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天地の変  作者: 匹々
元一の章
4/51

事故

さらば遠き日の22世紀

二人になってから、イヴが近くにある遺跡の話をしたのがきっかけで、次の日は朝から出かけることになった。


町を出て少し行ったところに小川がある。それに沿って東に上る。

しばらく歩くと傾いた崖の上に遺跡が見えた。


近づくとかなり大きいのがわかった。

「やはり西側のほうが遺跡が多いのか」

トワが呟く。

「このイサラナ城跡は、災戦の少し前の時代のものですね。今確認できるこの規模の遺跡としては最古のものでしたっけ」

後から地盤が傾いたらしく、遺跡もわずかだが傾いている。

ふたりは門をくぐって中に入った。

「屋根は流石に危ないから作り直されてますね。発見時はもとのがあったはずですけど」

内側から見上げ、首を巡らす。

骨組みしか残っていないが、古い遺跡のわりには原型をとどめている方だ。


災戦とは樹暦926年から100年ほど続いた世界規模の戦争のことだ。終わったときには人口は戦前の1割近くにまで減り、大陸の地形までが変わってしまったと言われている。


一周見終わり、帰ろうとしたとき、トワがイヴを呼んだ。

少し周りより高い広間の隅にいた。

イヴが駆け寄ると、トワは一点を見つめていた。

「どうしたんですか?」

指す先を見る。近寄って壁の亀裂に触れる。

「わっ」

連なっていた瓦礫が一気に崩れ、暗い穴が空いた。

「...先に言ってくださいよ」

「風の通り方がおかしかったんだ」

破片をどかしてイヴが照らしながら空間の奥を覗き込む。

「見えるか?」

「...向こうにすごく小さい下り階段ならあります」

答えながらイヴはそこに歩み寄り、小幅で一段ずつ注意深く下った。トワは後ろからついていく。

崩れたらそのとき。

「意外としっかりしてますね」

一階分ほど下ると床があった。

「地下があるんですね」

灯りを消すと、細い光が何本か上から射しているのがわかった。

「広間の真下ですけど、これで大丈夫なんですね」

イヴは天井の亀裂の真下で見上げながら言った。

灯りを天井に吊るし周りに沿って歩く。一面は壁のかわりに岩盤が見えていた。

その小さな空間で地下は終わりらしかった。

「なんでしょうこれ」

空間の真ん中には背もたれのない椅子のような形の、小さな台座らしきものがあった。


台座に光るものをみとめて、イヴが手を伸ばした。

「!」

次の瞬間、横から突き飛ばされて転がった。

手をついて振り返ると真っ暗だった。

そばに放られた灯りをつけると、さっきまでいた場所にトワが立っていた。その背中越しに、もう一人、トワが盾を構えた正面の、階段のほうに誰かがいるのが見えた。

「!」

瞬きした瞬間、手から灯りが弾き飛ばされていた。後ろで壁に叩きつけられた音が大きく響いた。明かりが消える直前、トワと誰かの影がぶつかったのが見えた。

すぐ隣とその向かい側からそれぞれ滑る音がした。

素早く体勢を立て直した両者が暗闇でにらみ合った。イヴは息を殺していた。


「そこまでです」

声が響いた。同時に灯りがつけられた。

明るくなって、瞬きして見ると、階段の下にエルがいた。

「ここはあまり足場がよくないですよ」

トワとイヴの向かいの人物に近づいて声をかける。

エルとは違う仮面を着けたその人物は少しだけ首をエルの方に傾けた。

「大丈夫です」

エルが芝居がかった動きで手を出すと、静かにイヴがさっき触れようとした台座に近づいた。

かがんでその台座をみて、首を振った。

「帰りますよ」

エルが踵を返して階段に向かうのに続いて背を向ける。

「待ってください!」

呆気にとられていたイヴが叫ぶ。

「エル。説明してください」

エルが登りかけていた足を止めて振り返り、もうひとりも止まる。

「今は何も言えないです。では」

「エル!」

イヴが再び呼びかけたが、無視するようにそのままふたりとも登って行った。


急いで駆け上がったとき、すでにふたりはいなかった。

周囲を見渡しながら、門をくぐって走り出そうとしたイヴを、追ってきたトワが止める。

「待て」

振り返り、危ういところで身をひねって躱す。大きな鳥に似た魔物ゲマードはすぐそばの地面に激突した。

すぐにまた飛び上がったが、そのまま城門にぶつかった。

「なにかおかしい...」

イヴを庇う位置で盾を構えたトワが呟く。

もう一度ぶつかってから高く飛び上がり、急降下してきたゲマードをトワが迎え撃った。

どうぞおいしく召し上がれ

下手すればあれで終わってた。全部そうか

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