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天地の変  作者: 匹々
続釦の章
37/55

その足で

壁沿いの道を走る。

「町から逃げるつもりか!」

邁莢は誰もいなくなっていた門をくぐって走り抜けた。

その後を追って骨の怪物が城壁へ向かう。レタが弓を射かけるも全く反応しない。

「壁を破られたらまずい...!」

しかしその危惧に反して、骨はそのまま壁の向こうへ通り抜けて見えなくなった。

「「!」」

突然背後で耳をつんざく咆哮が聞こえた。思わず身構える3人の頭上でファンゼルが飛び上がった。そのまま勢いよく空へと消える。

「...あのときと同じ...何がしたかったのか」

辺りを見回すと、いつの間にかヒルシュタンの姿は消えていた。瓦礫の山に触手を見つけたが、すぐに地面に引っ込んだ。

「外かな」

「アイツを追おう」


壁の外に出た瞬間、3人は言葉を失った。

「...どういう状況なの」

長い沈黙の後でリアが尋ねた。

邁莢と、その隣にはなぜか瞬匿がいる。2人が跪いた先にはラズがいる。ラズが一瞬3人に仮面を着けた顔を向けて、それから彼方を見る。その視線を追うと、遠くに小さな影が見える。すさまじい速度で遠ざかる骨の怪物の影はすぐに見えなくなった。

「ルカ、レタ、リア。止まれ」

「...はいはい」

ラズが言うと意志に反して体が動かなくなる。

「竜は?」

「どっか行った」

「追わないのか」

「逃げたの?さっきのは誰なの?」

「知らん」

ラズは短く答えて邁莢を見下ろす。

「邁莢」

呼ばれた邁莢は顔を歪める。

「卑怯だなこの裏切り者が」

「やっぱり、もともとは仲間だったんだ」

リアが横から口を挟むとラズが顔を上げる。

「...後で話すから、今はおとなしくしていてほしい」

「わかったよ」

「瞬匿、フュバウへ行け」

ラズに命じられた瞬匿は立ち上がりながら狼狽えた。

「歩いてか?」

その目線はあらぬ方へ向いている。

「...何が見えてるのあれ」

「何も」

歩き出し始めながら瞬匿が叫ぶ。

「それは儂に死ねというのに等しいじゃろう!」

「誰かが助けてくれる」

「っ!...邁莢!貴様何も言うな!耳を貸すな!」

「揃いも揃って俺に指図するな!」

歩き続ける瞬匿に向かって邁莢が叫ぶ。さらに瞬匿が歩きながら何かを叫んだがもはや聞こえなかった。

「ずいぶんな焦りようだな。旅人どもは普段から歩いているぞ怠け者め」

邁莢が跪いたまま笑う。それから顔を上げて正面を睨んだ。

「何故俺を残した?」

「協力してほしい。やつらを止めるために」

「裏切りの共犯になれと?他をあたれ。...あいにく俺はあの堅物ほど酔狂じゃない」

「君は連中の目的を知らされているのか?」

「この世界を悪魔のものにする」

黙って聞いていた3人が息を呑むのにかまわずラズが問いを重ねる。

「知っていたのか。それに異議はないのか?」

「そんなことは問題ではない。俺は決めた」

「意地だな」

「それでいい。以前から疑問だったが、それを知って心を変えたのか。軟弱だな」

「俺たちは君とは違うんだ」

「そうかもな。それで?俺を殺すか?」

「それはできない。邁莢、瞬匿を追え」

邁莢が立ち上がりながら舌打ちした。

「だから半端者は嫌いだ」

吐き捨てて走り出す邁莢を見送ってラズが呟いた。

「しないじゃなくてできないなんだがな...」

「...命令すればいいじゃん、その悪魔の力で」

「体を従えることは出来ても、心を操ることは出来ないんだ」

「...そう」

後ろの壁の向こうで町が賑やかさを取り戻し始めたころ。

近くで音が鳴った。何かに切り込みを入れるときのような音だった。

何もないところから何者かが現れた。

「ネウラまでは無事に着きそうだねー」

ラズにそう告げる。

「...追ってたの?早くない?」

思わず言ってからルカも隣のリアの様子がおかしいことに気づいた。

新たに現れた誰かはリアを見つけて笑みを向ける。

「ねえキミたち、イースを見てない?」

その問いにはルカが答えた。

「いないの?見てないけど...リア?」

ルカの呼びかけには答えず、笑みを向けられた、今までリアと名乗っていた誰かは震える声で名前を呼んだ。

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