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天地の変  作者: 匹々
轍刻の章
40/55

望まぬ願い

「お前ら、知っていたのか」

邁莢が睨むと匡瑚が目を逸らす。游嬰は無表情のまま見返す。

「もう俺は手を貸さんぞ」

目線を巡らしながら言うと瞬匿が狼狽える。

「まっ」

邁莢の力が開きかけたその口を塞ぐ。顔を寄せて低く言う。

「この状況でよく口を開く気になれたな恥知らず」

「誰も手貸せなんて頼んでへん」

言われて今度は濫酩を睨む。解放した瞬匿が軽く咳きこむ。

「ではなんと?」

「助けろ」

「...話にならん」

背を向けて歩き出した邁莢に静かな足音がついて来る。無視して進む。

「...正気か」

「しらない」

振り返ると游嬰がついてきていた。後ろからかけられた声に振り向き、抑揚に欠けた声で短く答えた。再び邁莢に向けられた顔はやはり表情が読み取れなかった。

「お前」

「どうする気?悪魔の子がまともな人間の生き方なんてできる?」

游嬰の向こうから逍喧がいつもの嬉しそうな顔と声で訊いてくる。その隣の瞬匿と濫酩が呆気にとられた顔をした。

「いらん世話だ」

歩き出そうとした邁莢を游嬰とは違う足音が追ってきた。振り返ると、匡瑚がいた。その向こうには苦い顔が見えた。

「なんのつもりだ」

「あなたが正しい」

「知っていたんだろう。今変えるくらいなら最初から連中につけばよかっただろうが」

「そう言われると返す言葉はないわね」

それから匡瑚は後ろの3人を振り返る。

「世話になったわ」

逍喧だけが笑顔だった。

「...好きにしろ」

そう言って歩き出した邁莢の後ろを二つの足音はついてきた。


3人が見えなくなってから残された逍喧が言う。

「やっぱり今まで苦しかったんじゃないかな。罪のない人たちを巻き込んで傷つけたり苦しめたりしたわけだし」

「...ずいぶん人間の気持ちが考えられるようになったみたいやな」

「頑張ったよ。追わないのかい?」

「追ってどうなんねん」

「それはそうだ」

止められるはずがない。

「...なんでこうなる」

「それにしても、よく今まで騙せていたものだね」

逍喧と目が合った瞬匿が顔を伏せて小さく呻く。

「詰らないの?」

瞬匿を指さして今度は濫酩に目を向ける。

「...意味がない。それに間違いだったとは言えん」

「つまらない」

笑顔のまま言った。2人は頭を抱え直す。

「さて、これからどうしようか?まず、皆にはなんて弁明するの?」

「...弁明いうな」

「君たちの落ち度でしょう?」

黙った2人に逍喧は再び訊く。

「あの3人は、向こうに加わるかな」

2人にとっては考えたくない事態だろう。

「...ありえる。やつらは手段を選ばん」

「人のこと言えた口かな」

「まともにやれば勝ち目はない」

逍喧の声を瞬匿は無視する。

「僕と話さなくていいの?君たちだけで勝てるかな?」

沈んだ2人の雰囲気とは明らかにズレた逍喧の声。頭の中を思いついた端から言葉にしている。これもいつも通り。

「不思議だね。こうしてみると、君たちのほうがよっぽど悪魔らしい考え方に思えるよ」

話し合っていた2人の表情が歪む。

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