく呟いた。ルカには聞こえた。
「仲良くするってむずかしーなー」
「じゃあ?」
「負けそうだから裏切ったわけじゃないってこと」
セリがエルを見ながら言う。
「むしろ勝敗をわけるのはわたしがどっちにつくのかよ」
「セリ。放り出すよ」
橋の下でメオが目を覚ました。仮面ごしの視線がじっと見ていた。