余震
「あれ?」
少し道を戻ったリアは坂を上って来る人物に気づいた。見覚えがない。
「これ?」
近づいて、差し出された手にはペンが握られていた。
「ん、ありがと」
受け取ると横に並んだ。
「きみはどこから来たの?」
「...バフス」
「ボーアか...いいな。ここはボーアと違う?」
「まあそうだね」
里道のわきにはツバキが植えられている。花が魔物除けになるらしい
行く手に歩いて来る人物を認めて声をかける。
「ヒョウ、ルカは?」
「いるよ。あそこ」
頷いて歩き出す。
「ルカを知ってるの?」
「うん。というか、だいたいみんな知ってると思うよ。国の外からくる人が珍しいのもあるけど」
話しているうちに小屋が見えてきた。リアに続いて入る。
「久しぶりだね、ルカ」
メオとカラットの相手をしていたルカが振り向く。
「あ!ヒナ!久しぶり」
「こっちに来てるって聞いて」
「いいの?こんなところに来て。忙しいんじゃないの?」
「レタから聞いてない?ある程度はなんとかなりそう」
メオがおそるおそる近づく。
「お知り合いですか」
「そう」
「あたしはヒナ。よろしくね」
メオとリアに向かって軽く頭を下げる。
「...それだけ?」
「あとなんかあったっけ?あ釣りが好き」
「...ほら、ほかの国でいう王様みたいな立場だよとか」
「...は?」
慌てて頭を下げるメオと呆気にとられるリアを見比べてヒナが笑う。
「やっぱりそうなるよね」
「...は?」
リアの非難の視線を受けてルカも苦笑を浮かべる。
「いやそんな怒んないでよ。メオも普通にしてていいよ」
「早めに言ってほしいんだけど」
「ニヒツは変わってますね」
「それはそうかも。少なくともボーアの王様とは違うでしょ?」
「よく言えば親しみやすい、悪く言えば庶民的」
「...それはそうと本当にこんなところにいていいんですか?」
「...もう帰るよ」
「また遊びに来るからねー」
ニヒツは国としての代表者を投票で決める。オズファンを模したやり方だが、いかんせん候補は多くない。
「ヒナはね、あちこち歩き回るのが好きなの」
見送ってルカが言った。
「王様になってから全然遊べる時間がないんだってさ」
「...訊いていいのかわかりませんけど、なんで王に?」
「んー...。えー...。レタのほうが詳しいと思う」
「知らないでしょ」
「色々あったんだよ色々」
ヒョウとセツが帰って来た。
「お帰り二人とも」
メオはマホと連絡を取っているが、大きな事件などの話は聞いていない。竜の新しい情報もない。
イヴとトワが帰って来た。
「おかえ」
7月21日19時36分、大きな地震があった。
時系列を気にする。穴を後から埋めるのはやめた方がいい気がする




