表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天地の変  作者: 匹々
元一の章
3/51

岐、枝、来

「レタ。あれ」

羽毛に覆われたトカゲに似た魔物がいる。

「ウィウェントですね」

魔物は人間の敵として、歴史のある時点から現れた脅威となる存在。未だに謎が多い。様々な種類がいて、それぞれに対する魔物除けがある。ウィウェントは魔物除けでの対処が難しい魔物の一種だ。素早いが、単独行動が多いため、開けた場所ならそれほど脅威ではない。

レタは素早く弓を構え、狙いを定めて矢を放った。魔力の矢が獲物の頭に命中し、一撃で砕け散る。

「結構な距離があったのに、すごいですね」

イヴは色を失ったウィウェントを見ながら呟いた。

「さすがです」

荷車を止めずに進んでいたエルはそれだけ言った。

「弓を使うんですね。こっちでは多いんですか?」

イヴが訊いた。

「いやー全然見ないね。協会でも珍しい目で見られる」

人間は精霊の力を借りて魔法を使う。精霊もまた謎の多い存在だが、人間の想像に反応する。人間が魔物に通用するような魔法を使うとき、多くの者は想像の補助の役割もかねて武器を媒体として使う。弓を選ぶ者は少ない。

「これくらいしか使えなかった」


荷車にはそれほど積荷がない。

荷車を引く馬を見ながらイヴが言った。

「馬車馬にしては大きいですね」

「アタシたちも思った」

「チレって呼んでます。賢いですよ」

エルは倒れた積荷を直しながら言った。


「ここまでですね」

別れ道で、ルカとレタは西へ伸びる道へ向かった。

ふたりに対してエルは向き直る。

「金はこれくらいでいいですか?」

「...いらないって言わなかった?なにもしてないよ?」

「受け取ってもらいますよ」

「ほんとにいいって。本業じゃないし。たまたま道が同じだっただけだもん」

やり取りの後ろからレタが声をかける。

「もらっとけ。どうせすぐ使うだろ」

「むっ」

とりあえず受け取った。

「正確に知ってるわけじゃないんだが、少し多くないか?」

「では」

満足したのかエルはそれだけ言って背を向ける。

「気をつけてー」

ルカが声をかけイヴが手を振って歩き出す。

ふたりが見えなくなってから、イヴが口を開いた。

「ぼくたちもお金はいらないんですけど」

「そういうわけにもいかないんですよね」

振り返らずに歩きながらエルは答える。

イヴが隣のトワを見ると前しか見ていなかった。

「少し回ります」

目の前の道はあちこちにくぼみがあった。荷車の向きを変える。


ガラトゥの町が見えてきたとき、突然トワが口を開いた。

「雇った意味はあったのか」

「師匠?」

小さな声だったが、エルは振り向いた。

「そのほうが面白いんですよ」

イヴは首を傾げたが、エルは前へ向き直った。考える仕草を見せる。

「金ならありますよ」

後ろでふたりは黙っていた。


町に近づくと、行く手に、鬣のある大きなイノシシに似た魔物がいた。

ふたりを待機させてトワが近づく。背中から盾を出して構えた。

目があった。

「!」

なぜか背を向けて走り出した。トワは目でイヴに合図して、まっすぐ森のほうへ逃げる魔物を追った。


戻ってきたトワは見失ったことを伝えた。

「タガフの忌は?」

魔物は忌に近づかない。

「イヌとマツの実です」

イヴが答えながら見ると、エルは首を振る。

「なんだったんでしょうね」


そのまま町に入った。

「ここで待ち合わせをしてるんですよ」

エルが言った。

「一応目撃情報は報告して来る」

トワが言った。

「...金はもらっておけ。断っても無駄だろう」

付け加えた。


しばらくして戻ってきたトワは交渉を続けていたふたりに言った。

「ここ最近、魔物の異常行動が目撃されているらしい」

普通の生物と魔物を見間違えることはない。全く別のもの。らしい

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ