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天地の変  作者: 匹々
続釦の章
35/55

紅生

(この匂いは?)

あたりに漂う匂いの出どころを探して首を巡らせたリアが、物陰に花を見つける。

(これは)

近づいてしゃがみこむ。

(初めて見た。サングスタ)

稀に見られる花。様々な環境で見つかっており、どこでも咲くのにそのくせ栽培ができず、謎が多い。茎や葉まで血のような赤。強い独特な匂い。リアは命の匂いとして認識した。

(触っていいんだっけ)

それに手を伸ばそうとしたとき。

近くで轟音がして軽く地面が揺れる。

「!」

顔を上げたリアの目に土煙が映る。

(なにこれ...)

駆け付けると、休憩所の柱と屋根が抉られていた。地面には身長に近い太さの巨大な木の根のようなものが横たわっている。木の根にしては色が薄い。

足音が聞こえた気がして辺りを見回したリアの足下で、それが音を立てて動いた。

咄嗟に飛び退いた地面が割れる。隣の建物が地面から持ち上げられる。

足下の根の先端が離れたところにあるのを見つけ、それが空へ伸びていくのを見る。その先を目で追ったリアは息を呑んだ。


レタの側でも塔がひっくり返って崩れた。

(いったい何が)

起き上がって周りを見回して空中に見つけた。

巨大なクジラの骨のようだった。

「レタ!」

屋根伝いに走って来たらしいルカが飛び降りてくる。

「...あれは」

「...わからないけど、なんとなく魔物とは違う気がする」

「やっぱりか」

近くにいた住民に離れるよう叫ぶ。

二人が見上げた先で骨が移動する。

「追おう」

どちらからともなく駆けだした。


骨の頭の形が見る間に円錐形に変わる。鋭角の先端を地面に向けて、突然突き刺した。

高台に移動した二人からは、建物の隙間から木の根のようなものが飛び出すのが見えた。

走りながらリアが合流する。

「あれは?」

「...わからない。見覚えがない。あんなやつ」

木の根が地面に突き立った骨に向かって巻くように伸びる。骨がそれを尻尾で受け止める。根を留めながら空中に戻り、前足の形を変えて根をつかむ。

「あれ!根っこ!」

別の根が出現し、地面を這うように伸びる。建物もいくらか巻き込まれ、悲鳴が被った。

「何かを...追ってる?」

新しい根に向かって骨が恐竜のような形に変わった頭で突進する。

すさまじい速度で根の先に回り込んで噛みついた。その胴体に後から追いついたほうの根が突撃する。噛みついたままの骨の胴体がヘビのように細長くなり、根を躱しながら絡ませて押さえ込んだ。

3人はそれらから少し距離を置いて立ち止まった。

「...何が起きてるの」

「あれ!」

ルカが膠着状態になった骨と根のそばを指さす。

一つの人影が走り抜けた。瓦礫の陰に隠れて見えなくなる。

それを追いに走り出そうとした3人の頭上を影がよぎる。

見上げると、町を見下ろす高空に怒竜ファンゼルの姿があった。

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