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天地の変  作者: 匹々
続釦の章
29/55

土の下

しゃがんでいた人影が立ち上がって振り向く。濃紫の布を身にまとっている。

一瞬駆けだそうとしたルカが立ち止まる。

「...その物騒なものを収めてくれるかしら」

ルカが取り出そうとしていた双剣をゆっくりしまうと、相手は歩み寄ってきた。

黙ったままのルカに向かって手に抱えたヒョウを差し出す。両腕は不自然に膨らんでいる。

ルカが戸惑いながらも両手を広げて受け取る。大柄ではないが相手の動きは軽いものを扱うときのようだった。

腕の中で動かないヒョウの頭に巻かれた包帯を見る。

「気絶してるだけよ」

声に、視線を上げる。

「...ここで何があったの」

「ごめんなさい」

ルカは相手の目に悲しい色を見て取った。自身がどんな顔をしているのかはわからなかった。

「...アンタは何者?」

「あなたには関係ないわ。わたしにはあなたを傷つけるつもりはない」

「...瞬匿とか、邁莢とかいうやつらの仲間?」

「...」

「ここで何があったの?答えて」

目を逸らした相手にルカが詰め寄る。後ろからメオが近づいて来る足音がした。

「...」

一瞬だけ相手が背後のメオを見た。

その瞬間だった。

「「!」」

大きな音がして、ルカとメオが上を見上げた隙に、相手は走り出した。止める間もなく近くの大きな岩に一息で跳びあがり、それを蹴って下の海へ向かって跳んだ。

しかし落ちることはなく、そのままさらに上昇した。

2人が見上げると、翼に変えた両手を羽ばたく相手が見えた。

そのまま岬を回って見えなくなると、呆気に取られていたルカが少し上に留まっているカラットを見上げる。その視線を追ったメオが言う。

「追いますか?」

「追おう。ヒョウたちはとりあえず船まで運ぶから、カラットは先に」

ルカが言うとカラットが飛び上がって岬を回る。

先ほど相手がしゃがんでいた場所のそばに短剣と杖を見つけてメオが拾う。2人のものだろう。短剣は鞘に収められていた。


海岸沿いを歩いていた2人にしばらくしてカラットが帰って来る。

「この先みたいです」

「わかった」

先は切り立った崖で日陰になっている。


案内に従って高台に登る。近づく前に、大きな音が聞こえた。

「二人」

小声で言うメオにルカが頷き、物陰に身を隠しながら慎重に近寄る。声が聞こえた。

「...こうなるってわかってたでしょ?」

先ほどの声。

「うるさい」

別の声。

音からして、魔物と戦っているらしかった。だが普通の魔法の音とは違う。

「...手伝え」

「いやよ。自分のミスくらい自分で何とかしてちょうだい」

「...」

魔物の悲鳴が聞こえた。

「...ご苦労様。これからどうするの」

「逍喧が戻ったらもう一回行こう」

「待て!」

物陰からルカが飛び出した。

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