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天地の変  作者: 匹々
続釦の章
30/55

熾髄

「アンタたち、何をするつもりなの」

さっきの一人が信じられないという顔をする。

「...なんで」

「...オマエ」

深緑の布を纏った二人目が言うとそちらを振り向く。

「わたしはちゃんと隠れて飛んだ。むしろあなたが音を立てすぎたんじゃないの」

「あれ?」

緊張感のない別の声が聞こえてきた。

見ると奥の岩の陰から二人組が走って出てきた。声を上げて立ち止まった一人の肩に後から来たもう片方が寄りかかった。どうやら奥にあった洞窟から出てきたらしい。

「どうしたのこれ?」

「邪魔者や。そっちはどうした?」

二人目が訊くと寄りかかっているほうが答える。

「上手くいった。おそらくだが」

言いながら手をかざして示したものはルカたちにはよく見えなかった。

「...ならもうここに用はないな?」

「ああ」

「帰るぞ」

「待て!」

ルカがもう一度声を上げると、鬱陶しそうな目を向けた。

「ここで何をしていたの」

二人目が一人目に向かって苛立ったような声で命じた。

「殺せ」

ルカの両手が双剣に触れる。

一人目は一瞬それを見て二人目を見返した。

「馬鹿なこと言わないでちょうだい」

呆れたような声で言うと二人目は舌打ちして懐から小剣を取り出す。

「...必要がないでしょって言ってるの」

「待てっ!」

静かに様子を見ていた四人目が突然叫んだ。動き出そうとしていたルカと一人目は動きを止め、耳元で叫ばれた三人目は顔を顰めて耳を叩いた。

「そいつだ!丁軍の!」

四人目が慌てたままルカの後ろにいたメオを指さして言った。

「...うるさい」

「落ち着け」

「前に話しただろう。丁軍にもう一人ヴァンリがいると」

それを聞いて二人目がメオを見る。

「...なぜこんな...あの低能どもは...」

二人目が呟いてから顔を上げて一人目を見る。

「匡瑚」

そう呼ばれた一人目は少し迷ってからルカではなくメオへ向き直る。その視線を遮るようにルカが動く。

二人が一瞬睨みあう。

突然、全員がその場から吹き飛ばされた。

「っ」

ルカがかろうじて背後の壁をつかんで耐え、メオも捕まえる。他の四人は下の海へ落ちていく。

ルカはメオを引っ張り上げるとすぐに走り出した。

「急いで!」

わけもわからないままメオはその後を追って走った。

日が射す場所までたどり着いてようやくルカは足を止めた。追いついたメオが振り返る。

小さな魚が空中を泳ぐように漂っている。よくみると骨しかない。

「...あれは?」

「フォラン。聞いたことはあるでしょ」

海の中から人型の骸骨が這い出てくる。

「退がって」

メオはそれに従って日の当たるところまで進む。

後ろからも複数のフォランがやって来るが全て日陰から出てこない。

「この地域の...死骸を乗っ取る魔物」

「そう。アタシも実際に見るのは初めてだな。やっかいだから、発生させないようにしてるんだ。動物の死骸が見つかると極力一か所に集めるし、ここの墓は丁寧に作られてる。...灰にして塩まで混ぜても憑かれるとああなるらしい」

骨がそのまま動いているのではなく、灰が集まって骨の形を成している。

「ここ普段は封印みたいなのがあるんだけど...やっぱり封印になにかあったのか...それともアイツらがなにかしたのか...」

ルカは群れの向こう、さきほどいた場所とその下の辺りを見るが、何も見えない。

「封印に関してはアタシも詳しくはわからないから...。けど、このままだと大変なことになるのは間違いない」

そう言ってルカが船へ向かって歩き出す。メオはその後をついていく。

「日暮れまでになんとかしないと」

フォランの忌は日光。簡単に海を渡れるため日が暮れれば自由に動き回り、必ず人里までやって来る。

「わかりました」


日暮れ直前まで作業は続いた。

フォランは通常の魔法で攻撃しても散らばるだけですぐにもとの形に戻るが、火を着けると戻らなくなる。

暗くなり始めている海岸に灯りの群れ。その一つ、松明を片手に歩いていたルカに、メオとリアが近づく。

「どうだった?」

「封印はほとんど問題ないって。見せてもらっても全然わからなかった」

「ただ、やはり荒された痕跡があると」

「...アイツらか」

一応フォランのついでに付近の海も捜索したが、あの四人は見つからなかった。

「それで、深紅の一人なんですけど」

メオを指さした四人目は深紅の布を纏っていた。

「知ってるの?」

「オズファで一度見たのがおそらく。記憶が正しければですけど、今は空席の宰相のかわりに基王の側で実権を握っていた」

「...なんでこんなところに」

聞いていたリアが口を挟む。さきほど、ヴァンリとは悪魔の子、悪魔の力を持って生まれた人間のことだと教えてくれた。

「ヴァンリっていう言葉も相当古かった気がする。最近のやつでは多分誰も使ってなかった」

「...わからない。何者なのか、何が目的なのか」

考える3人にイヴとトワが近づいて来る。

「こっちは大丈夫だと思います。沖は少し気になりますけど」

「そう。おつかれ」

周りの皆にも報せに行こうとしたルカが振り返る。

「あれ?そういえばレタは?」

「言わなかったっけ?こっち来てないよ」

「なんで?」

「話聞いたときに、倒れたんですよ」

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