石の洞
リアとイヴとトワはレタの復旧作業を手伝う。
「建物の構造が全体的に単純ですね」
「あまり複雑でも困るだろ」
「?」
「冬は天気が多い日が多いから、季節で造り変えたりするんだよ」
「へー。地震は多いの?」
「たまに小さいのはあるな。けどここまで大きいのは滅多にない」
「まあ今回のはオズファとかボーアでも被害があったらしいよ。震源が遠かったみたいで」
「それは珍しい」
黙々と作業をしていたトワが口を開く。
「竜は?」
リアが答える。
「...いや、聞いてないね」
「地震は書かれていなかったんですか?」
訝しげに見たレタにリアが説明する。
「イルテンで資料を見たって言ったじゃん?それで、竜は天災と一緒に描かれてることが多いみたいで」
「...ああ」
「具体的な表現が少ないし、こいつにはこれ、とか必ずしも対応したのがあるわけじゃないから、個人的には被害の大きさを印象付けるものだと思ってたんだけど」
「今まで竜が出現するとき、不自然に小さな天災を伴っていた」
「地震の記録は...あったかな」
「ぼくが見たのは気象災害かそれに付随するものが多かったですね」
「オレもそんな気がするな」
「...今回ニヒツには死人は出なかったとはいえ、怪我人はいるし家は崩れた。このまま何も起きなければいいが」
そう言ってレタは作業に戻った。他の3人も口を閉じて作業を続ける。
メオとルカの2人は船で大陸側に渡った。
「ここを登るんですか」
「そう。上にヒョウたちがいるはずだから」
上、半島の先端には墓地がある。ここが崩れていれば大変なことになる。
先に斜面を登り始めようとするルカをメオは止める。
「...あっちから登ったほうが楽じゃ?」
「え、遠回りじゃん」
少し離れたところには緩やかに登る階段がある。
「ルカは真っすぐでいいかもしれないけど、わたしはここ登れません。というか人の道じゃない」
「そう。じゃあ回る?」
「...本当に変わらない」
崖の斜面に墓標が並んでいる。
「本当に丁寧なお墓ですね」
「メオは来たことないんだっけ?」
「まあ」
「ちなみにここは釣った魚までちゃんと埋葬するよ」
「...それはまた」
「あれ?そういえばヒョウたちがいない。船はあったのに」
高台から辺りを見回す。この場所は見通しがいい。
「...向こう側かな。まあいいや。端からね。アタシは上の段から見ていくから」
狭い足場で分担して作業をする。
「よし。こっちは異常なしでいいかな」
立ち上がったルカはメオが近づいて来るのに気づいた。
「どうしたの?なにかあった?」
「いえ、お墓のほうは異常がないんですけど」
近くにカラットが下りてくる。そちらに目をやってから再びメオが口を開く。
「崖の下に誰かいるって」
身を乗り出して覗き込むが、途中の葉に遮られて崖の下は見通しが悪い。
足場の悪い崖の下を慎重に歩いていたルカが突然駆け出した。
「コウ!ねえっ!?」
「...気を失ってるだけみたいです」
肩をゆするルカに後ろから追いついたメオが言う。コウの腕に巻かれた新しい包帯を見つけて息をのむ。
「...なんで...ヒョウは?」
辺りを見回したルカは別の人影を見つけた。